宝塚記念
レース回顧
ヒシミラクルは中団のやや後ろを追走し3コーナーからスパート。大外を捲くり気味に進出し直線に向くと先に抜け出したシンボリクリスエスとタップダンスシチーを並ぶ間もなく差し切り、最後はツルマルボーイの追撃をクビ差凌いでレースを制した。良馬場発表でも当日は時計のかかる馬場状態。前半5F59.4秒でその後11秒台のラップが続き、レースの上がりが36.9秒とかかったことでこの馬の持ち味であるスタミナを存分に生かせた印象。昨年の売布特別もそうだったが、こういう流れだと力を発揮する。またスタート後の直線が長いと位置取りが悪くならないということもあるようだ。
パドックでは馬体の張りが素晴らしく、春天当時よりさらに馬体が成長して良くなっていた。秋は秋天、JC、有馬の王道を進むが、スタミナが問われる流れになれば上位争い必死だろう。スローの上がり勝負で惨敗してもペースが向けば巻き返すので前走着順には惑わされないようにしたい。また角田騎手の好騎乗も見逃せない。この春は幸騎手とともにG1を2勝。今年はまだ9勝しかしていないが、騎乗馬に恵まれなかっただけ。ジャングルポケット、ノースフライトを育てた腕は一流。今後のさらなる活躍を期待したい。
ツルマルボーイは離れた後方2番手を進み、直線で大外からメンバー最速の35.6秒の末脚で追い込んでクビ差届かずの惜しい2着。フェブラリーS、NHKマイルC、ダービー、交流G1・帝王賞とG1で2着続きの横山典騎手がまたしても2着。G1で2着が多い橋口厩舎の馬だけに馬単2着流しもあったか。ツルマルボーイはこの中間は馬体が少し寂しく映ったが、パドックでは馬体減なく調子落ちはなかった。今回は展開が向いた感もあるが、徐々に地力が強化されていることは間違いない。昨年の秋天は中山だったが、今年は例年通り東京で行われる。左回りの2000mはツルマルボーイにとってベストの舞台。橋口厩舎に久々の中央G1制覇をプレゼントするか注目したい。
タップダンスシチーは中団より少し前を進み、3コーナー過ぎから外目を進出して直線でシンボリクリスエスを交わして先頭に立ったが、最後は一杯になり0.2秒差の3着。外枠だったため外々を回らざるを得なかったが、最後にクリスエスを交わしたところを評価したい。内枠を引きロスなく乗れていればもっと際どかっただろう。パドックでは以前より落ち着きも出たし、馬体を見ても完全に馬が本格化した印象。自分のパターンに持ち込んで好走できたことは馬にとっても陣営にとっても今後に向けて大きな自信だろう。佐藤哲騎手には今後も強気な騎乗を期待したい。
ネオユニヴァースは後方3番手を進み3コーナーからスパートして直線に向くとラスト1Fから猛然と伸びて0.3秒差の4着まで追い上げた。競馬にたらればは禁物だが、スタートでクリスエスに寄られて位置取りが悪くなったのが痛かった。最後伸びてきているだけに本当に惜しい内容。パドックでは古馬に動じずにいつものようにしっかりとした集中力を見せて周回。馬体も見劣りしないし、この雰囲気なら3000mの菊花賞でもやれるという印象を受けた。まだ馬体は成長の余地を残しているので、この秋はさらに成長した姿を見せてくれるだろう。今回古馬相手に厳しいレースをした経験は今後のレースで必ず生きてくる。最強馬への道はまだ始まったばかりだ。
シンボリクリスエスは中団を進み、3コーナー手前で最内から進出。4コーナーで先団に取りつきマイソールサウンドとバランスオブゲームの間を強引に割って先頭に立ったが、そこからいつもの伸び脚がなく最後はネオユニヴァースに差されて5着。この日は8、9Rで大外を回った馬が差して勝ったように外が伸びる馬場。雨が降った後は外側から乾くので内側は多少湿り気があったのだろう。あとはこれまで前にいる馬を差す競馬をしてきたので、直線で早めに先頭に立ったことで馬がやや戸惑っていた感じもあった。パドックではバランスのいい素晴らしい馬体はひと際目を引いたが、いつもより後脚の踏み込みが少し浅かったのは久々のせいか。馬体は抜けていたが、1番人気で強気な競馬をして勝てるほど力差はなかったということ。だが、クリスエスはまだこれから進化する。今回で課題が見えただけにこの秋最も怖いのはやはりこの馬だ。
アグネスデジタルは好位を進んだが、4コーナー手前で一杯になり直線では全く見せ場なく13着に敗退。スタミナが問われる展開で距離適性が問われたにしても走らな過ぎた。道中の走りを見るといつもより少し脚捌きが硬い気がしたが、そのあたりが微妙に影響しているのかもしれない。あとはデジタルには阪神コースが向かないということもあるのだろう。陣営はこれまでずっと直線の長い東京と京都外回りを使ってきたが、それが間違いでなかったということが証明されたような気もする。馬体を見るとこれまでの激戦の痕が少し感じられるが、この秋もデジタルらしい走りを期待したい。最高レベルの腕を持つ白井調教師ならそれができるだろう。
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