スプリンターズS
レース回顧
デュランダルはスタートダッシュがつかずに最後方を進んだが、4コーナーで大外を回って猛然と追い込むと最後はビリーヴを差し切ってレースを制した。メンバー最速の上がり3F33.1秒は内を回ったアドマイヤマックスを0.6秒上回るもの。昨年の白秋Sでも33.3秒で差し切っているが、G1でさらに0.2秒切れ味が増したのだから恐れ入る。前半3F33.3秒とそれほど速くならなかったこと、ビリーヴが早めに先頭に立ったことなどもあるが、ロスのある大外から差し切ったことを評価したい。1200mではギリギリ差し切れるかどうかという競馬になるので、どちらかというとマイルの方が適性は高そう。そういう意味も含めてマイルCSが楽しみになった。
ビリーヴは4コーナーで先団に並びかけるとそこから一気にスパートして先頭に立ったが、最後はデュランダルの強襲に屈して15cm差の2着。同馬主のゴッドオブチャンス(蛯名)と3コーナーで接触したことで早めにスパートすることになったのが痛いが、力で捻じ伏せる競馬でビリーヴの強さは見せた印象。ラストランでどんな仕上げで出てくるか注目していたが、馬体の張り、気配とも素晴らしかった。最後まで攻めて仕上げてきた陣営に拍手を送りたい。ビリーヴは血統、馬体もいいし、きっといい子供を出してくれるだろう。
残念だったのはアンカツの騎乗。セントウルSでもゴール前で腰を浮かして追わなかったが、今回もゴール前で外から来たデュランダルに目をやったことで最後のひと追いがなかった。追っていれば勝っていたとは言わないが、15cmの差はもっと詰まっていたのは確かだろう。JDDのユートピアも含めてこれで重賞で3回目。ビリーヴは直線で抜け出すとソラを使うが、アンカツも最後にソラを使うと言ったら言い過ぎか。出遅れて調教に乗れなかったあたりから嫌な予感はしていたが、差が差だけに後味の悪いものになった。
アドマイヤマックスは後方から馬群を割って追い込んで0.2秒差の3着。最初から外を回る気はなかったと武豊騎手が話していたが、それにしても直線であの狭いところを一直線に抜けてくるのだから凄い。大外を回せば届かないし、少しでも前が詰まれば掲示板にも乗れなかっただろう。現時点の力は出し切った印象。今回はプラス6キロでも馬体の張りがこれまでとは違っていた。ただまだ馬体は完成されていないので、橋田師がマイルCSに向けてどう鍛えてくるか注目したい。馬体のバランスが良くなればもっと切れが出るはずだ。
レディブロンドは中団のやや後ろを進み、直線で外に出して差してきたが4着が精一杯。初のオープン挑戦がG1でしかも連闘と条件は厳しかったが、0.2秒差まで差してきたように力があることを証明した。パドックではプラス4キロで馬体をフックラ見せていたし、馬体の張り、雰囲気が前走以上だったことは正直驚かされた。セプテンバーSの前から全て計算して仕上げてきた藤沢和厩舎も凄いが、レディブロンドの体力、精神力の強さがあってこそのものだろう。
レースでは4コーナー手前で同厩のハッピーパスに内に入られたこともあるが、スムーズに外に出せたのでロスは最小限に防げた印象。ただし、そこでひと呼吸おいて馬群を割れば結果的にアドマイヤマックスが通ってきたところを通れたので3着はあったかもしれない。ただそれには前が詰まるリスクが伴うので、外に出した柴田善騎手の判断は間違ってはいない。ロードHCの規定では今年一杯で現役引退だそうだが、来年もレディブロンドの走りを見てみたいというのが競馬ファンの願いだろう。まだ今年もあるので何とも言えないが、とにかく今後も注目していきたい。
テンシノキセキは逃げて直線でしぶとくビリーヴに食い下がったが、最後は突き放されて0.3秒差の3着。まさか逃げるとは思わなかったが、ショウナンタイムと内ラチに挟まれる形になったので、それを嫌ったのだろう。ペース自体は33.3秒とそれほど速くなかったので悪くはないが、少し溜めて切れを生かす競馬を見たかったというのが正直な印象。パドックでは気合を見せないが仕上がりは良く見えた。本格化しているので、今の調子をキープできれば今後も大崩れはないだろう。
[Home]