秋華賞
レース回顧
スティルインラブは中団を進み、大外から徐々に進出して直線に向くと力強く抜け出して、最後は外からきたアドマイヤグルーヴの追撃を3/4馬身凌いでレースを制した。大外を仕掛けながら進出してきたので直線で伸びるかどうかやや心配だったが、そんな心配をよそに力強い走りで見事に3冠制覇。外を回る横綱相撲の競馬をして力で捻じ伏せたのだから強い。パドックでは馬体が引き締まり、全く物事に動じないジワッとした気合乗りでデキの良さが目立っていた。最後まで攻めて仕上げた陣営に拍手を送りたい。
「3コーナーで流れが落ち着きそうだったので行く素振りを見せて内の馬にペースを上げさせた」という幸騎手のコメントを聞いて、3冠がかかったレースでそこまで落ち着いて騎乗していたのかと正直ビックリさせられた。スティルインラブで2冠を制してから、この夏の活躍はとにかく凄かったが、こういうコメントを聞くとさらにひと皮剥けたと思わせる。スティルインラブの次走はエリザベス女王杯で今度は牝馬4冠を目指す。スティルインラブと幸騎手のコンビがどんなレースを見せてくれるか楽しみだ。
アドマイヤグルーヴはスティルインラブの後ろを進み、4コーナーでは絶好の手応えで直後をピッタリマークしたが、直線で捕らえ切れずに2着に敗れた。今回はスタートを無難にこなし、道中もスムーズに進め、武豊騎手がほぼ完璧な騎乗をしたが、差し切れなかったのは現時点での完成度の差だろう。スティルインラブように調教で強気に攻められないし、精神的にも弱いところがある。ただ大外を回ってメンバー最速の34.8秒はさすがと言えるもの。内回りの2000mより、外回りの2200mの方が適性が高いのでエリザベス女王杯はかなり面白い存在。今回の調教過程や馬体の仕上がりを見ると次が目一杯という気もする。
ヤマカツリリーは4番手から直線でしぶとく伸びて3着を確保した。桜花賞4着、オークス4着に続き、今回も最後のひと伸びが足りなかった。ただ適距離は短いところにあるので、3着なら大健闘とも言える。最後の直線でピースオブワールドの手応えの方が良かったが、目一杯に鞭を入れて粘らせたアンカツの腕も光った。パドックではプラス6キロで少しフックラ見えたが、馬が走るときに見せる後脚の踏み込みは目立っていた。さすがに大1番できっちり仕上げる松元茂厩舎といった印象。今後はマイル路線に向かうようだが、古馬相手にどんなレースを見せてくれるか楽しみだ。
ピースオブワールドは内々の好位をロスなく進み、抜群の手応えで直線に向いたが、ジワジワとしか伸びずに4着止まり。福永騎手が最内を突けば3着はあったと話しているが、これも競馬。今後はアンカツの腕をきっちり計算した騎乗をしてくるだろう。ピースオブワールドは前走より良くなっていたが、まだ昨年のいいときと比べるとトモの張りが物足りない印象で全体的に小さく見せていた。あと10キロくらいは馬体を膨らませても良さそうだ。距離はマイルがベストかもしれないが2000mもこなせる範囲。まだ上積みが見込めるので、今後も注目していきたい。
マイネサマンサは前半5F59.8秒で逃げて直線で後続を突き放したが、最後は外から交わされて5着が精一杯。休み明けで逃げる競馬と条件は厳しかったが、見せ場たっぷりの内容。忘れな草賞の走りが伊達でなかったことを証明した。スティルインラブが3コーナーで行く気を見せたことでラップが11.7秒に上がったが、そこを12秒台で行ければもっと際どかっただろう。ダートもこなすが、芝のスピード勝負にも対応できたことは今後に向けて大きい。まだ上積みがありそうなので次走も注意したい。
レンドフェリーチェは好位を進み、直線で一杯に追ったが伸びを欠き9着に敗れた。紫苑Sはスローペースだったが、今回はメンバーが強化されて全く違う流れ。道中も不利なく進めたので、現時点では力不足ということなのだろう。パドックでは馬体の張り、気配が目立っていたように調子は良かった。馬体の作りも目立つので、これから経験を積んでくれば重賞戦線で活躍できるだろう。相馬眼的にそれくらいの評価を与えられる馬。
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