天皇賞(秋)
レース回顧
シンボリクリスエスは中団の大外を進み、直線に向きペリエ騎手が追い出すと弾けるように伸びて最後は余力たっぷりにレースを制した。直線での弾け方はかなりのインパクト。大外枠、ハイペースの展開など全く関係なく、格の違いを見せつけた。パドックではほんの少し馬体に余裕があったが、春より筋肉がつき全体的に逞しくなった印象。宝塚記念のときは前捌きが少し硬かったが、今回はそういうことはなく、馬もやる気を見せていた。1回使われたことでさらに良くなりそうなので、次のジャパンCが楽しみだ。強い外国馬が出走して来ないとシンボリクリスエスの独壇場になりそう。
ツルマルボーイは最後方から大外を回って追い込んで1馬身半差の2着。ベストの左回り2000mでメンバー最速の33.1秒の切れ味は凄かったが、今回はとにかく相手が悪かった印象。パドックでは休み明けということもあり、いいときと比べると少し張りが不足していたが、全体的に柔らかさがあり仕上がりは悪くなかった。使い減りするタイプなので、今回劇走した反動がないかどうか、次走は少し注意したい。
テンザンセイザは好位からしぶとく伸びて3着に食い込んだ。直線ではエイシンプレストンとの叩き合いを制したように力をつけていることを証明した。ひと叩きされたことで調教の動きが良くなり、パドックでもキビキビと周回していたように調子を上げていた。まだ良くなる余地は残しているが、G1ではこれが精一杯か。ただある程度前に行って最後まで伸びたことは今後に向けて大きい。
エイシンプレストンは5番手を進み、直線でしぶとく伸びたが、香港のときのような切れ味はなく4着止まり。元々力のいる馬場で少し時計がかかった方がいいタイプだが、1分58秒5で走ったのだから内容は悪くない。パドックでは前走とは馬体の張り、気配が一変していたが、まだ少し体に余裕を残していた。使われながら調子を上げるタイプなので、次走はさらに良くなってきそうだ。
カンファーベストは4番手から粘って5着。直線ではこの馬なりに伸びていたが、各馬バラけていたので勝負根性に火がつかなかったようだ。ただしこの5着は今の充実ぶりを示す内容。今年の中山金杯は3着だったが、来年出走してくれば勝てそうだ。アンカツの乗りづらい馬でないというコメントが印象的。
ファストタテヤマは後方から徐々に進出して直線で差してきたが7着止まり。直線でもう少しスムーズなら掲示板はあったが、追い込みタイプだけにある程度は仕方ないところ。前の2頭のペースは速かったが、後続の馬はそれほど速くなく、結局は上がりの競馬になったことが敗因のひとつ。ただし、パドックでは馬体、気配とも良かっただけに2000mでは力負けなのかもしれない。この秋は調子がいいのでどこかで劇走があっても驚けない。鞍上が色気を持たなくなるくらい人気が落ちたときに劇走があるかもしれない。
ローエングリンは前半5F56.9秒の超ハイペースで逃げて後続を引き離したが、直線でバッタリ止まって13着に敗れた。98年のサイレンススズカを0.5秒上回るペースで行っては終いバテてて当然。吉田豊騎手が引かなかったこともあるが、オーバーペースで行った後藤騎手は言い訳をしてはいけない。安田記念で吉田豊騎手のミデオンビットにハナを切られてペースを落とされたことでローエングリンの持ち味が出せなかったために今回は逃げる選択をしたのだろうが、競い合えばオーバーペースになることは容易に想像がつくこと。そのあたりのシミュレーションが不足してはいなかったか。
ローエングリンは安田記念のときよりフックラした馬体で落ち着きもあり、海外遠征明けでも仕上がりは良かった。前半5Fを58秒台で行ければ1分58秒台前半で走り切る力があるだけにこんな競馬になってしまったのは本当に残念だ。菊花賞でも暴走したが、今回は1600m通過が1分32秒9という超ハイペースで馬に与えるストレスは相当なものだ。海外遠征して2戦目で調子を上げたように驚異的な回復力のあるローエングリンならという気もするが、とにかく次走もいい調子で出走して欲しいもの。G1を勝つにはウイークポイントをクリアしないといけないが、ローエングリンの持ち味を殺す可能性もあるので慎重に判断して欲しい。
アグネスデジタルは10番手を進んだが、直線で全く伸びずに17着に敗れた。元々パドックでは良く見せないタイプだが、今回は少し前捌きに硬さがあったので、そのあたりが微妙に影響したのかもしれない。6歳馬で少しズブくなっているとは言ってもここまで走らない馬でない。アグネスデジタルの闘志をどう蘇らせるのか。白井調教師の手腕に期待したい。
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