ジャパンC
レース回顧
タップダンスシチーは好スタートから後続を引き離して逃げると終始ラチ沿いの最短コースを進み、最後は2着に9馬身差をつけて楽勝した。11秒台のラップで後続を引き離した後はラップを落として息を入れる緩急をつけたペースで後続を翻弄。2番手のアンカツに追いかけたら自分が潰れると思わせるほどの行きっぷり。さらに後続がシンボリクリスエスをマークしていたことでノーマークになったことも大きかった。それでも9馬身差の圧勝は強いのひと言。良馬場でも勝っていたと思えるような完勝だった。秋天を回避してジャパンC1本に備えた陣営の判断と努力が実を結んだ。ただひとつ気になるのは枠入れ。1番枠なのに最後にゲート入りするというのはどういうことなのだろう。佐藤哲騎手がゲートが後入れだったことが見方したと話していることからも有利に働いたことは間違いない。有馬記念では劇走の反動がなければ好勝負できそうだが、今度は後続も黙ってはいないだろう。シンボリクリスエスとネオユニヴァースは今度は力勝負か。果たして有馬記念ではどんな結末が待っているのか非常に楽しみだ。
ザッツザプレンティは2番手からしぶとく粘って2着。アンカツが追いかけたら自分が潰れるという判断は2着に粘ったのだから正解だったのだろう。結果としてタップダンスシチーを楽に逃がすことになったが、勝負という点では間違いではない。ザッツザプレンティは菊花賞のときほど良く見えなかったが、それでもシンボリクリスエスとネオユニヴァースを完封したのだから評価できる。まだ調教の動きがフワフワしているようにもうワンランク上への成長が必ずある。橋口厩舎の馬は最初は坂路で動かない馬が多いが、本格化すると走りが一変する。ザッツザプレンティの走りが一変したときは、古馬の頂点に立っているかもしれない。今回の厳しい戦いも大きな糧になる。
シンボリクリスエスは道中ずっと前後左右を囲まれて動くに動けない状態。3コーナー過ぎからスパートしたが、直線ではいつもの伸び脚がなく3着に敗れた。とにかくマークが厳しく、馬が伸び伸び走れなかったのが大きな敗因。ペリエ騎手は重馬場に敗因を求め、敢えてマークがきつかったことを口にしないが敗因は明らかだ。外国馬の陣営が秋天のVTRを見ればシンボリクリスエスをマークするのは当然。逃げたタップダンスシチーのことは眼中にないようなレースぶりだった。ただペリエ騎手にしても有馬記念ではタップダンスシチーをゴール寸前で差し切ったが、コイントスの岡部騎手が動かないから大丈夫だと思ったとレース後に話していたように仕掛けのタイミングは岡部騎手が教えていたことは見逃せない。あとは宝塚記念でデザーモ騎手が早めに動いて終いの切れを失ったことで直線まで溜めるという乗り方にこだわったこともあるのだろう。シンボリクリスエス自身はプラス6キロだったが時期的なもので太いという感じはなかった。あとは18億円のシンジケートが既に組まれていることもあり、この中間攻められなかったことも多少影響しているのかもしれない。藤沢和厩舎の馬は、調教は軽めでその他のところで負荷をかけているが、タップダンスシチーは調教でビシビシ追われて鍛え上げられた。荒れた重馬場で鍛えられた馬とそうでない馬の差がモロに出たような気もする。最後の大一番に向けて陣営がどう仕上げてくるのか、ペリエ騎手は今度はどういう騎乗をするのか。じっくりと見極めたい。
ネオユニヴァースは内々の後方を進み、直線で内からしぶとく伸びてきたが4着が精一杯。4着に敗れはしたが、馬場の一番悪いところを通ってメンバー最速の上がり3F37.0秒を繰り出したところを評価したい。泥だらけになりながら最後まで諦めなかったネオユニヴァースの勝負根性をあらためて見せてもらった。自在性のある馬なので、もっとスムーズに前につけていれば結果を違ったかもしれない。デムーロ騎手のコメントはここには書かないが、馬に文句を言うなら乗らなくていい。宝塚記念では出遅れ、菊花賞では道中逆手前でさらに外々を回って強引に押し上げる騎乗、そして今回と馬に文句を言う前に自分の騎乗に間違いはなかったか。ネオユニヴァースの持ち味を全く生かせていないので、特例が適用されたと言ってもこのあたりが潮時という気もする。きちんと乗れば相馬眼的に有馬記念で巻き返せる力があるということを付け加えておく。激戦が続いているが、そのあたりはオグリキャップを管理した瀬戸口調教師がきちんとケアしてくるだろう。
アクティブバイオは3番手からしぶとく粘って5着。重馬場でしかも前残りの展開だったとは言え、最後までしぶとく粘ったことを評価したい。少し渋った馬場は得意だが、荒れた重馬場だとバテて失速していたのがこれまでのアクティブバイオ。前走AR共和国杯を勝ったのは伊達ではなかった。有馬記念でも条件さえ揃えば穴馬の資格はありそう。
サンライズペガサスは後方から雪崩れ込んで11着。レースでは全く見せ場はなかったが、馬体、気配は前走より上向いていた。今回は展開と馬場に尽きるので、怪我せずに走ったことだけでも善しというのが陣営の本音か。次はさらに良くなりそうなので狙い目が出てきそうだ。
サクラプレジデントは後方3番手から数頭差して14着。重馬場と前残りの展開で出番はなかった。菊花賞で目一杯走らなかったことで調子は良かったが、今回は仕方ないところ。今後はマイルから2000mの路線を進むようだ。精神面が成長すればまだ強くなる。
ツルマルボーイは最後方から追い込んだが前走のような伸び脚はなく15着。追い込みタイプのため、この馬場と展開では仕方ないだろう。秋天の劇走を心配したがデキ自体は悪くなかった。今後は休養して来春に備えるようだ。
外国馬はタイガーテイルの6着が最先着。各馬シンボリクリスエスをマークして仕掛けが遅れたこともあるが、全く見せ場がなかった。渋った馬場で欧州勢に有利なるかとも思われたが、日本を知り尽くした調教師が日本の良馬場向きの馬を連れてきたというのもあるようだ。BCターフを勝ったジョハーは最後の直線では追うのを止めていた。BCターフの勝ち馬がこんなに弱いとは思わないが、来年はとにかく良馬場での激戦を期待したい。
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