阪神JF
レース回顧

ヤマニンシュクルは後方を進み、4コーナーで外に出して追い込むと最後は逃げたヤマニンアルシオンをきっちり差し切ってレースを制した。直線半ばで内によれてスイープトウショウと接触したのはいただけないが、最後の伸び脚は凄かった。夏の北海道で牡馬と揉まれてきた強みを如何なく発揮した印象。札幌当時は前捌きが少し硬かったが、それが解消されてきたことも大きかった。本質的にはマイル向きではなさそうなのでスローペースも見方したのだろう。手前を替えるのが上手く、かなり素早く替えるがこういうタイプは東京コース走るので覚えておきたい。父はダービーとジャパンCを勝ったトウカイテイオー。今回と同コースの桜花賞はもちろん、オークスでも楽しみな馬。

ヤマニンアルシオンは17番枠から好スタートを切って道中12秒台に落とすと直線に向いてもしぶとく粘って2着を確保した。スローペースだったとはいえ、2、3番手を進んだ馬が失速しているのだから評価しないといけない。前走は馬なりのまま最後まで11秒台のラップで楽勝したようにスピードの持続力を存分に発揮した印象。母は94年にこのレースを勝ったヤマニンパラダイス。まだ馬体は成長途上だが、これから実が入ってくればもっと強くなるだろう。今後は人気になるので展開は厳しくなるが、それに打ち勝たないとG1馬にはなれない。これまで3勝馬がいない年は1戦1勝馬が2着していたが、今年もそのデータが継承された。

コンコルディアは外から徐々に進出して4コーナーで先頭に並びかけると最後までしぶとく粘って3着に踏ん張った。ファンタジーSで8着に敗れたことでかなり人気が落ちていたが、それを嘲笑うかのように劇走した。小倉芝1200mで前半33秒台で前に行って勝った馬はやはり底力があるといった印象。馬体的に距離は1200mがベストという気がしないでもないが、ひとまずはマイルをこなした。馬は徐々に変わるので決めつけてはいけないというのが持論。春に成長した姿を見てその時々で判断していきたい。

ロイヤルセランガーは後方から徐々に進出して直線で伸びたが、前を捕えるところまで行かずに4着止まり。スローペースで各馬一団になり内を回った馬はかなりごちゃついたので、ロスのある大外枠でも例年より不利は少なかった印象。本番できっちり馬体を絞って仕上げてきたが、直線ではこの馬なりに伸びたが勝ち切るまでの脚がなかった。ただこういう善戦タイプは今年の桜花賞で2着したシーイズトウショウのように人気を落とすと劇走するので注意したい。古くはホクトベガも善戦タイプだったがエリザベス女王杯で開花した。そういう意味も含めてまだ見限れない。

スイープトウショウは後方を進み、4コーナーで外に持ち出して直線で差してきたが、ヤマニンシュクルと接触する大きな不利が響いて0.2秒差の5着。直線でマチカネエンジイロとヤマニンシュクルの間を割ろうとしたが、自身が外によれてさらにヤマニンシュクルに内によれて接触し、角田騎手が手綱を引く大きな不利。その後も前が詰まって外に出しながら追ったが、さすがに間に合わなかった。それでいて上がり3Fはメンバー最速の34.3秒。普通に走っていれば勝っていたかもしれないが、その普通にが難しい馬。4コーナーでは池添騎手のダンツアイリッシュにマークされて外に出せなかったのも響いている。1番人気になるとマークされたり、展開が逆に転ぶので勝つのは大変だ。今後レースを経験して競馬が上手くなればもっと確度は高くなるだろう。今後のレースぶりに注目していきたい。

アズマサンダースは中団の外めから徐々に進出して絶好の手応えで4コーナーで先団に並びかけたが、直線ではその手応えとは裏腹に伸びを欠き6着に敗れた。現状は切れ味で勝負するタイプではないので早めに行き切っても良かったか。蛯名騎手は4コーナーで他馬と接触したのが痛かったと話している。まだ色々な課題があるのは確かだが、馬体の作りはひと際目を引いた。母のオースミシャインも見栄えのする馬だったが、アズマサンダースの馬体も惚れ惚れする。顔つきを見ても分かるが、馬が走りに前向きなので今後走ってきそうだ。相馬眼的に高評価できる馬。

マチカネエンジイロは中団からしぶとく伸びたが8着止まり。404キロと小さい馬だが、馬体細化なくデキ自体は悪くなかった。ただこれだけの多頭数で勝負どころで激しい競馬になると他の馬に甘く見られるということもあるのだろう。札幌で強引な競馬でタイセイブレーヴを負かしてきたように現状は時計のかかる1200mがベストかもしれない。まずは今後の成長を期待したい。

フィーユドゥレーヴは3番手から徐々に下がって見せ場なく12着に敗れた。逃げたヤマニンアルシオンの手応えとは対象的に3コーナー過ぎから悪くなったが、こういう負け方を見ると微妙に距離が長いのかもしれない。ファンタジーSを中途半端な状態で使ったことで馬の機嫌を損ねたような気もする。最近、山内厩舎は坂路で終い重点の調教をしているが、前半が遅いため最後の伸びがかなり良く見える。NHKマイルCのヒューマもそうだったが、各メディアの調教点が高くなる傾向にあるので注意したい。今回出走したダンツアイリッシュも終い重点でメディアは高評価だった。


[Home]