天皇賞(春)
レース回顧

イングランディーレはスローペースで逃げて2コーナーから後続を引き離すとラスト3Fを36.1秒にまとめて7馬身差でレースを制した。1000m通過が61.9秒、2000m通過が2分5秒0(昨年2分3秒8)というスローペースにも関わらず、3コーナーでは後続と20馬身くらいの差があった。2番手にアマノブレイヴリー(小牧騎手)、4番手にヴィータローザ(岩田騎手)で、道中2人が全く追いかけなかったのは後続が動かなかったこともあるが、淀の長距離戦の経験の浅さからか。岩田騎手の「こんな結果になってしまい、恥ずかしい」というコメントは道中動かなかった全員の気持ちか。ただし、イングランディーレの長距離適性も見逃せない。展開に恵まれたとはいえ、それだけで片付けられない勝利だろう。昨年の日経賞でバランスオブゲームを子供扱いして2分31秒3の好タイム(荒れ馬場)で勝ったのはやはりダテではなかった。横山典騎手は過去10年で京都3000m以上のレースで14回騎乗して[4-3-2-2-0-2]で連対率50%、複勝率64.3%。昨年の菊花賞ではリンカーンを自在に操って0.1秒差の2着に持ってきた。人気面を考えると武豊騎手より上と言ったら言い過ぎか。この勝利で自身のG1連敗を34、関東騎手のG1連敗を30でストップさせた。今春G1で元気な関東馬で更なる活躍を期待したい。

ゼンノロブロイは4、5番手で折り合って3コーナーからスパートしたが、最後はシルクフェイマスを交わして何とか2着。この日が京都初めてのオリヴァー騎手を責める気にもなれないが、2着を確保したとはいえ、収穫があったかどうかは疑問。単純に前に行っていたぶんなだれ込んだというレースぶりだった。シルクフェイマスは折り合いを欠いていたので、叩き合いで勝ったという感じはない。ただし、馬体は研ぎ澄まされて良くなっていたし、元々この距離がベストではない馬。神戸新聞杯の直線で弾けたように距離が短くなれば一変するので注意したい。相馬眼的に今後はネオユニヴァースと争うことになりそうだが、パンパンの良馬場なら負けないだろう。

シルクフェイマスは3番手からなだれ込んで3着。道中折り合いを欠き気味のぶん、終いの伸びを欠いた印象。逃げたイングランデーレとの差を考えるともっと前に行った方が折り合いがついて良かったと思うが、長距離戦に実績のない四位騎手にそこまで求めるのもどうか。パドックでは周回するごとに煩くなるといった感じでいつもよりイレ込み気味だった。この馬も3200mがベストではないので、距離短縮で大きく変わりそうだ。日経新春杯で見せたインパクトはG1で通用するもの。今後の重賞戦線を賑わせてくれるだろう。

ネオユニヴァースは後方を進み、3コーナー手前から一気にスパートして直線に向いたが、そこから全く伸びずに10着に敗れた。デムーロ騎手は直線で伸びを欠いたことで3200mは少し長いというジャッジだが、やはり淀の長丁場は全く分かっていないようだ。菊花賞では出遅れ、道中逆手前、向こう正面からスタートという直線でバテて当然という騎乗。今回は3コーナー手前の坂で一気にスパートして下り坂でも大外から強引に上がっていく、淀の長丁場では絶対にやってはいけない騎乗だった。いくらネオユニヴァースでもあれで直線伸びたら化け物。イングランディーレとの差があったから一気にスパートしたのだろうが、敗因をネオユニヴァースの距離適性に求めるのが許せない。パドックでは馬体、気配とも素晴らしく、昨秋以降では1番と言える仕上がり。菊花賞に続き、こんな騎乗をされては陣営も頭が痛いことだろう。相馬眼的に2冠馬はまだ終わらない。切れ味勝負では分が悪いが、馬場が渋れば再度頂点に立つことも可能とみる。ただ強い3歳馬が出てくる秋になったらどうかは分からない。

リンカーンはスタートして中団のやや後ろを進んだが、直線で全く伸びずに13着に敗れた。直線でネオユニヴァースと接触して、その後、前が詰まるシーンもあったが、それよりも道中折り合いを欠いていたのが敗因だろう。スタートして中団あたりにつけたが、そこで控えたことで折り合いを欠き始めた。しかも道中超スローペースだったことも影響したのだろう。武豊騎手だから折り合いがつかなかったで済まされるが、普通なら乗り替わって当然の騎乗。昨年の菊花賞のサクラプレデントでも全く折り合いがつかなかった。02年の菊花賞でノーリンズンに騎乗して落馬した後は、淀長距離の武豊騎手はデータほど当てにならない。馬は騎手の微妙な心理を表すという。あとは今回初めてメンコをつけたようだが、それが微妙に影響したような気もする。馬体の仕上がり自体はかなり良かった。音無調教師の巻き返しに期待したい。

ザッツザプレンティは6番手から全く動かずに直線でも見せ場なく16着に敗れた。昨年のジャパンCでもタップダンスシチーを追いかけずに逃げ馬に楽勝される結果を招いたが、今回も同じようなレースぶりだった。ただし、パドックや返し馬を見る限り、調子に問題があったように思える。阪神大賞典を使って本来ならグンと調子を上げてくるはずだが、逆に調子が落ちていた。まともな調教ができなかったことが影響しているのだろう。坂路調教でアンカツが乗ると時計がバラバラ。極端に早くなったり、遅くなったりする。調教師の意図しない時計。調整が上手く行ったとは言えないだろう。これはザッツザプレンティに限った話ではなく、他にもこのパターンで駄目だった馬が結構いる。橋口調教師、松元茂調教師あたりは、そろそろ気付く頃か。ザッツザプレンティは、今後G1では馬場が渋るなどしないと苦しいだろう。


[Home]