秋華賞
レース展望

牝馬クラシック最終戦。昨年はスティルインラブが3冠を達成。外から捻じ伏せる強い競馬で感動的なゴールシーンだった。今年は2冠馬はいないが、メンバーが揃い見どころのあるレースが期待できそうだ。オークス馬ダイワエルシエーロの回避は残念だが、故障ではないのでエリザベス女王杯で復帰してもらいたい。1番人気は桜花賞馬ダンスインザムード。オークス4着の後、アメリカンオークスに挑戦して惜しい2着だった。全姉ダンスパートナー、全兄ダンスイザダークという超良血馬。この馬の取捨が最大のポイントなのは言うまでもない。

過去8年で1、2番人気は各4連対で連対率50%。1番人気が連対した4回は相手に2、3番人気が来て馬連は全て10倍以下の堅い決着。1番人気が消えた4回は人気薄同士か極端な人気薄が連対して馬連は全て万馬券と大荒れ。最近3年は1番人気が連対し堅く収まっている。穴をあけたのはハイペースになったときの追い込み馬とスローペースになったときの逃げ先行馬。直線の短い内回りコース、多頭数、そしてG1レースということが騎手心理に働き、展開に微妙に影響する。展開の読みが重要になる。

トライアルレースとして行われたローズSの評価も重要なファクター。前半5F58.9秒というのは過去10年で最も速いペース。00年にニホンピロスワンが直線一気を決めたときが前半5F60.6秒。これだけ見てもいかに速いペースだったかが分かる。逃げたのは武豊騎手のメイショウオスカル。スローで逃げて前残りを狙うのだろうとみていたが、特に競り合いになった訳でもないのにハイペースで逃げた。ここに今回の秋華賞を読む上で重要なポイントがあるのではないか。

ローズSを勝ったのは後方から追い込んだレクレドール。2着は内からしぶとく伸びてきたグローリアスデイズ、3着は大外を捲くって先に抜け出したスイープトウショウ。桜花賞2着のアズマサンダーズは5着、オークス馬ダイワエルシエーロは7着に敗れた。春の実績馬を一掃したレクレドール、2着のグローリアスデイズは春の勢力図を塗り替えたのか。1番強い競馬をしたのは直線一気を決めたレクレドールなのか。もしそれが違うのならどの馬なのか。そして今回の秋華賞で買える馬は・・・。

ダンスインザムードは相馬眼的に高評価できる馬。桜花賞は好位から上がり3Fメンバー最速の34.2秒を繰り出し2馬身差の楽勝だった。前に行ってメンバー最速で上がるというのは並の馬にはできない芸当。オークスは4着に敗れたが、初の左回り、重馬場、馬込みでの競馬などが複合的に絡んだのではないか。プラス14キロだったが、太く見えなかったし、藤沢和調教師の仕上げが甘かったとは思わない。ただ2400mの距離という可能性はまだ否定できない。今回は右回り、2000m、そして良馬場と条件が揃いそうだ。

昨年アドマイヤグルーヴがエリザベス女王杯でスティルインラブを逆転したようにダンスインザムードも馬体的に優位性を持っている。相馬眼的に春に戦ってきた馬とは差は広がって当然。だたし今回は米国遠征以来となる休み明け。仕上がりが鍵になる。元々テンションの高い馬で間隔が空いても走るタイプ。輸送で馬体が大幅に減ったり、極端にパドックでイレ込んだりすると危険だが、春より精神面は成長しているはず。武豊騎手は過去5年、京都芝2000mで[23-11-7-34]で勝率30.7%、連対率45.3%の好成績。オークスの雪辱は目前か。

スイープトウショウはローズSで先に抜け出したが、ソラを使ったようだ。これまで最後に差し切る競馬をしてきたので、馬が戸惑ったのかもしれない。陣営はこれがトライアルで良かったというのが正直ところか。今回はもっと大胆に乗れば面白そうだが、それも展開次第だろう。阪神では4戦1勝なのに対し、京都では3戦3勝。京都内回り芝1400mの新馬戦では持ったままでラスト11.1秒の切れ味を見せた。相変わらずのガニ股走法だが、今回は坂路で鞭を入れて仕上げてきている。鞍上はデュランダルで数々の追い込みを決めてきた池添騎手。一発を期待したくなる騎手だ。

アズマサンダースはローズS5着で今回は人気を落としそう。レース巧者で安定して走るが、まだ1勝しか挙げていないように勝ち味に遅いタイプ。前走は馬体に少し余裕があったし、調教の動きは今回の方がいいので上積みはありそうだ。レクレドールはここまで5戦して上がり3Fは全てメンバー最速。ステイゴールドの全妹だが、兄とは違うタイプで末脚の切れ味は強烈だ。ローズSでは春の実績馬相手にメンバー最速の35.1秒で差し切り勝ち。今回はアンカツが騎乗停止のため、小牧太騎手に乗り替わる。

グローリアスデイズは春は実績馬に歯が立たなかったが、秋緒戦のローズSでスイープトウショウとの競り合いを制した。3コーナー過ぎから追い通しだったが、馬込みに入るとズブくなるようだ。本番前にこの点が分かったので、柴原騎手がどう対策してくるか。リンカーンの全妹という血統的な魅力もある。ヤマニンアラバスタは紫苑Sで失格になったが、直線の切れ味は見どころがあった。芝2000mでは昨年のホープフルSで追い込んでエアシェイディの2着がある。鞍上は柴田善騎手。

これまで秋華賞で波乱を演出してきたのは実は武豊騎手。1番人気でエアグルーヴ10着、トゥザヴィクトリー13着に終わり、馬連は155.5倍、946.3倍の万馬券だった。過去10年で武豊騎手が牝馬限定G1で1番人気になると[5-2-3-7]で勝率29.4%、連対率41.2%。単勝1.0〜1.4倍[3-0-0-1]、単勝1.5〜1.9倍[0-0-0-3]、単勝2.0〜2.9倍[2-1-2-0]、単勝3.0倍以上[0-1-1-3]という成績。オークスのダンスインザムードは単勝1.4倍で4着。馬連は6-4番人気で100.8倍だった。あくまで参考データだが、ダンスインザムードが崩れれば大波乱は間違いない。

ここまで簡単にまとめてみたが、あとは各馬の最終調教の動き・気配、枠順、展開など総合的に判断して結論を下したい。牝馬のレースは直前の気配が大きなポイントになり得るので、パドックを見て自分で納得した上で馬券を買った方がいいだろう。この秋の重賞のトレンドは逃げ切り。コースは違うが秋の中山の重賞は全て逃げ馬が制している。昨年はレース展望で穴馬に指名した忘れな草賞の勝ち馬マイネサマンサが逃げてゴール前まで粘って0.2秒差の5着。穴を狙うなら逃げ馬を少し買い目に入れておくと面白そうだ。

2004/10/14
競馬アナリストGM

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