菊花賞
レース展望(1)

クラシック最終戦となる菊花賞。ダービー馬と皐月賞馬が参戦しないのは97年以来7年ぶり(2冠馬サニーブライアン引退)。ダービー馬キングカメハメハは屈腱炎発症、皐月賞馬ダイワメジャーはオールカマーでシンガリ負け。2頭とも当初から天皇賞(秋)を目指していたので直接菊花賞には関係ないが、春の高速決着での激戦がいかにハードだったか物語る。この秋はセントライト記念が2分10秒1の日本レコード、神戸新聞杯は1分59秒0で過去10年の最速タイムだった。

今年の菊花賞は春から高速馬場で戦ってきた馬たちによるサバイバル戦。これに春の勢力図を一気に塗り替える馬がいるのかというのがテーマになる。真に強い馬が勝つと言われる菊花賞。今年1番強い馬は果たしてどの馬なのだろう。昨年は3冠がかかったネオユニヴァースを同じ社台RHのザッツザプレテンティが負かし3冠を阻止したのが印象的。以前はスローの上がり勝負が多かったが、最近はスタミナが問われる。相馬眼的な観点を含め、現時点での展望をお届けしたい。

過去10年で1番人気は[2-1-1-6]で3連対。96年のダンスインザダークを最後に勝ち馬は出ていない。最近5年は6、5、4、落馬、3着で連対なし。97年以降はダービー馬が1番人気に6回なったが[0-1-1-4]で連対したのはスペシャルウィークのみ。00年に10月開催になってから波乱傾向が強まっており、春のクラシックで連対した馬の連対はエアシャカールのみ。トライアルで連対した馬も不振でセントライト記念[0-1-0-4]、神戸新聞杯[0-0-1-5]で連対したのはセントライト記念2着のトーホウシデンのみ。

最近3年の馬連配当は462.1倍、960.7倍、55.4倍と大荒れ。ただし00年と01年の勝ち馬マンハッタンカフェ(6人気)とヒシミラクル(10人気)は翌年の天皇賞(秋)を制しており、フロックではなかった。2頭に共通していたのは芝2200m以上で強い競馬をして勝っていたこと、前々走1000万条件勝ち、前走トライアルで凡走(4着、6着)していたこと。長距離得意な馬にトライアルの距離は短いし、1000万条件を勝ち賞金的に菊花賞に出走可能ならトライアルで目一杯の競馬はしない。G1は狙って獲るもの。トライアルは勝ちに来た馬が勝つ。ここがポイントだ。

昨年のザッツザプレンティはダービーで18番枠スタートから終始大外を回り、アンカツが向こう正面からスパートするかなり無謀な騎乗。それでネオユニヴァースとは0.2秒差。この時点でスタミナが証明されていた。神戸新聞杯はたんぱ杯2歳Sを勝ったコースで陣営は勝ちに来たが、サクラプレジンデントが強引に捲くったことで内がごちゃつき結果的に一杯に追えず余力を残せた。直線で不利を受けて目一杯走らなかった馬は次に激走することが多い。トライアルで目一杯走って好走した馬は余力があるかどうかがポイントになる。

人気になりそうなのはコスモバルク、ハーツクライ、ハイアーゲーム、スズカマンボ、ホオキパウェーブ、オペラシチーといったところ。馬連はハーツクライが1番人気になりそうだが、単勝は北海道の方々ががんばればコスモバルクが1番人気か。コスモバルクは皐月賞で大外18番枠、ダービーはコースの内側に大量の砂を撒かれ、今回は予想通りコースロスの大きい外枠15番に入れられた。JRAは外厩馬にクラシックを勝たせたくないのだろう。秋華賞で外から差した2頭で決まったように先週は外が伸びていた。馬場の設定も完璧か。

セントライト記念は向こう正面でハナを奪ってそのまま押し切る強い競馬だった。3着以内に入って権利を獲らないと菊花賞に出走できないため、陣営は北海優駿を使って仕上げてきた。そのときが重め残りで辛勝。セントライト記念ではマイナス12キロと絞り込んで結果を出した。トライアルを勝ちに来て日本レコードで激走。今回が本番の菊花賞だが、これをクリアできる体力がコスモバルクにあるかどうかだろう。あとはまだ折り合いに課題を残している点も不安材料。

今回は距離が3000m。五十嵐冬騎手は京都芝コースの経験がない。騎手の腕が問われる淀の長丁場。折り合いに課題のある馬を上手くエスコートできるのか。ダービーの4コーナーで五十嵐冬騎手は何度も後ろを振り返った。馬を信じているのか疑いたくなるような騎乗。馬はバランスを崩していた。ただあれだけ暴走して直線でダイワメジャーが来るともうひと伸びしていたコスモバルク。凄いスタミナと勝負根性だ。馬は強いが、騎手が下手。誰の目にもそう映っただろう。

京都コースの経験は今さら仕方ない。馬を信じて乗れるかどうか、馬の力を発揮できるかどうかだろう。相馬眼的に淀の3000mをこなす体力はあるとみる。ダービーの後、岡田氏は「あんなペースで行ったら勝てるわけがない。馬の後ろに入れて競馬をして欲しいと、あれだけ口を酸っぱくして言ってきたのに」とマスコミに話した。先週、秋華賞を勝った池添騎手は鶴留調教師に「悔いのないように乗ってこい」と言われて緊張が吹っ切れ、末脚勝負に徹しようと腹を決めたそうだ。勝者と敗者のこの違い。クリアしないといけない課題は見えている。

ハーツクライはダービーで最後方から追い込んでキングカメハメハに1馬身半差の2着。横山典騎手が一発を狙った究極の騎乗だった。ハイペースの展開も味方したが、能力がないとレースの上がりを1.6秒上回る34.3秒の末脚は使えないだろう。神戸新聞杯は最後方から追い込んで3着。勝ったキングカメハメハにはまたしても歯が立たなかったが、あの馬は化け物。終いだけの競馬で大きなストレスはなく、武豊騎手が脚を計れたという点で内容はあった。今回は3戦2勝と得意にしている京都コース。折り合いに不安もない。

京都新聞杯で上がり3F33.4秒で差し切ったように単純な切れ味勝負に強いタイプ。ただし後方から上がって行った皐月賞では最後に伸びを欠いた。京都新聞杯とダービーはペースが速かったが、後方に控えたこの馬にとってはスローの上がり勝負。神戸新聞杯でも春のイメージは払拭できなかった(しなかった)。自分から動いた場合にいつもの切れる脚が使えるのかどうか。道中で動いて行かないのなら少し展開の助けが欲しい。秋華賞を勝ったスイープトウショウと同じようなステップでガニ股走法の追い込み馬と共通点が多い。2週連続で追い込みが決まるのか。今年の武豊騎手はG1で[1-0-1-9]で連対したのは桜花賞のみ。

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