有馬記念
レース展望
ファン投票で選ばれた馬たちによるドリームレース。今年の出走馬は15頭。うちG1馬は天皇賞(秋)とジャパンCを勝ちファン投票1位に支持されたゼンノロブロイ、春のグランプリ宝塚記念を制したタップダンスシチー、菊花賞を制したデルタブルース、JBCクラシックを3連覇したアドマイヤドン、安田記念を制したツルマルボーイ、G1-3勝の実績馬ヒシミラクルの6頭。これに今年の競馬を盛り上げたコスモバルク、宝塚記念2着のシルクフェイマスが加わる。キングカメハメハの引退、4歳有力馬のリタイアなどあったが、まずまずのメンバーが揃った。
過去10年で1番人気は[5-1-0-4]で連対率60%。3歳馬と牝馬を除くと[4-1-0-1]で連対率83.3%と信頼度は高い。ちなみに天皇賞(秋)とジャパンCを制したスペシャルウィーク、テイエムオペラオーは有馬記念で2、1着と連対を確保。ゼンノロブロイにとっては心強いデータ。馬連配当は6回が10倍台までに収まっているが、01年と02年は13番人気が連対して万馬券決着となった。中山芝2200m以上のG2で連対のある馬が穴をあけている。
有馬記念は時期的にサバイバル戦になるのがひとつのポイント。古馬はG2前哨戦→天皇賞(秋)→ジャパンC、3歳馬はトライアル→菊花賞→ジャパンCと過酷なローテーション。今年は有力3歳馬がジャパンCを使った。昨年は菊花賞1着、ジャパンC3着のザッツザプレテンティが11着に敗れ、菊花賞2着から直行したリンカーンが2着。3歳馬の主流ステップは過去10年で4連対の菊花賞。ジャパンCを使った3歳馬はタフさ、回復の早さが求められる。古馬にも言えるが、余力があるかが大きなポイント。
あとは折り合いも重要なポイント。スタートしてすぐに大歓声が起きるスタンド前に向かう。昨年アクティブバイオとザッツザプレンティが掛かったようにそこで折り合いを欠いたらアウト。大歓声に動じない精神力が求められる。もうひとつはスピードとスタミナ。中山芝2500mは内回りコースでペースは上がりにくいが、連対馬は芝2000mをこなすスピードのある馬が多い。シンボリクリスエスは天皇賞(秋)、タップダンスシチーは朝日CCをレコード勝ちしていた。2500mをこなすスタミナも必要不可欠だが、スピードのある馬に注目したい。
今年の1番人気はゼンノロブロイ。G1で惜敗が続いていたが、天皇賞(秋)とジャパンCを連勝した。ライバルが次々にリタイアしてメンバーが楽になった感もあるが、ジャパンCは2着のコスモバルクに3馬身差をつける圧勝。最後はまだ余裕があった。3歳春から相馬眼的に高評価してきた馬が充実の4歳秋を迎え完全に本格化した印象。さらに強調したいのは、パドックでの気配。これまで以上に落ち着きがあり、馬に余裕が感じられた。陣営が調教パターンを確立した効果が出ているのだろう。レースでも折り合いを欠くことはまずない。
中山芝2500mは有馬記念3着、日経賞2着と勝っていないが、有馬記念はプラス12キロで太め残り、日経賞は乗り方に問題があった感。昨年の有馬記念は馬体が絞れずに調教で負荷をかけ過ぎたが、今年は確立された調教パターンで調整されている。冬場は太くなりやすいタイプだが、陣営はそのあたりを十分にケアして長めに乗っている。最近のレースぶりから右回りを危惧する声もあるが、神戸新聞杯での直線の弾け方を見る限り、右回りは問題ないだろう。果たして1番人気のゼンノロブロイに死角はないのだろうか。
コスモバルクはこの秋5戦目。セントライト記念、菊花賞、ジャパンCは全て激戦でストレスは相当なものだろう。ビッグレッドファームでハードに鍛えられ、過酷な輸送に耐えてきた。並の馬なら壊れてしまうが、バルクは違う。ジャパンCでは最後の直線で差し返す意地を見せた。この勝負根性がバルクの真骨頂。ゼンノロブロイと瞬発力勝負では分が悪いが、得意の中山なら差は詰まるだろう。有馬記念はサバイバル戦。バルクの強靭な体力に賭けてみる手はある。こういうタイプの馬はおそらく小細工すると負ける。馬と五十嵐冬騎手に任せれば活路は開けるはずだ。
タップダンスシチーは凱旋門賞以来の出走。ここにきて引退が撤回され、来年も現役を続行することになった。これをどう考えるか。調教師や助手はあと2週欲しいと口を揃えて言う。ただ今年の金鯱賞より仕上がりはいいとも言う。昨年の東京競馬場リニューアル記念では調教師の泣きコメントもあり7番人気だったが、結果は2馬身差の楽勝だった。今回は仕上がりがポイントになるが、自分の目で判断したい。春の宝塚記念ではゼンノロプロイを約3馬身完封。一昨年の有馬記念ではシンボリクリスエスを最後まで苦しめた。藤沢和厩舎には嫌な相手だろう。
あとはジャパンC3着で菊花賞がフロックでなかったことを証明したデルタブルース、春のG1レースで好勝負したシルクフェイマス、久しぶりの芝戦になるアドマイヤドン、ステイヤーズSを楽勝して武豊騎乗で臨むダイタクバートラムあたりが続きそうだ。過去10年の有馬記念で武豊騎手は[0-4-1-4]で連対率44.4%。全て掲示板を確保しており、レースを知り尽くしている。ダイタクバートラムは中山芝戦で[1-2-2-0]で全て3着以内を確保。夏に北九州記念をレコード勝ちしたようにスピードもある。底力が通用するかどうかだが、乱ペースになるようだと馬のスタミナと騎手の腕が利いてきそうだ。少し注意したい。
今回は藤沢和厩舎と橋口厩舎が3頭出し。ジャパンCで岡部騎手のマグナーテンが逃げてペースを作ったが、藤沢和厩舎はどんな手で来るのだろう。今回は岡部騎手がコイントスに騎乗する。コイントスの臼田氏はハイアーゲームと2頭出し。コイントスは一昨年の有馬記念で3着したように調子が良ければそこそこ勝負になる馬。どんな競馬をさせるのか非常に興味深い。橋口厩舎はダイタクバートラム、ツルマルボーイ、ハーツクライと全て追い込み馬。武豊騎手がスイッチを入れれば3段ロケットで飛んで来るのだろう。ただ少し展開の助けが欲しい。各馬の状態面を見極めて、展開を読み切った上で最終決断を下したい。
2004/12/23
競馬アナリストGM
[Home]