有馬記念
レース回顧

ゼンノロブロイは2番手を進み、逃げたタップダンスシチーを最後に半馬身交わしてレースを制した。勝ち時計は昨年のシンボリクリスエスのレコードを1秒更新する2分29秒5。道中淀みがなくラスト6Fから11秒台のラップが続く厳しい流れ。完全に地力勝負になったが、前に行って止まらない2頭はやはり強かった。ゼンノロブロイは宝塚記念でタップダンスシチーに子供扱いされたが、今回は地力勝負できっちり差し切った。ヒシミラクルに外からピッタリとマークされて並の馬なら息が入らずに失速してしまうが、力を抜いて走れる今のロブロイには全く関係なかった。

4歳秋を迎え、完全に本格化。有力4歳馬が次々にリタイアする中、最後まで耐え抜いて秋のG1を3連勝で締めくくった。ペリエ騎手と藤沢和調教師は有馬記念3連覇。シンボリクリスエスで学んだノウハウを見事に生かし切った印象。クリスエスは燃えやすいタイプだったが、ロブロイは調教、パドック、レース全てにおいて落ち着いている。馬体の作りはクリスエスの方が見栄えがするが、精神面では断然ロブロイだろう。来年は英国のキングジョージへの参戦が検討されている。完全に本格化したゼンノロブロイ。海外での活躍が楽しみだ。

タップダンスシチーは好スタートからハナを切ったが、最後にゼンノロブロイに差されて惜しい2着。海外遠征明けだったが、パドックでは馬体の仕上がり、気配とも上々で落ち着いて周回していた。調教でもいい時の癖を見せていたし、このレベルの馬になると自ら体を作るのだろう。レースでは淀みない流れで持ち味を存分に出したが、最後は相手の方が一枚上だった。ゴールした後に佐藤哲騎手がペリエ騎手に左手を差し出したのは満足のいくレースができたということ。有馬記念で7歳馬の連対は1970年のスピードシンボリ(1着)以来24年ぶり。タップは来年も現役続行。馬券的に相性のいい馬。がんばりを期待したい。

シルクフェイマスは内ラチ沿いの好位を進み、直線で外に持ち出して伸びてきたが3着が精一杯。ロスのない競馬をしたが、上位2頭には敵わなかった。パドックでは天皇賞(秋)のときに減っていた馬体が回復し、いい時のデキに戻っていた。最終調教では手足の俊敏さが不足していたが、レースを重ねるにつれて馬が落ち着いてきたということなのだろう。今後はそのあたりをケアしたい。日経新春杯でインパクトのあるレースをした馬。天皇賞(春)3着、宝塚記念2着、有馬記念3着とG1で結果を出した。父マーベラスサンデーは宝塚記念でG1初制覇。G1は狙って獲るもの。今年より楽なステップでいける来年の宝塚記念はチャンスだろう。

ダイタクバートラムは後方から追い上げて4着。上位3頭が内を回ってきたのに対し、外を回ったぶんのロスがあったが脚質的に仕方ないところ。淀みのない流れだと差し馬も脚を使わされるので、それほど切れる脚は使えない。武豊騎手がギリギリ届く位置からの競馬をしたが、今回はこれが精一杯だった。ただ最後の伸びは目立っていたし、馬体を見ても天皇賞(春)で1番人気に支持されたときのデキに近づいてきたのは確か。長距離戦で絶対的な強さを誇るダンスインザダーク産駒。来年の天皇賞(春)に向けて楽しみはある。

デルタブルースは4番手からしぶとく粘ったが5着が精一杯。ゼンノロブロイをマークして直線で食らいついたが、最後は離された。ただこの速い流れで前に行って掲示板を確保したのだから能力はある。当日はジャパンCのときより18キロ重い530キロ。菊花賞と比べると4キロ増だが、長距離輸送があってプラス18キロというのはやはり太かったのだろう。元々太く見せるタイプで極端に太いという感じはなかったが、少し余裕が感じられた。ジャパンC3着、有馬記念5着で菊花賞がフロックでなかったことを完全に証明。この馬もダンスインザダーク産駒。来年の天皇賞(春)は相当やれそうだ。

コスモバルクは中団を進んだが、直線で伸び切れずに11着に敗れた。中間は馬体回復に努めて最終調教は軽め。ただその後馬体が増えて金曜にもう1度時計を出した。当日はプラス6キロで復帰戦の北海道優駿と同じ体重。いつもと違うパターンの調整で生じた陣営の迷い。少なくとも勝負の仕上げではなかった。レースでは道中外々を回る大きなロスがあり、内枠を全く生かせなかった。タイムトライアルレースでこれでは苦しい。バルクの上がり3Fは35.6秒。外を回るロスを考えれば止まっていない。いつも通りの競馬ならもう少しやれただろう。バルクの持ち味と五十嵐冬騎手へのプレッシャーを考えればロブロイをマークする作戦とその公表はプラスに働くことはないと予測できなかったのか。

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