天皇賞(秋)
レース展望

3歳馬と古馬による秋の中距離王決定戦。過去10年で1番人気は[3-2-1-4]で5連対。以前は1番人気が大不振で00年にテイエムオペラオーが勝つまでは府中の2000mには魔物が棲むと言われたが、最近はテイエムオペラオー1着、同2着、テイエムオーシャン13着、シンボリクリスエス1着、ゼンノロブロイ1着で中山で行われた年を除き連対を果たしている。過去10年で藤沢和厩舎の馬が1番人気になると[4-1-0-0]で連対率100%。シンボリクリスエスとゼンノロブロイで現在3連勝中。昨年はダンスインザームードが2着に入り、ワンツーを決めた。今年1番人気が予想されるゼンノロブロイには心強いデータか。

過去10年のうち7年が5番人気以内の決着。馬連は20倍台までに収まることが多いが、昨年ダンスインザムードが13番人気で連対したように時々極端な人気薄が穴をあけている。連対馬20頭のうち19頭にG1連対経験があった。ごまかしの利かない府中の2000mで強豪メンバーの集まるG1レース。G1連対くらいの実績のない馬では通用しにくい。従って穴をあけるのもG1実績馬。人気の盲点になったG1実績馬に注意したい。昨年は新潟中越地震で取り止めた天皇皇后両陛下が今年は来場される予定。全馬が力を出し切るフェアなレースを期待したい。

ゼンノロブロイはこれまで17戦して[7-5-3-2]で勝率41.2%、連対率70.6%。4着に敗れた菊花賞と宝塚記念はどちらも直線で前が詰まる不利があった。能力の絶対値が高く、どんなレースになっても簡単には崩れない。昨年春まではG1勝ちはなかったが、秋に天皇賞(秋)、ジャパンC、有馬記念とG1を3連勝し、年度代表馬に選ばれた。今年はここまで未勝利。宝塚記念は前が詰まる不利が響いて3着に敗れ、英インターナショナルSはスムーズなレースができずに2着に敗れた。敗因ははっきりしており、力負けではない。現役最強古馬という評価は変わらない。

東京芝コースは[3-1-0-0]、芝2000mは[2-1-0-0]でいずれも連対率100%。昨年の覇者で能力が問われる東京コースは望むところ。昨年と違うのは海外遠征明けということ。9月下旬から乗り込んでいるが、軽めの調教がほとんど。この後は賞金2億5000万のジャパンCがあり、ジャパンCまたは有馬記念でディープインパクトとの対決も控えている。陣営の本気度はどの程度か。ただこのレベルの馬になるとそれなりに仕上がれば、競馬に行けば走るもの。今回も無様な競馬はしないだろう。G1レースでは1番人気は特に厳しくマークされる。今週は各騎手とも本気だろう。

横山典騎手はデビューからダービーまでゼンノロブロイに騎乗していた。ダービー2着の後に藤沢和厩舎の馬に全く騎乗しなくなったが、この夏にコンビが復活。ここは力が入るところ。G1では一発狙いの騎乗が多いが、今回は正攻法の競馬か。G1での人気別成績は1番人気[2-3-4-6]連対率33.3%、2番人気[5-7-4-12]連対率42.9%、3番人気[2-6-2-9]連対率42.1%、4番人気[1-4-4-9]連対率27.8%、5番人気[0-6-3-11]連対率30%。1番人気より2、3番人気の方が連対率が高いのがノリらしい。過去に1番人気で臨んだ天皇賞(秋)はサクラローレル3着、セイウンスカイ4着。3度目の正直なるか。

リンカーンは京都大賞典で完全復活。先週3冠を達成した武豊騎手で人気を集めそうだ。ゼンノロブロイとは9回戦って4回先着している。最後に先着したのは昨年の宝塚記念。堅実さではゼンノロブロイに負けるが、リンカーンも能力を秘めている。東京コースはダービー8着、天皇賞(秋)12着に終わっているが、調子に問題があったのも事実。母の父トニービンだけに東京コースは苦手ではないだろう。長い距離で実績があるが、宝塚記念の走りから東京芝2000mなら何とかこなすか。雨で馬場が少し渋って時計が掛かればプラスに働く。武豊騎手は当日、天皇皇后両陛下と面会するようだ。

サンライズペガサスは宝塚記念で5着に敗れたが、直線入り口で前が詰まり立て直す大きな不利があった。最後は凄い勢いで伸びてきただけに上手く捌いていれば際どいレースになっていたはず。秋緒戦の毎日王冠は先行抜け出しで楽勝。開幕週の絶好の馬場に昼過ぎまで小雨。脚元に不安がを抱えた馬だけに適度にクッションが利いた馬場も良かったのだろう。東京は今週からA→Bコースに替わり、荒れた内側が仮柵でカバーされる。荒れ馬場は良くないので、これはプラスに働きそう。年齢や距離を考えるとG1制覇はここが最後のチャンスかもしれない。最強世代の底力を見せるか。

スイープトウショウは宝塚記念でゼンノロブロイとタップダンスシチーを撃破。牝馬の宝塚記念制覇は39年ぶり2頭目のこと。正攻法の競馬で強い内容だった。牝馬は牡馬と戦うと怯んだりするものだが、安田記念、宝塚記念とも全くそういう点を見せなかった。調教や本馬場入場でごねることが多いが、能力は相当なもの。秋緒戦の毎日王冠は好位から伸びを欠き6着に敗れたが、長距離輸送があってプラス6キロ。陣営が言うように少し重かったのだろう。57キロも堪えた感。叩き2戦目は秋華賞1着、安田記念2着。東京コースだと脚の使いどころが難しいので、池添騎手の手綱捌きに懸かる。

ハーツクライは宝塚記念で後方からメンバー最速の上がりで2着に突っ込んだ。久しぶりにハーツクライらしい末脚を披露。横山典騎手の手綱捌きも見事だった。今回は休み明けだが、神戸新聞杯3着、大阪杯2着があるように鉄砲は利くタイプ。東京コースはダービーで追い込んで2着があるように末脚を生かすにはもってこいのコース。陣営のイメージは一昨年の天皇賞(秋)で2着したツルマルボーイか。母アイリッシュダンスで母の父トニービン。血統的な魅力もある。鞍上のルメール騎手は昨年秋のG1で天皇賞(秋)2着、マイルCS2着、ジャパンC2着と活躍した。馬と手が合うのはノリだが、そのイメージで乗れれば。

タップダンスシチーは傷腫れで調整が遅れたが、ここにきて急ピッチで乗り込まれている。03年以降、休み明けは[5-1-0-0]と結果を出しており、久々は苦にしない。左回りの芝2000mは3戦3勝(全て金鯱賞)。中京と東京の違いはあるが、今回の条件は悪くない。昨年の有馬記念は今までで最低のデキだったようだが、レコードの2着に激走した。佐々木晶調教師は最終調教を100点に近い動きとコメント。調教師のコメントを信頼すれば走れるデキにあるということなのだろう。今回も強気な競馬をしてくるはず。レース展開の鍵を握っていることだけは間違いなさそうだ。

ここまでは人気になりそうな6頭について一般的な見解を述べた。人気馬になる馬の仕上がり具合、東京芝2000mの適性、馬場の適性、展開などによって、他の馬にも狙い目があるとみている。有力馬診断と相馬眼予想では各馬をもっと鋭く突き詰めたい。今年のポイントのひとつは陣営の勝負度合い。調教過程や最終調教の動き・気配からそのあたりを読み取りたい。パドックで自分の読みと陣営の思惑が一致していることを検証したい。パドックでは各馬の一番いい時の状態をイメージしてそれと比較。フラッシュ型記憶の蓄積を素早く引き出すには人間にも「瞬発力」が必要になる。

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