競馬アナリストGM
有馬記念
レース展望(2)

今年の1番人気はディープインパクト。デビューから無傷の7連勝で3冠制覇。皐月賞は出遅れて最後方から外々を回って追い上げ、武豊騎手の鞭が飛ぶと直線で突き抜けた。ダービーは大外からメンバー最速の33.4秒で5馬身差の圧勝。最後はまだ余裕があった。菊花賞は1周目のスタンド前で折り合いを欠いたが、最後は33.3秒の末脚できっちり差し切った。まだ折り合いやレースぶりに課題があるので日本競馬史上最強馬とは言わないが、パフォーマンスは現時点で史上最高レベルにある。初の古馬相手だが、2キロ軽い55キロは有利に思える。

菊花賞は1周目のスタンド前で折り合いを欠くと他の騎手が馬を寄せて折り合いのアシストをしていた。3、4コーナーでディープの後ろにいた馬は動きたくても動けない金縛り状態。3冠が懸かったディープの邪魔をしたら自分が悪者になるという意識が働いたのだろう。直線での脚は素晴らしかったが、レースとしては物足りさもあった。有馬記念でも断然人気になりそうだが、今度は各騎手たちは菊花賞のようなレースはしない。特に外国人騎手3人は本気だろう。クラッシクでディープを負かしにいった佐藤哲、横山典騎手も策を練ってくるはずだ。

ディープの課題はスタートと折り合い。菊花賞はいつもよりまともなスタートを切ったが、まだ出遅れ癖は払拭できていない。有馬記念は直線一気が決まりにくいレース。ディープの末脚は次元が違うので、後方からでも差し切れるかもしれないが、展開、各馬の厳しいマーク、コースロスなど、出遅れ以外の要因が重なると厳しくなることも考えられる。折り合いについては、今回も菊花賞と同様にスタートしてすぐに大歓声が起きるスタンド前を通る。菊花賞は馬が1周目のゴール地点をゴールと勘違いしたようだが、今回は折り合えるのだろうか。

菊花賞で折り合いを欠いた姿を見て負かせない相手ではないと思った騎手は多いはず。02年の有馬記念はデビューから無傷の6連勝で秋華賞とエリザベス女王杯を制したファインモーション(武豊騎手)が1番人気に支持されたが、スタンド前で折り合いを欠いて先頭に立ち、結果5着に敗れた。ディープは折り合いを欠いても先頭に立つことはなさそうだが、折り合いを欠くと抑えるのに必死で流れに乗れず、自分から動いていけなくなる。出遅れと折り合い。負かしにくる陣営はそこを突いてくるのではないだろうか。

02年の有馬記念でファインモーションが掛かって先頭に立った後に絡んで行ったのは佐藤哲騎手のタップダンスシチー。最後にシンボリクリスエスに差されたが、2着に粘って大穴をあけた。タップダンスシチーは今回がラストラン。陣営はタップらしい競馬をしたいとコメントしているが、どんな流れを作るのだろう。ジャパンCのようにハイペースで逃げることがタップらしい競馬なのだろうか。佐々木晶厩舎はタップダンスシチーとオペラシチー、有馬記念3連覇中の藤沢和厩舎はゼンノロブロイとコイントスの2頭出し。オペラシチーは脚質的にディープをマークできそうだし、コイントスは前に行ける。

ディープの出遅れ、折り合いを考慮した上でディープに厳しい流れを作って何とかして勝つというのが2陣営の思いか。有馬記念は時期的にサバイバル戦になるが、レースも厳しい流れでサバイバル戦になりそう。タップもロブロイもラストランになるので、ディープとは最初で最後の対決。菊花賞とは違う力と力のぶつかり合いが見られそうだ。厳しいレースになるとディープがこれまで見せた以上のパフォーマンスを発揮する可能性があることを付け加えておく。そのパフォーマンスを発揮すれば名前通りのインパクト。大観衆が一瞬静まり返るかもしれない。

2番人気以降はゼンノロブロイ、ハーツクライ、デルタブルース、リンカーン、タップダンスシチーが続きそう。レコード決着になったジャパンCを使った馬はそのストレスが気になるところだが、ゼンノロブロイ、ハーツクライ、タップダンスシチーは今回が秋3戦目。天皇賞(秋)が例年と違ってスローの上がり勝負だったので、そのぶんで相殺できるかもしれない。リンカーンは秋4戦目だが、天皇賞(秋)は出遅れて競馬をしていない。デルタブルースはステイヤーズSを勝ち中2週での参戦。各馬については有力馬診断で掘り下げたい。昨年の有馬記念はパドック診断1-2-4位評価で決着。最後は相馬眼で鋭く斬りたい。

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