有馬記念
レース展望

ファン投票で選ばれた馬たちによるドリームレース。今年はディープインパクトがこのレースを最後に現役を引退する。無敗の3冠馬として臨んだ昨年はハーツクライを差せず2着に敗れた。今年はその雪辱戦。ハーツクライは既に引退したが、シンボリルドルフ、テイエムオペラオーに並ぶ史上3頭目の7冠馬の称号を手に入れたい。対するは、秋の天皇賞馬ダイワメジャー、メルボルンCを制したデルタブルース、複勝率100%のドリームパスポート、ダービー馬メイショウサムソン、女傑スイープトウショウなど多士済々。競馬ファンの夢を乗せてディープインパクトがラストランVを飾るのか、それとも伝説の大波乱が起きるのか。今年最後の大一番。熱いレースを期待したい。

過去10年で1番人気は[5-2-0-3]で7連対。連対を外した3頭は前走菊花賞1着のセイウンスカイ(牡3)4着、ジャパンC2着のテイエムオペラオー(牡5)5着、エリザベス女王杯1着のファインモーション(牝3)5着。4歳牡馬が1番人気になると[4-0-0-0]で勝率100%。4歳のディープインパクトには頼もしいデータ。2番人気は[1-2-1-6]で3連対、3番人気は[1-3-1-5]で4連対、4番人気は[3-1-0-6]で4連対。連対馬20頭のうち18頭が4番人気以内で人気馬が堅実なため、馬連は7回が10倍台までに収まっている。ただし01年と02年に13番人気が連対して万馬券が飛び出したように時々人気薄の前残りで波乱が起きる。

00年以降の勝ち馬6頭のうち5頭が秋のG1勝ち馬で残る1頭が昨年のハーツクライでジャパンC2着馬。秋のG1で好走した馬が強い。今年の出走馬で秋のG1を勝ったのは、ディープインパクト、ダイワメジャー、デルタブルースの3頭。00年以降の連対馬でみると12頭のうち10頭にG1連対があった。残る2頭は13番人気で激走した馬で、この2頭には中山芝2200m以上のG2で連対があった。穴はこのパターン。中山のG2で好走経験のある馬に要注意。有馬記念は時期的に秋のG1戦線で激走してきた馬たちによるサバイバル戦になる傾向があるので、余力が残っている馬、調子のいい馬に注目したい。

ディープインパクトは凱旋門賞で3着に敗れ、その後禁止薬物が検出され失格となった。絶対に負けられないレースになったジャパンCは本来の追い込む競馬で快勝。前半5F61.1秒のスローペースで上がりの競馬になったが、最後方から大外を回って全馬を差し切ったのだから強い。スローの上がり勝負は着差がつきにくいため、これまでのようなインパクトはなかったが、ディープらしい規格外の走りをしている。馬体重はこれまでで最も軽い436キロだったが、春よりさらに馬体に芯が入り進化を感じさせた。決して早熟ではなくこれから磨けばさらに強くなるのだろう。引退とは勿体ない。

中山では3戦しているが、弥生賞がクビ差、皐月賞が2馬身半差、有馬記念が半馬身差2着で圧倒的な勝ち方をしている他の競馬場とは少し勝手が違うようだ。昨年の有馬記念は2着に敗れたが、前に行った馬が残る緩い流れで前半最後方追走、洋芝が剥げた内側を通った馬が有利な馬場で大外を回り、さらに12.0秒前後で流れた後半に外を回って徐々に上がって行きかなりの脚を使った。これだけ不利な条件が重なって上がり3Fはメンバー最速の34.6秒でハーツクライに半馬身差まで迫ったのだから強い競馬をしている。雪で調整が狂った影響も微妙にあったのだろう。

今年は順調に調整できてきっちり仕上がってきそう。ただし凱旋門賞、ジャパンC、有馬記念というローテーションは楽なものではない。ジャパンCがスローの上がり勝負だったことは幸いだが、想定以上のストレスがかかっている可能性もある。当日の馬体重、パドック気配に注意したい。ディープは昨年より力をつけているし、キャリアを積んで競馬も上手くなっている。武豊騎手はジャパンCを勝った後、ラストランになる有馬記念ではディープの最高パフォーマンスを見せたいとコメントした。武豊騎手は一体どういうレースをするのだろう。スムーズな競馬で力を発揮できば勝つ可能性はかなり高い。

ただし競馬に絶対はない。実際、昨年の有馬記念でディープはハーツクライに負けた。凱旋門賞ではこれまで差されたことのなかったディープが2頭に差された。トリッキーな中山内回りの芝2500mは広くて直線の長い東京とは違う。他馬が負かす可能性はゼロではないだろう。真剣に予想を提供する以上、負かす馬という観点も含めておきたい。昨年の有馬記念はハーツクライを導き出したが、今年も相馬眼的な評価を含め可能性のある馬がいる。ヒントになるのは、ディープの昨年の有馬記念、凱旋門賞、ジャパンCの走り。分析力に優れた騎手なら逆転を狙ってくるはずだ。

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