宝塚記念
レース展望
春のグランプリ宝塚記念。今年は国内G1馬が4頭、海外G1馬が3頭出走しフルゲートの18頭。ダービー馬ウオッカも出走し、現時点でこれ以上は望めない豪華メンバー。出走メンバーを見てWAKUWAKUしない競馬ファンはいないだろう。昨年は1年を通してディープインパクトが次元を超える強さだったが、今年は実力が接近した混戦メンバー。展開や馬場状態、騎手の乗り方ひとつで着順が入れ替わる可能性がかなりある。秋のG1戦線や海外遠征を占う上でもかなり重要なレースになりそうだ。先週の阪神はレコード続出の高速馬場だったが、週末は雨が降る予報が出ているので、当日の馬場状態に注意。
過去10年で1番人気は[6-2-0-2]で8連対。1番人気はファン投票1位の4、5歳馬で休み明けでなければ[3-2-0-0]で連対率100%。2番人気は[2-0-1-7]、3番人気は[0-2-3-5]で各2連対のみ。6番人気以下の人気薄が7連対と多い。馬連は10倍台までが7回と堅く収まることが多いが、最近は140倍、19倍、113倍、19倍と2年に一度万馬券が出ている。阪神で行われた9年の連対馬18頭のうち17頭が前走3着以内。前走4着以下は[0-1-1-55]とかなり不振。一昨年に11番人気で勝ったスイープトウショウは前走安田記念2着。前走の好走が評価されなかった馬が波乱を演出している。
ポップロックは昨年の有馬記念2着馬。ディープインパクトに3馬身差をつけられたが、ダイワメジャー、メイショウサムソンには先着した。京都記念はアドマイヤムーンにクビ差の2着。アドマイヤムーンがゴール前で抑えたこともあるが、上がり3Fは0.2秒上回った。今回はアドマイヤムーンに騎乗していた武豊騎手がポップロックに騎乗し、アドマイヤムーンはテン乗りの岩田騎手に乗り替わる。ドバイシーマクラシックは外を回るロスが響いて5着。目黒記念は前年より4.5キロ重い58.5キロで勝ち、地力強化を窺わせた。馬体重は京都記念より16キロ軽い490キロだったが、これまで以上に馬体のバランスが良くなっていた。これは一体何を意味するのか。
過去10年で目黒記念の勝ち馬は宝塚記念で4、4、4、3、9着と善戦止まり。目黒記念の歴史を振り返ると1986年以降に58.5キロで勝った馬は94年のナリタタイシンとポップロックのみ。ナリタタイシンは次走天皇賞(春)で2着に好走している。今年の目黒記念のメンバーは強いとはいえないが、余力を残して勝ったことを評価したい。ポップロックは早い持ち時計がなく、阪神の高速馬場が大きな課題。ここをどう考えるか。ただ昨年4月に阪神芝2200mの500万下を5馬身差で圧勝したときの弾け方は好印象。武豊騎手はアドマイヤから解放されてから、6月は勝率トップで重賞2勝と調子を上げている。
アドマイヤムーンは[8-2-2-2]で皐月賞4着、ダービー7着以外は3着以内を確保。この2つのレースは位置取りが悪過ぎた。昨年の天皇賞(秋)はダイワメジャーと0.2秒差の3着に敗れたが、直線では外に出せず内に立て直すロスがあった。香港カップでは凱旋門賞でディープインパクトに先着したプライドにハナ差の2着。最後は物凄い伸び脚だった。休み明けの京都記念は59キロを背負って直線入り口で先頭に立つ横綱相撲の競馬でポップロックを完封。ドバイデューティーフリーではダイワメジャーを並ぶ間もなく差し切って快勝。クイーンエリザベス2世Cはスローペースで追い込んで3着。馬体が減っていた影響もあったか。
今回は海外で2戦した後のレースで状態面が鍵になる。このレベルの馬になると調教は動くので中身が伴っているかどうかだろう。当日の馬体重とパドックでの気配に注意を払いたい。これまでの実績から距離は1800〜2000mがベストだが、京都記念を勝ったように2200mは守備範囲。問題はアドマイヤムーンを知り尽くしている武豊騎手が騎乗しないこと。ダービーで岩田騎手に乗り替わったアドマイヤオーラは3着に敗れ、レース後に骨折が判明した。岩田騎手はこれまでG1で[1-2-4-36]で連対率7%。今年のG1は[0-0-1-7]。ただしタフなレースになるようならアドマイヤムーンの底力は無視できない。
メイショウサムソンは菊花賞4着、ジャパンC6着、有馬記念5着と昨年秋は善戦止まりに終わったが、調教の動きが冴えず状態面が本物ではなかった。今年は高橋成厩舎に転厩して調教の動きが良くなり、産経大阪杯と天皇賞(春)を連勝。ただし天皇賞(春)の2、3着馬はダイヤモンドSの連対馬でレベルは高くない。過去10年で天皇賞(春)勝ち馬は宝塚記念で[3-2-0-1]だが、このあたりをどう考えるか。ポップロックとドリームパスポートが天皇賞(春)出走していたら・・・。ただしメイショウサムソンは3200mがベストではなく距離短縮はプラス。メイショウサムソンを負かせるかどうかが、予想のひとつの目安になる。
ウオッカは64年ぶりに牝馬によるダービー制覇を達成。上がり3Fはメンバー最速の33.0秒。やはり能力の絶対値が3歳牡馬を超えていた。エクイロックスの使用で後肢の踏み込みにブレがなくなったことも大きい。今回は3歳牡馬とはレベルが違うメンバーで勝ち負けするには色々と条件がつく。宝塚記念で3歳馬はローエングリンの3着が最高。ダービー馬ネオユニヴァースは出遅れが響いて4着。3歳牝馬はヒシナタリー(52キロ)が0.3秒差の4着に善戦している。目標のダービーを勝った後だが、同厩のシーザリオはオークスを勝った後にアメリカンオークスを制している。課題は消耗戦になった場合。51キロでどこまで踏ん張れるか。
ダイワメジャーは昨年秋以降[4-0-2-0]で複勝率100%。皐月賞をメンバー2位の上がりで勝ったが、それ以降上がり3Fがメンバー3位以内だったことはない。ラスト1Fのラップが落ちても差されないところが凄いところ。2200mはベストではないが、こなせる距離。昨年の宝塚記念は4着に敗れたが、雨で馬場が渋っていたし、アンカツが騎乗停止中でテン乗りの四位騎手が騎乗していた。アンカツとは相性が良く[5-0-2-1]でG1を3勝。スピードの持続力が持ち味で高速馬場は合いそうだが、アンカツのイメージはそうではないようだ。完成された古馬で普通の仕上がりなら力は出せる。大崩れはないだろう。
カワカミプリンセスは今年緒戦のヴィクトリアMは10着に惨敗。休み明けで初めてのマイル戦で流れに乗れなかった。前に行った馬が有利な展開で出遅れたこと、直線で前が壁になったことが致命的だった。帰厩したときに馬体がガレており、馬体を戻しながら調整したことも微妙に影響したか。今回はひと叩きして実績のある中距離。エリザベス女王杯では1位降着も前年の勝ち馬で宝塚記念勝ちのあるスイープトウショウを寄せ付けなかった。2着のフサイチパンドラは次走ジャパンCでメイショウサムソンに先着している。昨年秋の状態に戻り、かつ2度目の騎乗となる武幸騎手が乗りこなせれば。
スウィフトカレントは休み明けの金鯱賞で中京巧者ローゼンクロイツとクビ差の2着。久々を苦にしないタイプらしい走りを見せた。昨年の天皇賞(秋)はダイワメジャーに半馬身差の2着。G1で通用する底力を秘めている。今回は3戦ぶりに横山典騎手に戻る。横山典騎手は今年のG1は[0-0-0-8]と不振。ハーツクライで2着したときのように直線一気狙いか。シャドウゲイトはシンガポールのインターナショナルCで初G1制覇。時計の掛かる稍重の芝2000mと条件が揃っていた。パンパンの良馬場での高速決着ではキツイそうだが、重馬場の中山金杯を圧勝したように重は鬼。雨で馬場が悪化して時計が掛かるようなら要注意。
先週の阪神は開幕週で土曜の芝外1600mと芝外1800m(2回)でレコードが飛び出した。土曜の三宮特別(1000万下、芝1600m)はマイラーズCを0.2秒上回る1分32秒0。日曜は芝外1800mの3歳未勝利で1分45秒5。レコードは全て外回りコースだったが、芝内2000mのマーメイドSの勝ちタイムは1分58秒4で昨年の馬場改修後、初めて2分を切った。今の阪神は時計が出やすい高速馬場。この傾向が続くのかどうか、まずは土曜の競馬でJRAの馬場設定を確認したい。雨で馬場が渋ったときの考慮も必要。予想ファクターは多数ある。各馬の適性と馬場、展開などを総合的に判断して最終結論を下したい。
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