スプリンターズS
レース展望

秋のスプリント王決定戦。一昨年はサイレントウィットネス、昨年はテイクオーバーターゲットが勝ったが、今年は馬インフルエンザの影響で外国馬の出走はない。過去10年で1番人気は[4-3-1-2]で7連対。着外に敗れたゼンノエルシドはG1と芝1200Mが初めて、サニングデールは直線で致命的な不利があった。1番人気は前走好走のG1馬、芝1200Mで4勝以上、外国馬のいずれかに当て嵌まる馬なら信頼度高い。2番人気は[1-3-4-2]で4連対、3番人気は[0-2-1-7]で2連対。秋開催になった00年以降の連対馬14頭のうち12頭が5番人気以内と人気馬が堅実だが、時々極端な人気薄が連対して大波乱が起きる。

00年のダイタクヤマトはシンガリ16番人気で逃げ切り勝ち。昨年のメイショウボーラーは10番人気で好位からしぶとく伸びて2着に粘った。3着にはシンガリ16番人気のタガノバスティーユが最内から追い込んで3連単260万馬券を演出した。今年も極端な人気薄に要注意か。過去10年の連対20頭のうち18頭に芝1400M以下の重賞で勝ち星があり、残る2頭のうち1頭に2着があった。芝短距離重賞での実績が問われる。過去10年で3歳馬は[2-0-2-18]で2勝しているが、秋に移動した00年以降は[0-0-1-11]。今年はレベルが高いと言われる3歳牝馬のアストンマーチャンとクーヴェルチュールが出走する。

サンアディユは今年のサマースプリントシリーズチャンピン。アイビスSDは初芝だったが、出遅れて中団を進むとメンバー最速タイの32.9秒で馬群を割って突き抜けた。その前のガーネットSと京葉Sではハイペースで前に行って惨敗したが、まさに一変という内容だった。直線1000mはダート短距離馬が激走することが多く、北九州記念ではフロック視されて5番人気に留まったが、結果は中団から伸び切れず7着。セントウルSではさらに人気が落ちて11番人気だったが、それを嘲笑うかのうように2番手から直線で一気に後続を突き放して5馬身差で圧勝。上がり3Fはメンバー3位の33.6秒と切れた。

勝ちタイム1分7秒1は02年のセントウルSを勝ったビリーヴと同じレコードタイム。ビリーヴは4馬身差の圧勝で次走新潟で行われたスプリンターズSを制した。セントウルSの前後半を比較するとビリーヴは33.6秒、33.5秒、サンアディユは33.5秒、33.6秒でほとんど同じ。2頭ともラスト1Fを11秒台でまとめている。今回のメンバーで前後半33秒台、ラスト1F11秒台で走ったことがある馬はサンアディユしかいない。さらに1分7秒1はメンバー最速の持ちタイム。セントウルSの圧勝は完全本格化を示すのではないか。音無調教師の「もっと早く芝適性を分かってあげれば」というコメントが印象的。ただし死角があることも事実。

アストンマーチャンはファンタジーSをレコードで圧勝し、阪神JFではウオッカにクビ差の2着。春はフィリーズRを楽勝し、3歳牝馬のトップレベルの一角を形成した。桜花賞は武豊騎手を持ってしても掛かって抑えが利かず7着に敗れた。阪神JFは内枠で折り合えたが、道中馬を前に置けない外枠がアダになった。折り合いがつかずに暴走したが、この掛かりのいい走りとスピードこそがアストンマーチャンの持ち味。馬体はさらにマッチョ化して心身とも短距離向きにシフトしていた。3歳春になって本質を見せたのだろう。陣営はNHKマイルC、オークスを使わずにスプリンターズSを目標に切り替えた。

復帰戦の北九州記念は6着。休み明けで前に行った馬には厳しい前半3F32.1秒のハイペースが影響したともいえるが、外から次々に来られてスパートのタイミングが遅れ、かつ馬場の悪い内に押し込められたことが応えている。スピードを持続したまま回れるスパイラルカーブを全く生かせなかった。今回は武豊騎手に乗り替わればエリザベス女王杯のトゥザヴィクトリーのように前掛かりのパワーを後ろにシフトできそうだが、陣営は中舘騎手を乗せてきた。これは何を意味するのだろう。小倉2歳Sは前半3F32.5秒のハイペースを2番手から押し切った。スピードの絶対値はかなり高い。

スズカフェニックスは高松宮記念の勝ち馬。当初は毎日王冠から始動予定だったが、夏のスプリント戦線を見て参戦を決めたようだ。馬インフルエンザの影響で帰厩が遅れ、かつ馬体がガレて帰ってきたので状態面に注意。このレベルの馬になると調教は動く。キングストレイルは休み明けで京成杯AHを制した。中山芝は[3-2-0-3]の得意コースだが、芝1200mは初めて。高速決着になった場合にどこまで対応できるか。クーヴェルチュールはアイビスSD3着、キーランドC1着と頭角を現してきた。フェアリーSで10着に敗れたように中山の急坂と前走から3キロ増の斤量が課題。ブラックホーク産駒で勝てば親子制覇になる。

中山芝1200m[3-0-1-1]のアイルラヴァゲイン、高松宮記念2着のペールギュント、同3着でアンカツとは[2-1-1-0]と相性がいいプリサイスマシーン、ヴィクトリアMを勝ったコイウタ、一昨年の高松宮記念の勝ち馬オレハマッテルゼなど伏兵は数多い。人気馬の一角が崩れれば3連単は高配当必至だろう。中山は最終週で今週もCコースで行われる。JRAが馬場と枠順をどう設定してくるか注目したい。高松宮記念は流れが緩むとマイラータイプの差し馬が活躍する傾向があり、最近2年の連対馬は芝1200mが初めてだった。スプリンターズSはどうなのだろう。ポイントは展開とスプリント能力。相馬眼的に評価できる馬を狙う。

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