スプリンターズS
レース回顧

アストンマーチャンは前半3F33.1秒のハイペースで逃げて直線で後続を引き離すと最後は一杯になりながらしぶとく粘ってレースを制した。ラスト3F11.1-12.0-13.2秒で最後は失速したが、不良馬場で内ラチ沿いを回ってタイムトライアルレースに持ち込んだことが功を奏した印象。陣営は中山芝1200mで逃げると高確率の中舘騎手を起用したように最初から逃げ切るつもりだったようだ。スタートはローエングリンがフライング気味に出たが、その後のアストンマーチャンの回転の早いフットワークはインパクトがあった。初めてスタートから本気で走らせたことで本質を見せた印象。パドックでは馬体はさらに10キロ増えてマッチョ化しスプリンターらしい体型になっていた。3歳牝馬でも馬体の造りは最も目立っていたし、ひと叩きされたことで落ち着きもあった。陣営がこのレース一本に絞って仕上げてきたことが実を結んだ。ピッチ走法で道悪はこなしたが、良馬場の方がスピードを生かせるという点で良さそうな感もある。3歳牝馬の勝利は92年のニシノフラワー以来15年ぶり。秋開催になってからは初めてで、今年の3歳牝馬のレベルの高さを証明した。中舘騎手は94年エリザベス女王杯以来13年ぶりのG1制覇。石坂調教師は00年のダイタクヤマトに続きスプリンターズS2勝目。ダイタクヤマトも渋った馬場で逃げ切りだった。今後は香港スプリントを視野に入れて調整される予定。これまで日本馬は不振だが、アストンマーチャンなら通用しそうだ。

サンアディユは3、4番手を進み、直線でしぶとく伸びてアイルラヴァゲインをクビ差交わして2着。前半ハイペースで飛ばすと良くないため、川田騎手は自分のペースを守って進んだが、アストンマーチャンに馬体を併せるところまで行かなかった。4コーナーで少し挟まれて仕掛けが遅れたのが響いた印象。それでも最後にしっかり伸びて2着を確保したようにセントウルSの走りがフロックでなかったことを証明した。渋った馬場は苦にしないタイプでそのアドバンテージはあったが、斤量2キロ差で相殺された感もある。前走より馬体は増えていたが、今回の方が馬体は見栄えし、トモの厚みが目立っていた。本番で仕上げてきたのだろう。ハイペースで飛ばすと良くないという死角は見えているので、そこを如何にクリアするかが課題。今後はアストンマーチャンと同様に香港スプリントを視野に入れており、招待されれば出走の意向のようだ。

アイルラヴァゲインは1枠1番から内ラチ沿いの2番手を進み、直線で少し外に出してしぶとく粘り3着。松岡騎手が1枠1番を最大限に生かす騎乗をして、現時点の力を出し切った印象。馬場が不良まで悪化して内外の差がなくなったため、内をロスなく回ったぶん有利だった。パドックを見る限りそれほど仕上がりは良くなかったが、中山芝1200mで3勝を挙げている巧者で今回は枠順とコース取りが功を奏した。馬場も苦にしなかった。

キングストレイルは大外枠スタートから中団を進み、直線で外から伸びてきたが3着に頭差の4着。田中勝騎手が最後まで目一杯に追っていればもっと際どかったか。外を回ってメンバー2位の35.8秒で上がっただけに内枠からもう少しロスのない競馬ができればといったところ。パドックでは馬体の張り、気配が目立ち、ひと叩きされてさらに調子を上げていた。この内容なら次走楽しみだが、中山向きの馬であることは考慮したい。

クーヴェルチュールは中団を進んだが、直線で伸び切れず8着。外枠スタートから外を回ったことが応えた印象。パドックでは引き続き気配が良かったし、内枠ならもう少しやれたはずだ。外枠と道悪ではここまでが精一杯だった。本質的には平坦コースの方が合うタイプ。高速決着にも対応できるし、ローカルコースでは特に注意したい。

スズカフェニックスは後方から伸び切れず9着。急仕上げが影響したのか、パドックでは馬体が少し細く映ったし、直線では本来のフットワークではなかった。帰厩が遅れて急ピッチで仕上げたが、G1は甘くはなかった。今後はスワンSからマイルCSに向かう予定。京都外回りは合うが、今回急仕上げで使った反動がないことが条件になる。

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