秋華賞
レース回顧
ダイワスカーレットは2番手を進み、4コーナーで先頭に立つといつものようにラスト3Fを33秒台でまとめてレースを制した。レースは前半3F34.2秒、前半5F59.2秒と速い流れだったが、5、6F目が12.8秒、13.6秒と落ちた。秋華賞は道中のラップが落ちないレースでここまでラップが落ちたのは初めて。逃げたヒシアスペンが緩めたときにアンカツが手綱を引いて減速したが、そこで後続が全く動かずに差が詰まらなかったことが有利に働いた印象。それでも前に行った馬はみな失速しており、その中でラスト3Fを33.9秒(11.3-11.1-11.5秒)でまとめて抜け出したのだから単に展開が恵まれただけではない。能力の高さがあるからこそだろう。前に行って後続を完封するという自分の型を持っているのがいい。近年は世界的に流れが緩んで終い勝負になりやすいが、この戦法(持ち味)こそが、現代競馬で最も有効なのかもしれない。今回もラスト3Fを33秒台でまとめて勝ったため、厳しい流れで上がりの掛かる展開になったときにどうかという懸念は残ったが、このパフォーマンスならあっさりクリアする可能性はある。パドックでは6キロ減で少し腹目は細く映ったが、全体的には丸みがあって気配は良かった。中間の調教が軽かったため、馬体減が気になったが、馬体の丸みを見てその不安は吹っ飛んだ。松田国厩舎の3歳馬は春を目標に仕上げられるが、ダイワスカーレットはオークスを回避したことがプラスに出た感もある。次走はエリザベス女王杯に向かう予定。昨年の牝馬クラシックとエリザベス女王杯は全てハイペースの消耗戦。今年のエリザベス女王杯も消耗戦になれば、真価が問われそうだ。
レインダンスは7番手から徐々に進出し、4コーナーで4番手につけると直線でしぶとく伸びて2着を確保。8枠17番スタートだったが、好位で流れに乗ってラスト33.7秒でまとめて外から伸びてきたウオッカをクビ差で完封した。武幸騎手が流れに乗って完璧な騎乗をして力を出し切った印象。道中流れが緩んでラスト3Fの上がり勝負になったことも良かったのだろう。これで3戦連続で上がり3Fは33秒台。ある程度の位置につけて切れる脚を使えるのは今後も強みになる。パドックでは前走より馬体が増えて少し緩んでいたが、それほど問題はなかったようだ。次走はエリザベス女王杯。4走前に芝2200mの500万条件で強い勝ち方をしたように距離延長は問題ない。調子を維持できれば一発の可能性はある。
ウオッカは後方を進み、3コーナーから大外を回って追い上げたが、最後はレインダンスとの競り合いに敗れて3着。5、6F目にラップが緩んだが、それにも関わらず縦長の展開になったことで後方からの差し追い込み馬は苦しくなった。四位騎手がこの流れでは届かないと気付いて3コーナーから仕掛けて上がって行ったが、ラスト3Fをこの高速ラップで上がられてはどうしょうもない。上がり3Fはメンバー2位の33.2秒。レースのラスト3F目は11.3秒でそこで大外を回って追い上げ、直線で伸びたところに底力を感じさせた。さすがにダービー馬。並の馬とは違う。宝塚記念で折り合いを欠いて惨敗したこと、休み明けということから今回は後方に控える競馬に徹したようだが、その点でダイワスカーレットとは勝負度合いが違っていた。パドックでは春より筋肉の張りは落ちていたが、太め感なく間に合ったという仕上がりで適度に落ち着きがあった。次走はジャパンC、またはエリザベス女王杯に向かう予定。ダービー馬だけにジャパンCに向かうのだろう。今年のメンバーなら狙い目は十分。今年の3歳牝馬ハイレベル。G1最多勝利の記録を作りそうだ。
ベッラレイアは後方2番手を進み、直線で大外に出して追い込んできたが0.5秒差の4着が精一杯。スタートが遅く前でウオッカがフラフラしたため馬群に突っ込んでいくことができず位置取りが悪くなった。4コーナーでは最後方に下がり、直線ではかなり外に持ち出してメンバー最速の32.9秒で上がったが届かなかった。04年の秋華賞を勝ったスイープトウショウの上がりは33.9秒。これを1秒上回る32.9秒で上がって届かないとは、乗り方が悪かったとしかいいようがない。おそらく京都内回りで大外を回ってこの上がりは極限の数字。ウオッカは3、4コーナーで動いたが、武豊騎手は全く動こうとしなかった。勝っては行けない立場だったのか、そう思われてもおかしくない新人以下の騎乗だった。武豊騎手はローズSに続き2度目の騎乗だったが、2度目にさらに上手く乗るということは少ない。パドックではひと叩きされたことで馬体、毛づやが良くなり、気配の良さが目立っていた。いつもより集中力があり、絶好の仕上がり。この脚を使って4着で最も納得できないのは平田調教師だろう。次走はエリザベス女王杯。巻き返しは鞍上次第か。
ラブカーナは4番手からしぶとく伸びて5着。直線で少しごちゃついたが、好位の内で流れに乗ってほぼ力は出し切った印象。オークス3着はダテではなかったという走りを見せた。デビュー当時から使い込まれて既に16戦しているが、タフな馬で今回も馬体、気配をキープできていた。まだ条件馬で1000万条件に出走できる。条件戦に出てくれば牡馬相手でもチャンスだろう。
ハロースピードは後方から内を突いてしぶとく伸びて8着。上位争いには加われなかったが、馬体は12キロ増えてこれまでの最高体重を更新し、パドックでは馬体、気配が一変していた。2歳時から仕上げられてきた馬で最近は結果が出ていないが、この雰囲気ならこれから活躍できそう。まだ人気にならないので、この後数戦は穴で狙ってみたい。
ローブデコルテは中団を進んだが、直線で伸び切れず10着。大外枠から終始外を回り、この早い上がりでは厳しかったが、地力からもう少し走れてもいい馬。パドックでは春より背が伸びて馬体は成長していたが、少しテンションが高かっただけにそのあたりが微妙に影響しているのだろう。海外遠征で肺出血した馬。次走は慎重に見極めたい。
クィーンスプマンテは出遅れて最後方を進み、直線で馬群を突いて12着まで追い上げた。本来は前に行ってしぶとい脚を使う馬だが、出遅れて競馬にならなかった。上がり3Fはメンバー2位の33.2秒でこれはウオッカと同じ。上位争いできなかったが、底力を見せた。次走は自己条件の1000万条件なら勝ち負けになる。重賞戦線に乗って来れそうな馬。
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