菊花賞
レース回顧

アサクサキングスは5番手を進み、4コーナーで2番手に押し上げて逃げたホクトスルタンを交わして先頭に立つと最後は外から迫ったアルナスラインを完封してレースを制した。直線では一杯になってフラフラしていたが、アルナスラインが来るともうひと伸びして抜かせなかった。神戸新聞杯でもドリームジャーニーが外からきたときにひと伸びしたように先頭に立つと少し遊ぶ面があるようだ。ただしレースのラスト3Fは11.6-11.9-12.7秒でラスト1Fが急激に落ちており、それで差し馬に差されなかったのは、位置取り、追い出しのタイミングが嵌ったこともありそう。3着のロックドゥカンブは位置取りが悪く、仕掛けのタイミングも遅れた。今年G1-5戦目というハードなローテーションで並の馬なら調子を維持することは難しいが、神戸新聞杯を使った後も順調に調教をこなしていた。パドックでは雄大な馬体が目立ち、馬体の張りも良く気配は目立っていた。ホワイトマズル産駒はイングランディーレが天皇賞(春)を制しており、これで長丁場で確たる地位を確立した印象。社台の思惑通りか。次走はジャパンCから有馬記念に向かう予定。菊花賞馬アサクサキングス、同4着エーシンダードマン、天皇賞(春)2着のエリモエクスパイアがいる大久保龍厩舎は来年の天皇賞(春)で上位を独占するかもしれない。

アルナスラインは道中アサクサキングスをマークして直後を進み、直線で外から伸びて馬体を併せたが、最後は叩き合いに敗れて頭差の惜しい2着。春のすみれSでメンバー最速の33.9秒で上がってベッラレイアを完封、骨折明けの京都大賞典で初の古馬相手に3着に善戦したことはダテではなかった。過去に京都大賞典で好走したセイウンスカイとテイエムオペラオーは57キロでアルナスラインは54キロだったが、今年のメンバーはそれでも通用するレベルだったようだ。骨折明けでいきなり激走して中1週で調教で攻めての出走。反動が怖いところだったが、それに耐えて結果を出した馬は立派。540キロを超えるステイヤー。脚元が無事であることを祈りたい。パドックでは馬体が枯れて古馬のような雰囲気で気配は上々だった。次走はジャパンCに向かう予定。父アドマイヤベガはダービー馬。崩れない強みを発揮する可能性はある。

ロックドゥカンブは後方の内を進み、直線で内から馬群を捌いて上がってきたが3着止まり。上がり3Fはメンバー最速の35.4秒。いい脚を使っているが、位置取りが後ろ過ぎた。直線で捌くのに苦労して仕掛けが遅れ、馬場の悪い内を突いて3着ならよく走ったとみるべきだろう。好位からの競馬ができていれば、直線で突き抜けていたかもしれない。そう思わせる走りだった。柴山騎手は自分が悪いと認識しているようだが、3000mのレースが初めてだったのだから仕方ない。当初はセントライト記念で藤田騎手が騎乗する予定だったが、札幌競馬場の調整ルームで転倒して負傷したため騎乗見送り。結果的にそこがキーポイントだった。パドックでは馬体が引き締まりきっちり仕上げてきていた。南半球産馬だけにこれから大事に使っていってもらいたいもの。いずれG1制覇のチャンスが来るだろう。

エーシンダードマンは後方2番手を進み、3コーナーから外を回って進出すると最後までしぶとく伸びて4着に入った。まだ1000万条件馬だが、一緒に上がってきたドリームジャーニーを完封したことを評価したい。ステイヤーらしい馬体の作りでパドックでは一瞬この馬にやられたかと思ったほど。前脚の出がスムーズでいい脚を長く使える。長距離適性はかなり高い。勝ったアサクサキングスとは同厩だが、距離適性はむしろこちらの方が高いのではないか。次走はステイヤーズSに向かう予定。ダンスインザダーク産駒で陣営も長丁場なら大きいところを狙えるとみているのだろう。結果を出してオープン入りできれば、来年の天皇賞(春)では面白い存在になりそうだ。

ドリームジャーニーは最後方から追い込んで5着。前走と同じ戦法で大外から上がってきたが、最後は一杯になってエーシンダードマンに競り負けた。最後は距離適性の差が出たのだろう。菊花賞で最後方から捲くりを決めること自体が無理な話。弥生賞では中団からの競馬をしているが、神戸新聞杯で最後方からの追い込みを決めたことでそれに固執したのだろう。今年の重賞で武豊騎手が2戦連続騎乗したときは[3-0-4-18]で連対率12.0%、1、2番人気では[3-0-2-11]で連対率18.8%(3戦以上も含む)。武豊騎手が2戦目で+アルファを見込みたくなるが、実際はこんなもの。武豊騎手は公式HPで「1着でなくてもいい仕事ができた」とコメントしているが、これが本心ならファンは失望する。騎手のトップに立つ人間がこの意識。競馬の人気が薄れるのも分かるような気がする。ドリームジャーニーは休み明けの神戸新聞杯で激走した影響で馬体が減り、上積みはなかった。池江寿厩舎はまだ馬体をフックラ作る技術に甘い面があるようだ。今後は距離に縛られなくなるが、課題がスピードにシフトする可能性がある。

ホクトスルタンはハナを切って3、4コーナーで後続を引き離し直線に向いたが、アサクサキングスにあっさり交わされて6着。前に行った馬はサンツェペリン14着、ヴィクトリー16着、マンハッタンスカイ15着とみな潰れる中、0.6秒差の6着なら悪くない。道中サンツェペリンに少し絡まれて緩急のあるラップになったことが応えたのだろう。それでも3コーナーから動いて直線先頭と見せ場を作ったように天皇賞(春)親子4代制覇の望みは繋いだ。前2走で2段ロケット方式を教えてきただけにもっと攻めても良かったのではないか。今年の横山典騎手はG1で[0-0-0-10]と全く乗れていない。何かがダメなのだろう。後でラップを見て思い切りが足りなかったと思ったのではないか。今後は来年の天皇賞(春)に向けてきっちり賞金を加算し、地力を強化していきたいところ。

ローズプレステージは後方からメンバー3位タイの35.6秒で上がって7着。14番人気と全く人気はなかったが、距離適性の高さを示した。まだ力が付き切っていな現状でこの7着は評価できる。これから地力が強化されれば、京都の長丁場で穴をあけそうだ。要注意。

ヴィクトリーは3番手を進んだが、3、4コーナーで後退し16着に敗れた。道中は岩田騎手が抑えるのに必死でずっと折り合いを欠いていた。大外18番枠が影響したという以前の問題で全く折り合いがつかなかった。さすがにこれでは苦しい。馬体は10キロ増えていたが、太くはなく仕上がりは良かった。今後は中距離路線だろう。

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