天皇賞(秋)
レース回顧
メイショウサムソンは1枠1番スタートから内をロスなく回り、直線で内から抜け出すと後続を一気に引き離して2馬身半差でレースを制した。最もマッチする稍重の馬場、内を通った馬が有利な馬場、さらに4コーナーから直線でコスモバルクが外に出したことで内から楽に捌けたことが有利に働いた印象。逆に外を通った馬は直線でコスモバルクとエイシンデピュティが外に寄れたことで大きな不利。2馬身半差をつけたが、コース取り、直線での不利もある。武豊騎手はコスモバルクが直線で外に寄れることを道中から想定していたのだろう。各馬不利を被る中、一頭だけスムーズな競馬だった。結果的に内を回った1番人気に勝ってくださいというレースになったが、2F目からラスト1Fまで11秒台のラップが続いたようにコース取りが恵まれただけの勝利ではない。スピードの持続力と末脚の威力がないと勝てないレース。自在性と底力も見せた。馬インフルエンザに感染して凱旋門賞を断念し、ぶっつけでここまで仕上げてきた高橋成厩舎に拍手を送りたい。メイショウサムソンは春より落ち着きが出てどっしりとしている。今後はジャパンCから有馬記念に向かう予定。天皇賞春秋連覇を達成したG1-4勝の現役最強馬がどんなレースを見せてくれるか楽しみだ。武豊騎手は天皇賞(秋)4勝目。98年に1枠1番&1番人気で競走を中止したサイレンススズカの無念を晴らした。
アグネスアークは道中7番手を進み、直線に向くと内から寄られて挟まれる大きな不利があったが、最後までしぶとく伸びて2着を確保した。直線では挟まれて減速したが、そこから根性で伸びてきた。骨折で脚にボルトが埋め込まれている馬だが、この勝負根性は高く評価したい。これで2戦連続でダイワメジャーに先着となったが、いずれも11秒台のラップが続いたレース。芝1800〜2000mでダイワメジャーのスピードの持続力を超えたようだ。まだキャリアが浅く、中間は馬体を維持するため軽めの調教。それで大きな不利があって2着というのだから末恐ろしい馬。春から相馬眼的に評価してきた馬。馬体の細化で以前ほど推せなくなったが、返し馬で見せた軽やかでかつ推進力のある走りは父アグネスタキオンを彷彿させた。河内厩舎のアグネスタキオン産駒は今後も要注意。次走はマイルCSに向かう予定。軽めの調教で馬体を維持してきたが、今回激走した反動がないかよくチェックしたい。
カンパニーは内の中団少し後ろを進み、直線で内から捌いて伸び、一旦は2番手に上がったが、最後にアグネスアークに差されて3着。直線で前にいたコスモバルクが内→外→内に寄れたことで立て直す大きなロスがあった。最後は一杯になって末脚が鈍ったが、まともなら2着があったかもしれない。ただしアグネスアークも不利を受けている。休み明け、3着以内がなかった東京でこれだけ走れば上々。関屋記念でG1級のパフォーマンスを見せたことは、やはりダテではなかった。パドックでは久々で少しテンションが高かったが、馬体は2キロ減で太め感なく仕上がっていた。次走はマイルCSに向かう予定。叩き2戦目は[2-1-0-2]で京阪杯と産経大阪杯を勝っている。好枠を引ければ勝つチャンスがありそうだ。
ポップロックは後方からメンバー2位の34.4秒で上がって4着。2コーナーで大外のマツリダゴッホが強引に切れ込んできたことで位置取りが悪くなかったこと、晴れて馬場が乾いて時計が早くなったこと、直線でコスモバルクが寄れたことで各馬が外に膨れ、馬群を捌かざるを得なかったことが応えた印象。最後は一頭だけ違う脚色で伸びてきたが、既に勝負は決していた。1枠1番から内をロスなくスムーズに進めたメイショウサムソンとは対照的な競馬でこの着差が力関係ではないが、距離2000Mではメイショウサムソンの方が走れる幅が広いことも事実。パドックではひと叩きされて馬体がきっちり仕上がり気配が良くなっていた。今後はジャパンCから有馬記念に向かう予定。距離延びてメイショウサムソンにどこまで迫れるか注目したい。
コスモバルクは前半5F59.6秒で逃げて5着。直線で外に大きく寄れて、それに反応したエイシンデピュティが外に寄れたことで、外にいた馬は大きな不利。Jエイシンデピュティは降着で柴山騎手は4日間騎乗停止になったが、五十嵐冬騎手は戒告のみ。エイシンデピュティとは距離が離れていたが、発端になったのはコスモバルクの斜行。もっと重い処分でもいいのではないか。実際、後ろにいたカンパニーは不利を受けている。コスモバルクはダービー、昨年の天皇賞(秋)、ジャパンCでも外に寄れており、五十嵐冬騎手は東京で外に寄れることを知っているが、それで4コーナーから直線で外に出したのはどういうことなのか。福永騎手は五十嵐冬騎手に対し「もうG1で騎乗しないで欲しい」と強烈なコメント。ジャパンCでルメール騎手が騎乗して2着したときは寄れていないことから、直線に向いて馬が体勢を崩したときに激しく追う五十嵐冬騎手の乗り方に問題があるのではないか。五十嵐冬騎手は東京芝[1-2-0-36]で勝率2.6%。06年以降は[0-0-0-12]。一人の騎手が完全にレースをぶち壊してしまった。コスモバルクは馬場、枠順、距離と条件が揃っていたが、力を出し切っていない。
アドマイヤムーンは中団の外を進んだが、直線で伸び切れず6着に敗れた。直線でぶつけられる不利があったが、最後は逆手前で重心が高くなりフワフワしていた。不利を受けた影響があるのは確かだが、最後の脚色を見る限り、久々の影響があったのではないか。内を通った馬が有利な馬場で終始外を回ったことも応えている。40億円でダーレーに売却され、来春から種牡馬入りが決定している馬。厩舎、騎手ともとにかく無事にという思いもあるのだろう。次走は未定。
チョウサンは最後方を進み、直線で内から伸びてきたが8着が精一杯。毎日王冠では松岡騎手が内で脚をタメて直線で末脚を爆発させたが、この日の馬場で最後方からの競馬ではさすがに無理。横山典騎手は前日の武蔵野Sでもフィールドルージュで最後方からの競馬をしている。この乗り方に失望したファンも多かったのではないか。横山典騎手は今年のG1で[0-0-0-11]と不振。今年はWSJSの出場権利も逃した。毎日王冠2着のアグネスアークは2着。まともならもっとやれたはずだ。
ダイワメジャーは外の5、6番手を進み、4コーナーから直線で大きく振られて少し後退し、直線では内からぶつけられる不利があり9着に敗れた。外枠スタートから行き切らなかったため、道中ずっと外を回わされた。前半3F36.1秒と遅かっただけにそこで控えたのが結果的にマイナスだった。2Fからラスト1Fまで11秒台のラップが続いたが、これはダイワメジャーのスピードの持続力のキャパシティを超えた感じもある。次走は未定だが、距離的にマイルCSが濃厚。前半に10秒台のラップが2回続く展開になったときが課題。以前のように腹目がパンと戻っているかどうかも要注目。
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