競馬アナリストGM
ダービー
レース展望

第75回、日本ダービー。2004年のダービーの展望では「NHKマイルCで次元の違うレースをしたキングカメハメハは別格。相馬眼的な裏づけがあるだけに能力は確か」と書いた。2005年は「ディープインパクトは相馬眼的に見ても今年のメンバーでは抜けた存在。過去4戦で見せたパフォーマンスから現時点で現役最強馬の可能性もある。いや世界レベルかもしれない」と書いた。この2頭はともに2分23秒3のダービー最速タイムで圧勝した。2006年は「前2年のレベルの馬はいないが、例年と比べてもメンバーは粒揃いでレベルは低くはない」と書き、有力馬診断1位評価のメイショウサムソンがアドマイヤメインとの接戦を制した。

昨年は「今年の3歳牝馬の一線級はハイレベル。相馬眼的に評価できるウオッカはアドマイヤオーラ、フサイチホウオーより能力の絶対値が高い可能性がある」と書いたが、ウオッカが3馬身差で圧勝し、1943年クリフジ以来64年ぶりに牝馬によるダービー制覇を達成した。04年から有力馬診断1位評価は[8]キングカメハメハ、[8]ディープインパクト、[7]メイショウサムソン、[7+]ウオッカはいずれもダービーを制している。そして今年のダービー。いきなり核心部分から入るが、相馬眼的に抜けた馬が1頭いる。その馬とはショウナンアルバ。ただし折り合いに不安があるため、例年より高リスク。ダービーを制したら、欧州G1を狙って欲しい。

過去10年で1番人気は[7-2-0-1]で9連対。昨年7着に敗れたフサイチホウオー以外は連対している。2番人気は[1-1-0-8]で2連対、3番人気は[2-3-2-3]で5連対。連対馬20頭のうち18頭が5番人気以内で馬連は10倍以下が6回と堅く収まることが多い。過去10年では連対全馬に重賞勝ちがあった。ハイレベルな戦いで重賞未勝利馬では厳しいが、今年のメンバーに当て嵌まるかどうかは微妙なところ。03〜06年の連対馬は全て前走重賞勝ち馬だったが、昨年は桜花賞2着のウオッカとNHKマイルC11着のアサクサキングスが巻き返した。前走に敗因があり、東京コース適性のある馬なら巻き返せる。

ディープスカイは毎日杯を大阪城S(古馬OP)を0.1秒上回る好タイムで勝ち、NHKマイルCは後方からメンバー最速の33.9秒で内から突き抜けた。毎日杯2着のアドマイヤコマンドは青葉賞を制している。NHKマイルCは昆調教師が昨年のローレルゲレイロの教訓を生かして皐月賞を使わずに毎日杯の後はNHKマイルC一本に絞った。G1は狙って獲るもの。まさに狙い通りだった。今回は中2週。1週前調教は馬場整備直後だったが、栗坂で51.2秒の好タイムを出した。昨年10月デビューから休みなく使われて今回が11戦目。末脚は切れるが、距離克服と道中の位置取りが鍵。四位騎手はどこまで攻められるか。

アドマイヤコマンドはキャリア1戦で臨んだ毎日杯2着。直線でごちゃついたが、しぶとく伸びて2着を確保した。青葉賞はスローペースで終始内ラチ沿いをロスなく回り、直線でスパッと抜け出して快勝。最後はまだ余裕があった。青葉賞を勝ってダービーで2着したシンボリクリスエス、ゼンノロブロイよりもレースのレベルは低いが、キャリア2戦目で重賞で連対し、3戦目で重賞制覇というのは稀。まだ底を見せていない魅力はある。ただし青葉賞では馬体が12キロ減っていた。橋田調教師はダービーに出走できなければ意味がないため、リスクを承知でそういう仕上げをしたのだろう。これが本番でどう出るか。

マイネルチャールズは1番人気に支持された皐月賞3着。弥生賞では2番手から抜け出したが、皐月賞はスローペースにも関わらず先行できなかった。松岡騎手が1番人気の重圧に負けたのか。これには外隣の武豊騎手が関係している。武豊騎手は1番人気に簡単には勝たせない。今年のG1で松岡騎手と武豊騎手は4戦しているが、JRAのコンピューターが枠順を決める3レースは全て武豊騎手が外隣。今回はその呪縛から解き放たれた。マイネルチャールズは中山芝2000mが得意だが、末脚に持続力があり東京コースもこなす。ラフィアンの岡田氏はダービーで[0-1-0-20]。当日マークする馬を間違えなければ。

ブラックシェルは皐月賞では弥生賞4、3、1着馬が馬券に絡む中、仕掛けのタイミングが遅れて6着に敗れた。NHKマイルCは中団の内から抜け出したが、ディープスカイに差されて0.3秒差の2着。稍重だったが、広い東京コースで走りが一変した。中1週[1-0-0-0]、中2週[1-3-0-0]、中5週[0-0-0-2]で間隔を詰めたときは連対率100%。間隔を空けるとパドックと返し馬でテンションが上がる傾向がある。今回は中2週。ローテーションは厳しいが、松田国調教師は最後まで攻めている。重賞未勝利、マイネルチャールズに3戦3敗は気になるが、母の父はダービー馬ウイニングチケット。この距離で地力発揮の可能性はある。

レインボーペガサスは皐月賞で後方からメンバー最速の34.3秒で追い込んで4着。前が壁になって追い出しが遅れたが、最後は鋭く伸びてきた。イレ込むタイプだったが、皐月賞では落ち着いて周回。精神面が成長したか。母ギャンブルローズから距離が課題になるが、アンカツがどう持たせて末脚の切れ味を引き出すか。サクセスブロッケンはダートで無傷の4連勝。同じように端午Sを圧勝したゴールドアリュールはダービーで5着に善戦したが、芝[1-1-1-3](全て5着以内)の実績があった。ダービーが初芝というのは厳しいが、おそらく能力の絶対値はトップレベル。あとは体質&脚元が弱い自分との戦いか。

タケミカヅチは皐月賞2着。1枠1番スタートから内で脚をタメ、直線で内から捌いて激しい2着争いを制した。2着を狙ったような乗り方が嵌った感もあるが、弥生賞で皐月賞を意識した競馬をしたことが生きたか。重賞2着が3回あるが、未だ1勝馬。左回りは内にモタれるが、共同通信杯では内ラチ沿いから伸びてきた。その点で内枠はプラス。クリスタルウイングは青葉賞は2着。勝ったアドマイヤコマンドとは通ったコースの差があるが、瞬発力の差も感じられた。持ち時計がなく高速決着に課題があるだけにそこをクリアできれば。日米G1制覇を狙う藤沢和厩舎。3歳馬では唯一、凱旋門賞に登録している。

ショウナンアルバは未勝利勝ち後に休養に入り、若竹賞では馬体が成長して20キロ増えていた。若竹賞では逃げてアサクサダンディ(NZT3着)、スマイルジャック(きさらぎ賞2着、スプリングS1着)、サトノプログレス(NZT1着)を完封。共同通信杯では道中折り合いを欠いて頭を上げたが、直線で早め先頭からタケミカヅチ(皐月賞2着)を完封した。タケミカヅチとは半馬身差だったが、通ったコースは大外と最内で全く違う。スプリングSはトライアルに徹して3着。皐月賞は3番人気に支持されたが、後方から早めに捲くって直線で失速し14着に終わった。1986年以降、前走皐月賞で2桁着順に敗れた馬はダービーで[1-0-0-26]。

唯一巻き返したのは、1986年のダイナガリバーで共同通信杯の勝ち馬だった。共同通信杯では先行抜け出しを決めたが、皐月賞ではショウナンアルバと同じように外枠スタートから早めに捲くって直線で失速し10着。ダービーでは本来の先行策で早めに抜け出して後続を完封した。ちなみに2着グランパズドリームはラフィアンの岡田氏の馬。皐月賞惨敗から巻き返すのは至難の業だが、ショウナンアルバにはスピード、持続力、底力がある。英国の歴史的名馬ブリガディアジェラードのクロスを意識して生産されたショウナンアルバは相馬眼的にひと味違う。折り合いが鍵だが、蛯名騎手との信頼関係は築かれている。

プリンシパルS2着のアグネススターチの出走によってレースが底力勝負の消耗戦にシフトする可能性が出てきた。ショウアンアルバが勝った共同通信杯はショウナンアクロスが大逃げして前半5F58.5秒のハイペースだった。昨年は四位騎手がドリームパスポート3着を糧にウオッカでダービーを制したが、蛯名騎手はハイアーゲームで3着、二ノ宮調教師はダイワスペリアーで3着がある。蛯名騎手&二ノ宮調教師はエルコンドルパサーでジャパンCを制したコンビ。ショウナンアルバの父ウォーエンブレムは好みの牝馬にしか興味を示さず、ここ2年は産駒なし。ウォーエンブレム産駒がダービーを勝てば、社台は後継種牡馬として迎えるはず。究極の裏技がある。

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