競馬アナリストGM
ヴィクトリアM
レース展望
06年に新設された古馬牝馬限定G1。06年は2-3-4番人気、07年は12-9-8番人気、昨年は5-1-4番人気で決着。5番人気以内で堅いか、人気薄同士で大荒れという極端な結果が出ている。1番人気はラインクラフト9着、カワカミプリンセス10着、ウオッカ2着。ラインクラフトはフケの兆候が見られ、カワカミプリンセスは出遅れ&直線で前が詰まる不利があり、ウオッカはドバイ遠征後で馬体がガレていた。1〜3着馬9頭のうち6頭に東京芝G1で3着以内があり、残る3頭のうち2頭には重賞またはオープン特別勝ちがあった。年齢別では4歳[2-3-1-22]、5歳[1-0-2-10]、6歳[0-0-0-9]、7歳以上[0-0-0-4]で6歳以上は不振傾向。
今年のメンバーで東京芝G1で3着以内がある馬は、ウオッカ(ダービー、安田記念、天皇賞(秋)、ヴィクトリアM2着、ジャパンC3着)、カワカミプリンセス(オークス)、ジョリーダンス(安田記念3着)、レジネッタ(オークス3着)の4頭。この4頭を除き、東京の芝重賞またはオープン特別勝ちがある馬はリトルアマポーラ(クイーンC)、レッドアゲート(フローラS)、ヤマニンエマイユ(オーロC)の3頭。ちなみにデータを破ったのは東京が初めてだった昨年の勝ち馬エイジアンウインズ。1600万条件、阪神牝馬Sを連勝してきた上がり馬だった。コイウタが勝った07年、先週のNHKマイルCなど、高速馬場で行われる東京芝1600mは展開的な紛れが生じることがあるので注意したい。
ウオッカは安田記念と天皇賞(秋)を制した昨年の年度代表馬。天皇賞(秋)のダイワスカーレットとの接戦は歴史の残る好レースだった。G1-4勝の実績はこのメンバーでは断然で負けられない立場。芝1800m以上は[2-2-2-4]に対し、芝1600mは[5-2-0-0]で連対率100%。ダービーを勝ったように距離はこなすが、本質はマイラー。芝1600mでは7戦のうち6戦が上がり3Fメンバー最速で確実に切れる脚を使える。昨年のヴィクトリアMは中団の後ろからメンバー最速の33.2秒で鋭く伸びたが、エイジアンウインズに3/4馬身差の2着。ドバイ遠征明けで馬体がガレていた影響もあるが、スローの上がり勝負で控え過ぎた感もある。
続く安田記念は岩田騎手が騎乗し3番手から抜け出して3馬身半差で楽勝した。ヴィクトリアMで武豊騎手はなぜ控えて直線で追い出しを我慢したのか。今年も昨年と同じステップで臨んできたが、昨年のドバイデューティーフリーは直線でしぶとく伸びて4着に入ったのに対し、今年は2番手から直線で失速して9着に終わった。逃げた馬が圧勝したことを考えるとかなり物足りない内容。武豊騎手は「2番手につけられてマイペースで運べたと思います。直線に向いて手ごたえも良かったですが、伸びを欠いてしまいました。ちょっとどうしたのかという感じでした」とコメントしている。
角居調教師は「騎手は良いポジションでパーフェクトな騎乗でした。予定通りの形でした。上がってきたウオッカを見ましたが、彼女は走り切った感じでした。全力を出しています。今後の馬作りを根本から考えさせられるレースでした」とコメント。角居調教師の「今後の馬作りを根本から考えさせられるレース」の真意は何なのか。ドバイに滞在しジュベルハッタを使い、レース当日の仕上がりは良さそうだったが、直線では全く反応しなかった。ウオッカは阪神JFの勝ち馬で2歳時から使われてドバイデューティーフリーが20戦目。昨年の天皇賞(秋)のダイワスカーレットとの激走で燃え尽きてしまったのだろうか。
牝馬はレースで楽を覚えるとその後走らなくなることが多い。2走前のジュベルハッタで直線で前が詰まって5着に敗れたレースがきっかけになったのか。ただし角居調教師は「全力を出している」とコメントしている。最終調教は馬なりのままラスト11秒台で鋭く伸びて楽々と先着。馬体はフックラしており、動き、気配とも上々だった。調教後の馬体重は502キロ。昨年のジャパンCの調教後の馬体重は498キロ。昨年のように馬体がガレることはなさそう。最強レベルの牝馬。大川慶次郎氏ならオグリキャップのときにように「本命以外の印を打つことは馬に失礼」と言って無印にするのかもしれない。
カワカミプリンセスはエリザベス女王杯降着以降[0-2-2-4]で未勝利。陣営は復活させるために必死になっている。冬場は冬毛が伸びて見栄えが悪かったが、前走の大阪杯では冬毛が抜けて馬体が良化していた。近走は好位からの競馬をしていたが、大阪杯では横山典騎手が終い勝負に徹して切れ味を引き出した。上がり3Fはメンバー最速の33.8秒。切れる脚を使えたことは早い上がりが問われるヴィクトリアMに繋がりそう。最終調教では何度も尾をフワリフワリと振っていた。フケ(発情)の兆候でないことを祈りたい。06年の1番人気ラインクラフトはフケの影響で本来の走りができず9着に終わった。
リトルアマポーラはエリザベス女王杯で好位から抜け出してカワカミプリンセスとベッラレイアを完封しG1初制覇。能力の高さを見せつけた。マイラーズCは7着に終わったが、テン乗りの福永騎手が試し乗りに徹したもの。東京芝1600mではクイーンC勝ちがあるが、今の高速馬場に対応できるかどうかが鍵になる。対ウオッカを考えると雨で馬場が渋った方がいいかもしれない。阪神牝馬Sを勝った8歳馬ジョリーダンス、同2着のザレマ、同5着のレジネッタあたりが人気面で続きそう。ジョリーダンスは引退を撤回しての参戦。安田記念3着があるように流れがマッチすると強い競馬をする馬。レジネッタは前走休み明けで57キロだった。
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