ジャパンC
レース回顧

ウオッカは好位を進み、直線に向きメンバー3位の34.8秒で抜け出すと最後は外から強襲したオウケンブルースリの追撃をハナ差退けてレースを制した。リーチザクラウンが途中からハナを切って前半5F59.0秒、10F通過が1分58秒7のハイペース。道中最も遅いラップが12.2秒という速い流れで底力の問われるレースになった。道中10番手以降を進んだ馬が2〜5着を占めたことを考えるとウオッカはかなり強い競馬をしている。向こう正面から3コーナーで掛かりそうになったが、さすがにルメール騎手。折り合いを欠かずに上手くタメを作ることができた。今回はパドックでも返し馬でもこれまでにない落ち着きがあった。5歳になっても馬はまだ進化している。今回は前半5F59.0秒、後半5F59.1秒だったが、昨年の天皇賞(秋)は前半5F58.7秒、後半5F58.5秒。昨年の天皇賞(秋)で激戦を制したからこそ、今回の勝利があるのだろう。この勝利でG1−7勝となり、シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクトに並んだ。日本の牝馬がジャパンCを制したのは初めて。まさに歴史に残る名馬になった。レース中に鼻出血があったため、有馬記念には出走できず、今後はドバイワールドCを最後に引退する予定。ドバイでは4、5、7着に終わっているが、今のウオッカならいい競馬ができるのではないか。ラストランVを期待したい。

オウケンブルースリは後方を進み、直線で大外からメンバー最速の34.1秒で追い込んでウオッカにハナ差の惜しい2着。最後は凄い勢いで伸びてきたが、あと一歩届かなかった。4コーナーでコスモバルクに内から強引に来られて外に弾き飛ばされたロスが響いた印象。コスモバルクは4コーナーで外に膨れることが多いだけに内田博騎手がそこを意識して乗っていれば、差し切っていたかもしれない。当日は外からの追い込みが決まっており、差し追い込み馬向きの展開が味方したのは事実だが、あの威力のある末脚は並みの馬には使えない。パドックでは叩き3戦目で馬体の張りが良くなり、さらにデキは上向いていた。父ジャングルポケットはジャパンCで最後にひと伸びしてテイエムオペラオーを差し切ったが、オウケンブルースリも最後にひと伸びしてウオッカに迫った。東京芝2400mは合うので来年のジャパンCでは再度狙いたい。相馬眼的に評価できる馬でまだ良くなる余地はある。更なる進化を期待したい。

レッドディザイアは内ラチ沿いの中団を進み、直線で馬群を捌いてメンバー3位の34.7秒で伸びてきたが、0.2秒差の3着。スタートで少し遅れて位置取りが後ろになったこと、直線で捌くのに苦労したことで届かなかったが、力が通用することを示した。3歳牝馬がブリーダーズCの勝ち馬コンデュイットを差し切ってきたのだから褒めて上げたい。もう少しスムーズな競馬ができていれば、勝ち負けに加われたのではないか。騎乗した四位騎手、管理する松永幹調教師はこの結果に納得していないはずだ。パドックでは秋華賞が完璧な仕上がりだっただけに少し気配は落ちていたが、前向きさ&活気があり、一気のデキ落ちはなかった。今回が初めての古馬一線級とのレースになったが、今後に向けて十分目処は立った。今年の3歳牝馬は高レベル。ブエナビスタとともに来年の古馬戦線を引っ張って行く存在になりそうだ。

コンデュイットは出遅れてすぐに内に進路を取り、後方の内から徐々に進出して直線で馬群を捌いてきたが、最後は前と脚色が同じになり4着。外枠からスタート後に内に進路を取る作戦は、05年にジャパンCを制したアルカセット(デットーリ騎手)と同じ。内から上手く捌いてきたが、最後に伸び切れなかったのは、時計が早過ぎたこともあるのだろう。パドックでは脚捌きが少し硬く映っただけに連戦の疲れもあったか。今後はビッグレッドファームで種牡馬入りする予定。母系にフサイチコンコルド、アンライバルドの母バレークイーンに繋がる血が流れており、日本で成功しそうな血統的な裏づけはあるが、馬体の造りからは少し微妙な感もある。初年度にいい牝馬を集められるかが日本で成功する鍵になりそうだ。

エアシェイディは内枠スタートから後方の内を進み、直線で行き場がなくコンデュイットの後ろから上がってきたが5着止まり。直線でスペースを探すのに手間取って追い出しが遅れ、少し脚を余した。内を狙ったので仕方ない面もあるが、もう少しスムーズなら馬券圏内があったかもしれない。寒くなると調子を上げるタイプで今年も使いながら少しずつ上向いている。初めて芝2400mを使ったが、今はむしろこれくらいの距離が合うのではないか。昨年の有馬記念は10番人気で3着に入り穴をあけた。12〜1月の中山芝では[2−3−1−0]デ複勝率100%。次走の有馬記念でもこの時期に崩れない強みを発揮するかもしれない。

マイネルキッツは最後方から追い込んで8着。スタート後の行きっぷりが悪く、位置取りが後ろになったことが応えた印象。4コーナーでオウケンブルースリと同じ位置にいたが、元々それほど切れる脚を使えるタイプではないため伸び負け。それでも最後までしぶとく伸びており内容は悪くない。ひと叩きされたことで最終調教では前向きさが出て少し気配が良くなっていた。使いながら調子を上げるタイプだけに次走の有馬記念ではさらに調子が上向いてきそうだ。天皇賞(春)の勝ち馬でスタミナ&地力はある。トリッキーな中山で立ち回りが鍵になる。

リーチザクラウンは途中からハナを切ってハイペースで飛ばし、直線で一杯になって9着。さすがにこのペースで飛ばしては苦しい。ただし今回は武豊騎手が敢えてラップを落とさずに厳しい流れを作った感もある。緩い流れで前残りになったエリザベス女王杯、マイルCSの結果を見て、こんな競馬ばかりではいけないと武豊騎手なりに行動で示したのではないか。不良馬場のダービーで激走した馬は調子を崩した馬が多いが、リーチザクランはむしろ使いながら調子が上がっている。時期的にサバイバル戦になる有馬記念ではこのタフさを生かせるかもしれない。

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