競馬アナリストGM
日本ダービー
レース回顧

エイシンフラッシュは1枠1番スタートから内の中団を進み、4コーナーから直線で少し外に出して追い出すと鋭く伸びて先に抜け出したローズキングダムを差し切りレースを制した。前半5F61.6秒のスローペースでレースのラスト3Fは33.4秒と早かったが、メンバー最速の32.7秒の末脚で一気に差し切った。この日、最も伸びる4分どころを確保した内田博騎手の好騎乗。馬場の悪い内を突いて伸びあぐねたヴィクトワールピサの岩田騎手とは対照的な騎乗だった。バネの利いたフットワークで大きなストライドで走る馬。トップスピードの持続力が他馬とは違っていた。スローの上がり勝負でレースのレベルは高くないが、ラスト3F11.3−10.8−11.3秒は究極のタイム。良発表でも緩い馬場で32秒台で上がって連対した2頭は相当な能力がある。平均程度の流れならヴィクトワールピサ、ペルーサともっと際どいレースになったかもしれないが、エイシンフラッシュは現時点で精神面、折り合い、操縦性などの総合力で2頭を上回っていた。最終調教で見せた走る馬独特のフットワーク。あのフットワークは覚えておいて損はない。パドックではひと叩きされたことで馬体に実が入り、かなりデキが上向いていた。落ち着きあり、全く力まないところが好印象。このあたりはブエナビスタに通じるものがある。内田博騎手、藤原英厩舎ともダービー初制覇。内田博騎手は昨年リーディングを獲り、今年はダービー制覇。JRA騎手になって立てた2つの目標を達成した。エイシンフラッシュは休養して秋に備える予定。凱旋門賞に登録しているため、動向に注目が集まりそうだ。有力馬診断に「エリカ賞のパドックでは走る馬独特のギラギラとした雰囲気があった。京成杯のキングカメハメハ、きさらぎ賞のスマイルジャックなど、ギラギラとした雰囲気を見せた馬は経験則でダービーで激走することが多い」と書いたが、やはりダービーで激走した。サラブレットが見せる究極のバランスと雰囲気。今後も相馬眼を鋭く磨いていきたい。

ローズキングダムは中団を進み、直線で外からメンバー2位の32.9秒で抜け出したが、最後にエイシンフラッシュに差されて惜しい2着。後藤騎手がタイミング良く抜け出したが、エイシンフラッシュの末脚の威力が一枚上だった。馬格の差、ストライドの大きさの差が出たのだろう。週中に挫石があって出走が危ぶまれ、テン乗りの後藤騎手に乗り替わったことを考えるとよく走っている。デビューから馬体が減り続いていたが、今回は馬体が2キロ増えて皐月賞より馬体に丸みがあった。落ち着きがあり、無駄な仕草をしない馬。エイシンフラッシュと同様に精神面を含め、現時点の完成度が高い。単なる偶然かもしれないが、最近の重賞は中間にアクシデントがあって実力より人気が落ちた馬が激走することが多い。アクシデントが起きたら、すぐに割り引きと考えるのではなく、自分の眼で調教の動き、気配などを見て判断する必要がある。橋口調教師はダービーで4度目の2着。来年はハーツクライ産駒でダービーを目指すようだ。ローズキングダムは休養して秋は神戸新聞杯から菊花賞を目指す予定。まずは馬体がどこまで成長するか注目したい。今年の3歳牡馬はレベルの高い馬が揃っている。近年は牝馬上位の時代が続いているが、3歳牡馬がその流れを断ち切ることになりそうだ。

ヴィクトワールピサは内ラチ沿いの好位を進み、直線で内の狭いところを割ってきたが、そこから伸び切れず3着に終わった。向こう正面でラップが13.5−13.1−12.9秒に落ちたときに折り合いを欠き、直線で内の狭いところを割るのに手間取り、かつ馬場の悪い内を突いたことで伸び切れなかった。岩田騎手は皐月賞で狭い内を突いて一瞬のうちに抜け出した勝ったこともあり、内からでも抜け出せると考えたのだろう。この日は馬場の4分どころを通った馬が伸びており、内に拘ったことがアダになった。パドックでは馬体が引き締まって全体的なバランスが良くなり、仕上がりの良さはひと際目立っていた。さすがに角居厩舎。ここというときの仕上げは凄いものがある。2冠制覇はならなかったが、連対した2頭に力負けした訳ではない。レースを使いながら着実に仕上がってきているが、欲を言えばエイシンフラッシュのようなバネと勢いが欲しい。現時点ではエイシンフラッシュの方がトップスピードの持続力は上。角居調教師がこのあたりをどう考えて対処してくるか注目したい。相馬眼的に評価できる馬。今後の活躍を期待したい。

ゲシュタルトは好位からしぶとく伸びて4着。ヴィクトワールピサとの競り合いにクビ差負けたが、最後までしぶとく食い下がっていた。地力タイプでスローの上がり勝負は得意ではないが、33.4秒でまとめて4着に粘ったことは評価できる。まだフワフワする面があり完成度は高くないが、一戦ごとに馬体の造りが目立つようになってきている。平均ペースでバテないタイプ。秋に向けて心身ともに成長すれば面白い存在になる。

ルーラーシップは中団から33.3秒で上がって5着。直線でスムーズさを欠いて伸び切れずもがいていたが、ラスト100mから鋭く伸びてきた。もう少しスムーズなら馬券圏内があったかもしれない。まだ馬体の完成度が高くない状態でこれだけ走れれば上々。角居調教師はヴィクトワールピサと素質は見劣らないとコメント。これから秋に向けて馬体に実が入って本格化すれば、一気にパフォーマンスをアップする可能性がある。

ペルーサは出遅れて後方2番手を進み、3、4コーナーで上がって中団まで押し上げたが、直線で伸び切れず6着に終わった。ラスト5Fから動いて3、4コーナーで大外をブン回し、それでメンバー5位タイの33.3秒で上がったのだから大したもの。出遅れが響いたが、能力は示した。前走の青葉賞の方が馬体、気配とも良かっただけに青葉賞で走り過ぎた反動があったのではないか。東京芝2400mを短期間で2回勝つことは相当難しいということなのだろう。ペルーサのレベルでダービーを勝てないと今後も青葉賞とダービーを勝つ馬は簡単には現れそうにない。力負けではないため、秋に仕切り直し。父のゼンノロブロイにどこまで近づけるのか。藤沢和調教師がどのレースを選択してどう仕上げてくるか注目したい。

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