日本ダービー
レース回顧
ワンアンドオンリーは1枠から横山典騎手が押して内ラチ沿いの5番手につけ、直線で先に抜け出したイスラボニータをメンバー2位の34.0秒で差し切ってレースを制した。イスラボニータが前にいていい目標になり、直線でスムーズに捌いてきた。エキマエが大逃げして前半5F59.6秒。2番手以下は実質スローの上がり勝負。内&前が有利な馬場&展開である程度前につけてロスなく回ってきた3頭で決着した。ワンアンドオンリーは近走追い込むレースをしていたが、横山典騎手がスタートを決めて押して内ラチ沿いの好位につけたことが大きかった。皐月賞では1枠から最後方に下げて大外をブン回し4着に終わったが、この日のレース傾向とスローペース想定で前につけないと勝負にならないとみて押して好位につけたようだ。以前から指摘しているようにワンアンドオンリーは馬込みを苦にしない。そのあたりと横山典騎手の好判断が上手く噛み合っての勝利。イスラボニータとの3/4馬身差は枠順の内外の差があり、ワンアンドオンリーが抜けて強い訳ではない。パドックでは輸送をクリアして馬体4キロ増で全体的に張りが良くなり、かつ後肢の踏み込みが深く力強くなっていた。橋口調教師渾身の仕上げ。馬、騎手、調教師、厩舎が一丸となり、ダービーを掴み取った。橋口調教師はダービーで2着が4回あり、20回目の挑戦、それも自身が管理したハーツクライの産駒でようやくダービーを制した。新馬戦を10番人気で12着に惨敗した馬がダービー馬になった。昨年の暮れに坂路の動きが一変して本格化。ハーツクライ産駒の成長力は恐ろしい。安田記念はジャスタウェイ、宝塚記念はウインバリアシオンが控えている。ワンアンドオンリーは休養して秋は神戸新聞杯から菊花賞に向かう予定。来年は父ハーツクライが3着に終わったキングジョージ(英G1、芝2400m)に挑戦プランがあるようだ。現時点でまだ世界レベルには到達していない。秋に馬体が成長して大きくパフォーマンスアップすることを期待したい。
イスラボニータは7枠から3番手につけ、直線で追い出しを待つ余裕があったが、最後はワンアンドオンリーとの叩き合いに負けて0.1秒差の2着。上がりはメンバー6位の34.3秒。内&前が有利な馬場のため、外枠から3番手につけたが、結果的にいい目標になった。ワンアンドオンリーがいつものように控えて終い勝負に徹していれば、イスラボニータが勝っていた。横山典騎手の馬場、展開、枠順を味方につけた好騎乗に2冠を阻まれた形。イスラボニータは外枠から勢いをつけて前に行ったため、前半掛かり気味だった。内枠ならもう少しタメて直線で切れ味を生かせるレースができたはず。ワンアンドオンリーとは枠順の内外の差が大きかった。パドックでは馬体の張りが良く、いつも通り柔らかな歩様でいかにも調子が良さそうだった。スローペースでも距離をこなしたことは今後に繋がるが、菊花賞は距離3000mと長いため、秋は毎日王冠から天皇賞(秋)を目指すことになりそう。これまで[5−2−0−0]で連対を外していないが、秋の古馬との対戦で真価が問われる。栗田調教師は1986年にグランパズドリームに続きダービー2着。定年まであと5年。蛯名騎手とともに再チャレンジを期待したい。
マイネルフロストは2枠スタートから内ラチ沿いの7番手につけ、直線で最内からメンバー4位の34.2秒で伸びて0.3秒差の3着。4コーナーで内から進出して前との差を詰め、直線でしぶとく伸びてきた。内枠から内に拘った騎乗で松岡騎手が持ち味のしぶとさを引き出した。前走青葉賞は3番手から伸び切れず6着に終わったが、ゴールした後にすぐに先頭に立っていた。追い出しが遅れて脚を余したもので、あれが能力でないことが証明された。今回は早めに追い出して全力を出し切った。前&内が有利な馬場&展開で内枠からロスなく回ってきたことがかなりプラスに働いている。新馬、コスモス賞を連勝した後、5、7、4着と善戦止まりが続いたが、共同通信杯の前に調教の動きが一変した。ワンアンドオンリーはラジオNIKKEI杯2歳Sの前、イスラボニータは皐月賞の前に調教の動きが一変している。ダービーで勝ち負けするには、調教の動きが一変するくらいの成長力が必要ということなのだろう。競走馬は本格化するとシグナルを出す。来年のダービーに繋げていきたい。
トゥザワールドはスタートを決めたが中団の後ろに控え、勝負どころで外を回って押し上げ、メンバー3位の34.1秒で上がったが、前に追いつくところまで行かず0.4秒差の5着。内&前が有利な馬場&展開で内枠を生かせずに外から差すレースになったことが堪えた。勝ったワンアンドオンリーの横山典騎手はスタート後に押して好位につけたが、トゥザワールドの川田騎手は何もアクションを起こさず、外から前に入られて位置取りが悪くなった。川田騎手は馬が進んで行かなかったとコメントしている。馬場&展開の読みの甘さを馬のせいにしてはいけない。直線でガツンと追うことに関しては上位レベルでもまだ総合的にダービーを勝つレベルには到達していないのではないか。ダービーを勝った騎手はその前に2、3着に入って悔しい思いをし、さらに腕を上げてダービーに臨んできている。馬場&展開を読んで前に行った横山典、蛯名騎手との差がモロに出た。直線で最後に伸び切れなかったのは、皐月賞狙いで仕上げた影響もあるのだろう。競馬では追える騎手が評価されやすいが、スタートを決めていかに好位置につけられるかも非常に重要。そこに視点をおいてレースを見続けると馬質で勝っている騎手と技術で勝っている騎手が分かってくるはずだ。
ショウナンラグーンは後方からメンバー最速の33.9秒で伸びて0.5秒差の6着。大外から切れる脚を使ったが、内&前が有利な馬場、スローの上がり勝負で届かなかった。青葉賞をメンバー最速の33.8秒で大外から差し切って2分26秒5で勝ったが、今回はメンバー最速の33.9秒で上がって2分25秒1で走った。走破タイムを1.4秒詰めたが、上がりは0.1秒遅いだけ。大久保洋調教師が渾身の仕上げで青葉賞よりパフォーマンスを引き上げたが、馬場&展開が向かなかった。パドックでは馬体のバランスが良くなっていたが、まだ成長する余地を多分に残している。母の父は菊花賞馬マンハッタンカフェ。祖母はG1−5勝の名牝メジロドーベル。菊花賞に向けて更なる成長を期待したい。大久保洋調教師と吉田豊騎手が握手をするシーンを心待ちにしているファンは多い。
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