有馬記念
レース回顧

ゴールドアクターは好スタートから内ラチ沿いの3番手につけ、4コーナーから直線で少し外に持ち出してメンバー4位タイの34.8秒で抜け出し、最後はサウンドオブアースの追撃をクビ差振り切ってレースを制した。キタサンブラックが逃げて前半5F62.5秒のスローペースになり、4着まで前につけた馬が独占。ゴールドシップが最後方から捲って先団に取りつくタイミングが遅くなったことで前にプレッシャーを掛けられず、それも前残りに拍車をかけた。ゴールドアクターは好スタートから内ラチ沿いの好位をロスなく回り、直線で抜け出す正攻法のレースで優勝。スローペースで内をロスなく回って前に行った馬に有利な展開、中間に雨が降ったことで時計、上がりの掛かる馬場になったことがプラスに働いている。これで1000万条件から4連勝でG1初制覇。父スクリーンヒーローと同様にAR共和国杯を制した直後にG1を制した。これまで芝2000m以上で7勝を挙げているが、前半5Fは61.3〜66.0秒で全てスローペースだった。スローペースで先行して高速ラップでまとめて粘り込むのが勝ちパターン。最も力を出せる理想的な展開になったこともあるが、ここにきて馬体がボリュームアップして充実してきたように本格化してきているのだろう。最近の長距離戦は流れが速くなりにくいが、流れが速くなったときに真価が問われそうだ。今後は天皇賞(春)を目標に日経賞あたりで復帰することになりそう。吉田隼騎手は11月29日に他馬に蹴られて右ひざの剥離骨折をしたが、ゴールドアクターの有馬記念出走に合わせて復帰。陣営に「負けたら負けたら降ろされてもいい」と言って騎乗した模様。ゴールドアクターは吉田隼騎手で[6−0−1−0]。人馬との確かな絆。来年もこのコンビに注目していきたい。

サウンズオブアースは好位からメンバー2位タイの34.7秒で伸びてクビ差の2着。4コーナーで下がってきたリアファルの煽りを受けてそこで前との差が広がったことが堪えている。それでもMデムーロ騎手が追うとしぶとく伸びてクビ差まで追い上げた。パンパンの良馬場、高速馬場が合うタイプで荒れ馬場は得意ではないが、中山最終週の馬場をこなしてパフォーマンスを引き上げた。Mデムーロ騎手が騎乗すると15%増しくらいで考えた方がいいのかもしれない。いまだに重賞は未勝利でこれで5回目の2着。勝ち切れないが、G1、G2を使われながら少しずつ地力が強化されている。菊花賞、京都大賞典、京都新聞杯で2着がある京都外回り巧者。来年の天皇賞(春)に向けてまずはひとつ重賞勝ちが欲しい。

キタサンブラックは前半5F62.5秒のスローペースで逃げ、ラスト5Fを59.0秒でまとめて0.1秒差の3着。ハナを切って内ラチ沿いをロスなく進み、ラスト5Fからペースアップして粘り込んだ。ハイペースになったダービーは惨敗したが、スローペースなら高速ラップでまとめられる。これで中山では[2−0−2−0]で3着以内を確保。切れより地力タイプで時計、上がりが掛かる中山は合っている。前走菊花賞を勝った3歳馬が3着に入り、ドゥラメンテを除く3歳牡馬のレベルの低さを否定した。来春は天皇賞(春)が目標になる。

マリアライトは好位の外からしぶとく伸びて0.1秒差の4着。3、4コーナーでゴールドシップが来るのを待ってスパートしたことでゴールドシップに息を入れさせず、自身は最後までしぶとい脚を使って4着を確保。エリザベス女王杯勝ちが展開&位置取りに恵まれただけではないことを証明した。小柄な牝馬でも非力ではなく、タフな馬場をこなすタイプ。中山芝2500mでは潮来特別(稍重)を3馬身差で圧勝している。母父エルコンドルパサーで牝馬でもスタミナがある。蛯名騎手だけに天皇賞(春)を使う可能性もありそうだ。

ラブリーデイは6番手からメンバー2位タイの34.7秒で伸びて0.2秒差の5着。本来ならゴールドアクターの位置でレースができる馬だが、距離2500mを考慮していつもより後ろに控えたことが堪えた。距離は確かに長いが、スローペースになっただけにもう少し積極的に乗れば、勝ち負けできたのではないか。今後は海外を含め、芝2000mを中心に使って行くことになる模様。

ゴールドシップはスタートダッシュが遅く、最後方を進み、向こう正面から捲って先団に取りついたが、直線で伸び切れず0.3秒差の8着。大外から捲って先団に取りつき、ひと息入れたいところでマリアライトにスパートされて息を入れないまま、直線に向いたことが堪えた。それでもあれだけ長く脚を使って0.3秒差に食い下がったのだから大したもの。ラストランVを飾れなかったが、ゴールドシップらしさを見せた。引退式ではまるで人間の言葉が分かるように絶妙のタイミングでいなないていた。最後は記念撮影を拒否したが、自分が納得するとおとなしく撮影に応じていた。ゴールドシップの本性を少し見た気がする。G1−6勝の実績を引き下げてビッグレッドファームで種牡馬生活に入る。父ステイゴールド、母の父メジロマックイーンはオルフェーヴルと同じ。優等生か、それとも破天荒か。産駒の活躍が楽しみだ。

ルージュバックは中団の外から上がって5番手に押し上げたが、直線で伸び切れず0.5秒差の10着。内を回って前に行った馬が有利な展開で外枠スタートから終始外を回っては厳しかった。それでも勝負どころで見せ場を作ったように力のあるところを見せた。最後は伸び切れなかったが、中山コースでも問題なさそうだ。ただし小柄な牝馬だけにタフな馬場でない方がいい。まだG1勝ちはないが、相馬眼的にG1を勝てる馬という評価は変わらない。

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