宝塚記念
レース回顧

マリアライトは外枠スタートから中団の外を進み、3コーナー過ぎから早めに動いてメンバー2位の36.3秒で差し切ってレースを制した。キタサンブラックが逃げて前半5F59.1秒(稍重)の速い流れ。逃げて3着に粘ったキタサンブラックを除き、7着まで差し追い込み馬が占めた。マリアライトは終始外を回って早めに動いて勝ちに行き、最後にひと伸びしてキタサンブラックを交わし、ドゥラメンテの追撃をクビ差凌ぎ切った。メンバー中最も軽い438キロの牝馬が、昨年の2冠馬ドゥラメンテ、菊花賞&天皇賞馬キタサンブラックを撃破したのだから大したもの。昨年の有馬記念で3、4コーナーでゴールドシップが来るのを待ってスパートし、ゴールドシップに息を入れさせず、最後までしぶとい脚を使って0.1秒差の4着に入ったのはダテではなかった。有馬記念で3着キタサンブラックとは頭差だったが、今回は有馬記念の同斤から2キロ軽い56キロだった。これで稍重以上では[4−0−1−0]で4連勝。昨年勝ったエリザベス女王杯も稍重だった。小柄な牝馬でも非力ではなく、渋った馬場を得意にしており、母父エルコンドルパサーでスタミナも備えている。今回は渋った馬場、展開が味方したこともあるが、外枠から終始外を回っていい脚を長く使って差し切ったことを評価したい。4歳トップホースが牝馬に負けたで、今後のG1戦線はレベルの高い3歳世代が中心になりそうだ。09年以降のG1で蛯名騎手は8枠で8番人気以内なら[5−0−1−5]、阪神なら[3−0−0−0]で勝率100%。阪神のG1で8枠に入ったときは要注意。マリアライトは今後休養して秋はエリザベス女王杯と有馬記念が目標になりそうだ。

ドゥラメンテは後方からメンバー最速の36.1秒で追い込んでクビ差の2着。勝負どころで馬群に包まれて追い出しが遅れたことが堪えた。直線の短い内回りコースのため、中山記念を勝ったときのような積極的なレースかと思われたが、Mデムーロ騎手はじっくり構えて差すレースに徹していた。初めての渋った馬場で走りにくかった面もあるか。最後に鋭く伸びて逃げたキタサンブラックを交わしたのは底力。ゴールした後、1コーナーで歩様が乱れてMデムーロ騎手が下馬。検査の結果、球節下面および裏面の複数の靱帯、腱に内出血&炎症と診断された。その後の経過観察で症状の良化が見られないため、競走能力喪失と診断され、このまま現役を引退して種牡馬入り(繋養先未定)することになった。凱旋門賞に挑戦するプランがあったが、まさか宝塚記念で引退になってしまうとは・・・。エアグルーヴ、アドマイヤグルーヴと続く名牝系の一族。ドゥラメンテが果たせなかった凱旋門賞制覇の夢は産駒に託されることになった。

キタサンブラックは内枠スタートからハナを切って前半5F59.1秒で飛ばし、直線で後続を引き離したが、最後に2頭に差されてクビ+ハナ差の3着。差し追い込み馬が上位を占める中、1頭だけ前に行って粘ったように強いレースをしている。これまで前半5F60秒以上では[5−1−1−0]、前半5F59.2秒以下では[0−0−0−2]でスローペースで前に行って高速ラップでまとめて粘り込むのが勝ちパターンだったが、今回は前半5F59.1秒(稍重)で飛ばして3着に粘ったように地力強化を証明した。馬体は12キロ増えていたが、パドックでは太くは映らなかった。調教でかなり乗り込んでいたことを考えてもほとんどが成長分なのだろう。速い流れでも大きくバテなかったことは今後に繋がるが、良馬場だと切れ負けする懸念がある。昨年3着に粘った有馬記念が有力だが、東京コースではユタカマジックが必要になる。

ラブリーデイは中団の外から早めに動いてメンバー3位の36.7秒で伸びて0.2秒差の4着。勝負どころで勝ったマリアライトの蛯名騎手の手が激しく動いたのと対照的に馬なりで上がってきたが、直線に向きラスト100mで前と脚色が一緒になった。昨年の宝塚記念はスローペースで2番手から上がりをまとめて勝ったが、今年は稍重、速い流れで昨年とは全く違うレースになった。良馬場の緩い流れで高速ラップでまとめて勝ってきただけに流れと馬場が堪えたのだろう。昨年池江厩舎が一気にパフォーマンスを引き上げた影響もあるか。池江厩舎の管理馬はピークを過ぎると廃馬のように走らなくなる。まだラブリーデイはその状態までいっていないが、昨年の強かったレースを基準に考えるのは避けた方が良さそうだ。

ステファノスは中団からメンバー6位の36.9秒で伸びて0.6秒差の5着。手応え良く直線に向いたが、ラスト1Fで脚が鈍った。渋った馬場をこなすタイプだが、距離2200mはギリギリ。稍重、速い流れでよりスタミナが問われたため、距離適性の差がモロに出たのだろう。叩き2戦目は[2−2−0−0]だったが、今回は休み明けの鳴尾記念で宝塚記念のメンバーを考慮していつもより仕上げていた。

シュヴァルグランは内ラチ沿いの7番手につけたが、直線で前が壁になってほとんど追えず9着。直線で下がってきたアンビシャス、ワンアンドオンリーの煽りをモロに受けた。相手なりに堅実に走る馬だが、結果的に内に拘った乗り方をしたことがマイナスに働いた。もっとゆったりと進められる長い距離が合うタイプ。京都大賞典に使ってきたら見直したい。福永騎手が騎乗していた馬はジャパンCで激走することが多い。

アンビシャスは3番手につけたが、直線で失速し16着に終わった。道中行きたがって折り合いを欠いていた。大阪杯では前半5F61.1秒で2番手で折り合って勝ったが、今回は前半5F59.1秒でも折り合いを欠いた。横山典騎手が言うようにまだ難しい面が残っているのだろう。芝1800m前後が合うタイプ。今後も折り合いが課題になるが、昨年善戦した毎日王冠、天皇賞(秋)で注意したい。

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