秋華賞
レース回顧
ヴィブロスは中団の外で脚をタメ、メンバー最速タイの33.4秒で差し切ってレースを制した。クロコスミアが逃げて前半5F59.9秒。3F目に12.9秒、6F目に12.6秒とラップが落ちて、ラスト4F11.7−11.4−11.3−11.7秒の上がり勝負。中団より前につけた馬が1〜3着を独占した。ヴィッシュは中団より前につけた馬の中で最も末脚が切れる馬。福永騎手が中団で折り合いをつけ、スムーズなレースができたことが大きかった。未勝利戦を勝った後にノドの手術をし、チューリップ賞とフラワーCはその影響もあり惨敗したが、中京芝2000mの500万条件を11.9−11.7−11.7秒の尻上がり&持続ラップで4馬身差の圧勝。早めの処置、芝2000mに拘って使ってきた陣営の判断も功を奏したのだろう。全姉ヴィルシーナは牝馬3冠でジェンティルドンナの2着に終わったが、妹がクラシックで雪辱を果たした。母ハルーワスウィートは05年に相馬眼ニュースで取り上げた馬。今後はエリザベス女王杯には使わずに休養する予定。小柄な牝馬で牡馬相手にバリバリやるタイプではないが、今後も牝馬限定重賞で活躍できそうだ。馬体は414キロと小さいが、全姉ヴィルシーナよりバネがあり末脚が切れる。敢えて馬体を大きくする必要はない。
パールコードは内枠スタートから5、6番手で流れに乗り、直線でカイザーバルを交わして先頭に立ったが、最後にヴィブロスに差されて半馬身差の2着。上がりはメンバー6位タイの33.8秒。好位で流れに乗って33秒台でまとめたが、決め手のあるヴィブロスに切れ負け。前走紫苑Sは賞金的に秋華賞に出走できるため、休み明け、馬体16キロ増で明らかに叩き台だった。京都芝1800mの新馬戦を11,7−11.5−11.4秒の尻上がりラップで圧勝した馬で当初から陣営の最大目標は京都芝2000mの秋華賞。ひと叩きされたことで馬体が10キロ絞れてバランスが良くなり、春よりかなり仕上がりが良く見えた。結果的に内に拘り過ぎなかった川田騎手も上手く乗っている。先週から川田騎手がやたら下手に乗っていたため、秋華賞で激走があるとみていたが、その通りになった。経験則でG1の前の週に駄乗を繰り返した騎手は激走することが多い。次走はエリザベス女王杯。外回りで決め手不足をどう補うかがカギ。
カイザーバルは5番手からメンバー9位タイの34.1秒で早めに先頭に立ち、最後までしぶとく粘って0.2秒差の3着。不利な外枠スタートから馬を前に置けず、道中掛かるシーンがあったが、早め早めのレースで四位騎手が持ってきた。中盤にラップが12.6秒に落ちてラスト4Fが全て11秒台の高速ラップになり、中団より前につけた馬が有利な展開になったことが大きかった。流れと位置取り、四位騎手の乗り方が上手く嵌まっての3着。馬体はまだ腹目が細く映り、底力に欠ける。今後は休養してどこまで馬体がしっかりしてくるか。ベストは芝1800m。まだ馬体がパンとしていないため道悪は下手だが、こういう脚長の馬は東京マイルの道悪で激走があるため注意したい。
ジュエラーは中団の後ろからメンバー3位タイの33.5秒で伸びて0.2秒差の3着。内枠スタートから終始ロスなく回ってきたが、4コーナーから直線で内のポケットに入って動けず、追い出しが遅れたことが堪えた。直線では前と外に馬がいて外に出せず、苦し紛れに内に進路を取ったことも堪えた。Mデムーロ騎手は内を突くと躊躇して本来の瞬発力を使えないとコメント。これまで外から差すレースをしてきた影響もあるのだろう。前走ローズSではスタートを決めて好位につけたが、それで惨敗したことでMデムーロ騎手は馬を信頼できなかったのか、今回は前半から控えて脚をタメるレースに徹していた。前半2F目に10.5秒と速くなり、流れが速くなるという読みもあったかもしれないが、結果的に3F目に12.9秒、6F目に12.6秒とラップが落ちて上がり勝負になった。4着に負けたが、骨折明け2戦目でレース内容は良くなっている。桜花賞でシンハライトに勝ったが、相馬眼的に距離が延びれば、シンハライトとの差は広がるとみていた馬。次走のエリザベス女王杯は末脚の威力を生かせる京都外回りの芝2200m。古馬G1馬との争いになるが、叩き3戦目で上積みがあれば、勝ち負けできるのではないか。
パーシーズベストは前半から行く気がなく後方に控え、3コーナー最後方からメンバー最速タイの33.4秒で追い込んで0.6秒差の7着。直線で馬群に突っ込んで伸びてきたが、上がり勝負で位置取りが後ろ過ぎた。ルメール騎手は前年のタッチングスピーチでも後方に控え過ぎて脚を余して6着に負けている。3走前の阪神芝1800mの500万条件は前半5F58.4秒で中団の後ろからメンバー最速の34.0秒で差し切り、1分45秒3の好タイムで勝っている。秋華賞は前半5F59.9秒と流れが緩んだだけにもう少し前につけられるはずだが、ルメール騎手は多頭数のごっちゃつきそうなレースでは事故リスクを減らすためなのか、無理に位置を取りに行かないことが多い。ルメール騎手は距離は2400mが合うとコメント。確かに距離をこなすタイプで上がりが掛かった方がいいが、相馬眼的に芝1800mでもやれるタイプ。今後は自己条件で賞金を加算する必要があるが、来年は牝馬重賞戦線で活躍できそうだ。来年は府中牝馬Sからエリザベス女王杯になる。
ビッシュはスタートが遅く後方を進み、メンバー9位タイの34.1秒で上がって0.8秒差の10着。1番人気に支持されたが、見せ場なく惨敗した。輸送をクリアして馬体は2キロ減で仕上がりは良さそうだったが、スローの上がり勝負になり持ち味を生かせなかった。これまで33秒台で上がったことがないため、33秒台の上がりが問われる展開で外から追い込むレースでは厳しかった。道中流れが緩んで上がりが速くなるようなら早めに捲らないと行けなかったが、それができなかった。戸崎騎手は京都芝2000m[0−3−0−13]で未勝利。高速馬場で緩急のあるラップになり、コース経験の少なさもあり流れを読み違えたのではないか。鹿戸調教師は馬の精神面に敗因を求めたが、ビッシュはそんなに柔な馬ではない。仕上げ、輸送などは間違っていない。戸崎騎手は9月に重賞で10連続連対でストップ。今年の重賞で1番人気で[7−3−0−0]だったが、ビッシュが10着に終わり、こちらも10連続連対でストップ。10がひとつの壁になっている。ビッシュは芝1800〜2000mがベスト。小回りコースで上がりが掛かるレースを選んで使えば、牡馬相手でも勝ち負けできる。
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