菊花賞
レース回顧

サトノダイヤモンドは中団の外からメンバー最速の34.1秒で差し切り、2着に2馬身半差をつけてレースを制した。ミライヘノツバサが逃げて前半5F59.9秒。3番手以下を6馬身以上離しており、実質はスローの上がり勝負。中盤5Fは64.5秒、後半5Fは58.9秒。中盤に12.7−13.6−13.2−12.3−12.7秒とかなり流れが緩んでラスト3Fは11.6−11.5−11.6秒の高速ラップ。昨年の菊花賞は前半5F60.2秒、中盤5F64.4秒、後半5F59.3秒。昨年と近いラップ構成になった。近年の菊花賞は中盤に流れが緩んで上がり勝負になりやすい。昨年リアルスティールが2着に入ったようにこういう展開になるとスタミナがあるステイヤーより、中距離で速い脚を使える馬が有利。今年も2着にレインボーライン、3着にエアスピネルが入り、上がりの掛かる消耗戦が得意な馬は4着以下に終わった。サトノダイヤモンドはダービー、神戸新聞杯のレースの後半5Fが58.0秒、58.8秒。道中ゆったりとした流れで脚をタメれば、ラスト5Fを高速ラップでまとめられるタイプ。消耗戦になると厳しくなる可能性があったが、自身が得意とする上がり勝負になり、危なげのない内容で圧勝した。胸が深くない造りでスタミナ勝負に課題があるが、絶対能力の高さと自身が得意とするレース展開で3000mを克服した。陣営は長距離を克服させるために腹目をかなり絞ってきていた。この勝利でディープインパクト産駒は3000m以上の平地戦初勝利、里見氏はG1初勝利、ルメール騎手はクラシック初勝利&長距離G1初勝利となった。今後は香港国際競走か有馬記念に向かう予定。香港の登録では香港カップ(芝2000m)が第一希望、香港ヴァーズ(芝2400m)が第二希望となっている。

レインボーラインは後方からメンバー2位の34.2秒で追い込んで0.4秒差の2着。最後に内から伸びたエアスピネルをハナ差交わして2着を確保。春に芝1600mのアーリントンCを勝ったが、ダービー8着、札幌記念3着、菊花賞2着と距離を延ばしてパフォーマンスを引き上げている。母系がスタミナ系のレインボーアンバーの一族で追ってバテないタイプ。外枠で大外ブン回しでは普通は厳しいが、結果的に内をロスなく回って内を生かした馬が外枠のエアスビネルだけというレースになったことも良かったのだろう。前走札幌記念は後方からメンバー最速タイの36.3秒で追い込んで2着モーリスにクビ差の3着に入ったのはダテではなかった。菊花賞は昨年もそうだったが、中盤に流れが緩むと中距離で速い脚を使える馬が有利。このあたりも良かったのだろう。今後はひと息入れる予定。陣営がどの路線に使ってくるか注目したい。福永騎手はスプリンターズSで断然人気のビッグアーサーで惨敗したが、それで吹っ切れたのか、秋華賞をヴィブロスで勝ち、今回2着とG1で結果を出した。春のG1は池添騎手が活躍したが、秋のG1は福永騎手が波に乗る可能性がある。

エアスピネルは外枠スタートから内ラチ沿いの好位につけ、メンバー4位の34.6秒で内から伸びて0.4秒差の3着。前走神戸新聞杯でスタートしてすぐに後方に下げて終い勝負に徹して5着に終わったが、今回はスタートしてすぐに内ラチ沿いの絶好位につけた。京都外回りの長距離戦は内をロスなく回った馬が有利で内枠の馬が内を空けないため、外枠から内に潜り込むのは難しいが、武豊騎手が上手く内に入れたことが功を奏した。3コーナー過ぎから下りのため、勢いをつけて行くと折り合いを欠きやすい。内に入れないと勝ち負けできないとみてリスクを冒して内を取りに行ったのだろう。ただし道中折り合いを欠くシーンが多かった。後半5F58.0秒の上がり勝負になったダービーで早めに先頭から0.4秒差の4着に入った馬。本来の立ち回りの上手さを生かす騎乗で武豊騎手が持ってきた。神戸新聞杯で後方に下げた騎乗に違和感を感じたが、叩き台として割り切り、本番のために敢えて立ち回りの上手さを封印したのだろう。3冠に全て出走し、4、4、3着は立派な成績。今後は中距離路線になりそうだが、4歳春に引退した母エアメサイアのぶんまで活躍を期待したい。

ディーマジェスティは中団の後ろからメンバー3位の34.5秒で伸びて0.5秒差の4着。勝負どころで外から上がってサトノダイヤモンドを負かしに行ったが、結果的に得意ではない上がり勝負で切れ負け。レインボーラインに差されたのは、初コース、輸送して馬体が6キロ増えていた影響か。初の長距離輸送を考慮して調教でそれほど攻めていなかったが、結果的にいつもより腹目が太く映り、重め残りだった。サトノダイヤモンド向きの展開になったこともあるが、ここまで離されたのは重め残りの影響もあるのだろう。二ノ宮厩舎は昨年22勝したが、今年はまだ9勝しかしていない。ディーマジェスティで皐月賞を勝ってからは[2−9−7−128]で勝率1.4%。勝った2頭は1番人気だった(セントライト記念、未勝利)。皐月賞を勝ってから歯車が狂っている。このあたりの影響もあったか。今後は実績のある中山の有馬記念に向かうことになりそうだ。

レッドエルディストは後方から外を回ってディーマジェスティを追いかけたが、4コーナーから直線で追いつけず、直線でもジリジリとしか伸びず1.0秒の9着。上がりはメンバー7位タイの34.8秒。内めの枠に入り、一発狙いでロスなく回って内から捌くとみていたが、上がり勝負で大外ブン回しでは厳しかった。現時点では力負け。上がり勝負より消耗戦に強いタイプ。今後はひと息入れて成長を促し、長い距離を使いながら地力強化を図ることになりそうだ。

ジュンヴァルカンは大きく出遅れて後方を進み、メンバー7位タイの34.8秒で追い込んで1.3秒差の10着。好位からしぶとい脚を使える馬で出遅れは致命的だった。パドックでは馬体のバランスが良く、素質の高さを感じさせた。休み明け、出遅れで惨敗したが、相馬眼的にこれから走ってきそうな馬。まずは自己条件になりそうだが、来年は目黒記念あたりでチャンスがありそうだ。

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