天皇賞(秋)
レース回顧
モーリスはスタートを決めて好位の外につけ、メンバー4位の33.8秒で速めに抜け出し、そのまま後続を完封してレースを制した。エイシンヒカリが逃げて前半5F60.8秒のスローペース。レースの後半5Fは58.5秒、上がりは34.2秒、勝ちタイムは1分59秒3。モーリスは好位につけて早めに抜け出す正攻法のレースで快勝。スローペースでもムーア騎手が折り合いをつけて33秒台で上がることができた。エイシンヒカリを除く人気の有力馬が後方に控える中、ムーア騎手が積極的なレースをして持ってきた。東京芝2000mはコース的に内枠が有利だが、Bコースに変更されたのにも関わらず、馬場の内側が荒れており、馬場のいい外を通った馬が有利な状態だった。結果は真ん中より外の枠に入った社台の3頭で決着。JRAは非社台のエイシンヒカリ、アンビシャスを内枠に配置し、昨年の勝ち馬ラブリーデイを最もロスがある大外枠に入れていた。モーリスはマイルG1を4勝しているが、芝2000mのG1を勝てば種牡馬価値が跳ね上がる。これで13年以降、東京芝2000mでムーア騎手は[9−1−1−7]、1番人気では[8−0−0−1]で勝率88.9%。社台はメルボルンCでオーストラリアに行くムーア騎手をわざわざ日本に呼び寄せて騎乗させたのである。ステファノス、ルージュバックにムーア騎手が騎乗していれば勝っていたのではないか。社台はモーリスの種牡馬価値を上げることが最優先なのだから仕方ない。ムーア騎手は馬のリズムに合わせて足で押せる。馬上で激しく動いている日本人騎手はいるが、あれとは全く違う。日本人騎手で押せるのは柴田大地騎手くらいか。モーリスは馬体4キロ増で少し体に余裕があったが、それでもこのレベルの馬になると普通に仕上がれば走る。次走は香港カップか、香港マイルがラストランになる予定。馬体がマッチョ化しており、距離適性はマイル前後にある。メンバーを見渡して、このまま引退する可能性もありそうだ。
リアルスティールは外枠スタートから中団につけ、メンバー最速タイの33.5秒で伸びて0.2秒差の2着。4コーナーから直線でルージュバックを外に出させないようにブロックし、Mデムーロ騎手がガツンと追って持ってきた。外枠スタートで道中前に馬を置けなかったが、掛からずに折り合っていた。福永騎手なら折り合いを欠いてアウトだったかもしれませんが、さすがに乗れているときのMデムーロ騎手はひと味違う。装鞍所で鞍をつけるのを嫌がって暴れ、パドックになかなか出て来なかったが、それでもこれだけ走ったのだから大したもの。キャリア1戦で臨んだ共同通信杯でドゥラメンテ、アンビシャスに勝った馬。これで芝1800〜2000mは[3−3−1−0]でドバイ遠征前で福永騎手がお茶を濁した中山記念3着を除き連対を確保。夏負けの影響で毎日王冠を回避し、ぶっつけになったことでG1馬がMデムーロ騎手でも7番人気の低評価。G1で社台の馬に人気に左右するマイナスの出来事があった場合、激走することが非常に多い。基本的に社台の馬に不安情報が出たら買い。最近では富士Sでイスラボニータの調教師が弱気なコメント(太め残り、仕上がり不足)を連発していた。ただし本当にダメな場合もあるため、最終調教の動き、気配で判断が必要になる(イスラボニータのようなダマシ調教に注意)。次走は香港カップもあるが、メンバーを考慮してジャパンCになりそうだ。
ステファノスは後方2番手からメンバー最速タイの33.5秒で大外から追い込んで0.4秒差の3着。前走毎日王冠は前半5F60.3秒で好位につけたが、今回は前半5F60.8秒の緩い流れで後方2番手からのレースだった。昨年と同じ14番枠。昨年は中団につけたが、今年は昨年よりも遅い流れにも関わらず、後方2番手からでは届かなくて当たり前。これで川田騎手は予定通りの競馬というのだから、最初からモーリスを差さないように騎乗していたと言われても仕方ない。バレないように上手く負けるのも騎手の技術。間違っても競馬ファンを落胆させるコメントをしてはいけない。ステファノスはひと叩きされたことで馬体の張りが良くなり、パドックでは活気十分で勝負の仕上げで臨んできていた。昨年の香港カップは戸崎騎手の駄乗(昨年の香港では駄乗の連続)で惨敗したが、今年はエイシンヒカリが相手でも騎手&乗り方次第で勝ち負けできそうだ。
アンビシャスは出遅れて最後方を進み、直線で内からメンバー6位の34.0秒で追い込んで0.6秒差の4着。出遅れて位置取りが悪くなり、直線で馬場の一番荒れたところを通ってきた。掛かって自滅することを除き、考えられる中で最悪の乗り方。ただし馬場の内側が荒れており、内枠に入った時点で厳しかったのも確か。JRAはロゴタイプを除く社台の馬を真ん中より外に入れていた。毎日王冠のように外から差すレースができれば勝ち負けできたのではないか。ひと叩きされたことで馬体が絞れ、気合乗りが良くなっていた。距離的にここが勝負と陣営は目一杯に仕上げていた。今後は休養し、来年は中山記念から大阪杯(G1)を目指す予定。カンパニーに似た奥手のタイプ。本格化すれば、中距離G1を勝てるのではないか。
ルージュバックは後方からメンバー5位の33.9秒で追い込んで0.6秒差の7着。ずっと外の少し前にリアルスティールがいて動けず、4コーナーから直線でリアルスティール(Mデムーロ騎手)に外から蓋をされ、前に馬がいて動けなくなり、それから外に出したが、追い出しが遅れてかなり脚を余した。最後は重心が下がってスピードに乗っていたようにまともなら上位争いできたのではないか。これでG1では[0−1−0−5](2着オークスは桜花賞の結果を受けて早仕掛け)。戸崎騎手の駄乗で不憫なレースが続いている。馬体重は前走から4キロ減の450キロ。調教後の馬体重は9キロ減の445キロだったが、5キロ回復していた。調教後の馬体重は厩舎の申告によるものでJRAが体重を測ったものではない。社台は色々な仕掛けを入れてくる。惑わされないようにしたい。馬体重より最終調教での馬体の造りに注目した方がいい。今年のG1で戸崎騎手は[1−1−0−10]、牡馬混合G1では[0−0−0−8]でカモネギ状態。G3は上手く乗っているが、G1のガチンコ勝負に弱い。前日のスワンSではフィエロで出遅れて惨敗している。ただし、こういう駄乗を連発した騎手は近々大きいレースを勝つことが多い。JBCで注意したい。ルージュバックは中2週で使ったが、まともに走っていないため、それほど疲れはないのではないか。ジャパンCはキタサンブラックが出走するため、またスローペースになる可能性がある。ルージュバックはオークス2着馬。今回より1キロ軽い55キロで出走できる。社台はサウンズオブアースがMデムーロ騎手、リアルスティールは未定。ルージュバックにムーア騎手が騎乗すれば面白そうだ。
エイシンヒカリはスローペースで逃げたが、直線でバッタリ止まって1.3秒差の12着。馬場の内側が荒れていたが、これだけ緩い流れで全く見せ場がなかったようにそれだけではなさそう。芝1800mは[7−0−0−1]、芝2000mは[3−0−0−3]でベストは芝1800m。世界最高レーティングで2番手から抜け出して勝ったイスパーン賞は芝1800mだった。東京芝2000mのアイルランドTを勝ったときのように大逃げして直線で馬場のいい外を走らせるようなレースをすれば激走できたかもしれないが、次走2連覇が懸かる香港カップで引退が決まっているだけに無理しなかったのだろう。凱旋門賞を勝ってジャパンCに参戦したデインドリーム、ソレミアが惨敗したように日本のレースで海外G1実績はアテにならない。次走の香港カップがラストランになる。昨年逃げ切っただけに今年はマークされる。楽なレースにはなりそうにない。
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