菊花賞
レース回顧

フィエールマンは7番手の馬込みで進み、メンバー最速タイの33.9秒(1、2、3、5、7着馬が最速上がり)で馬群を割って伸び、最後は先に抜け出したエタリオウに内から交わしてハナ差でレースを制した。ジェネラーレウーノが逃げて前半5F62.7秒のスローペース。中盤に64.2秒に緩み、後半5F59.2秒。ラスト4Fは12.2−12.2−10.7−11.3秒。流れが緩んで上がり勝負になり、切れ味のある馬が上位を独占した。過去10年でラスト2F目は11.5秒が最速。今年の10.7秒はいかにラスト2Fの勝負になったかを示している。フィエールマンは出遅れ癖があったが、ルメール騎手がスタートを決めて好位の馬込みで流れに乗り、これまでとは全く違うレースぶりでG1初制覇。キャリア4戦目の菊花賞制覇は史上最速。ルメール騎手は先週の土日、今週の土日の重賞を制し4連勝となった。 ルメール騎手の好騎乗もあるが、直線で内を突いて最速上がりを繰り出して叩き合いを制したように確かな能力がある。関東馬の優勝は01年のマンハッタンカフェ以来17年ぶり。休み明け、キャリア3戦、初の長距離、出遅れ癖、長距離輸送(関東馬)と厳しい条件が揃っていたが、強気に穴馬で狙って正解だった。消耗戦に強いステイヤーではないため、上がり勝負になったことがプラスに働いている。心肺機能が高く末脚の持続力が優れたタイプ。次走は未定だが、状態面次第で有馬記念に向かうことになりそうだ。

エタリオウは後方から大外を回って徐々に進出し、4コーナーで前を射程圏に入れ、直線で早めに抜け出したが、最後にフィエールマンに交わされてハナ差の2着。早めに抜け出して少しフワッとしたが、内からフィエールマンが来るとひと伸びして食い下がった。先週の府中牝馬Sと同様にルメール騎手が勝ち、Mデムーロ騎手が2着。エタリオウは結果的に少し強気に乗り過ぎたが、最速上がりを繰り出しており、現時点の力は出し切っている。青葉賞で穴馬で狙って2着に激走した馬が、神戸新聞杯、菊花賞で2着に入り、長距離適性を示した。春は馬体が細身で華奢に映ったが、青葉賞よりも22キロ増えて全体的にパワーアップしている。ステイゴールドのラストクロップ。これまで[1−6−0−2]で重賞2着が3回。父と同様に海外に行くとあっさり重賞を勝つかもしれない。今後の活躍を期待したい。

ユーキャンスマイルは中団の馬込みで進め、直線でフィエールマンの後からメンバー最速タイの33.9秒で伸びて0.2秒差の3着。春より心身ともに成長し、心肺機能が高さで激走があるとみて狙った大穴馬が10番人気で激走した。右に寄れる癖があるが、初めて左鞭を入れて追われている。直線で狭くてトップギアに入らなかったが、3着に入り能力があることを示した。もう少し流れが速くなれば、際どいレースになったのではないか。これで直線が平坦なコースでは[3−1−1−1]で安定して走っている。来年の天皇賞(春)に向けてどこまでパフォーマンスを引き上げられるか注目したい。武豊騎手はスプリンターズS(13人気)、秋華賞(3人気)に続き3戦連続G1で3着。4000勝を達成し、これまでより競馬に集中している。この後のG1で注意したい。

ブラストワンピースは後方から外を回って進出し、4コーナー9番手からメンバー6位タイ(1〜5位は33.9秒で最速)の34.1秒で大外から伸びて0.4秒差の4着。大外から伸びかけたが、最後は伸び切れなかった。ラスト2F10.7−11.3秒の上がり勝負になって切れ負けしたのだろう。内枠を生かしてロスなく回り、切れ味を引き出せれば連対できたかもしれないが、池添騎手はダービーでロスなく進めて直線で前が詰まったこと、新潟記念で大外一気を決めたことで外を選択したようだ。出遅れ癖のある乗り難しい馬を中団の馬込みでタメたルメール騎手とは大きさ差がある。調教で攻め切っていないこともあるが、馬体がさらにマッチョ化していた。体型的に距離は2000〜2200mあたりが合うのではないか。次走は未定だが、状態面次第で有馬記念、AJC杯あたりになりそうだ。

エポカドーロは内ラチ沿いの3番手につけてメンバー9位タイの34.8秒で上がり0.8秒差の8着。内が荒れた馬場で内をロスなく回り、直線でも内を通って伸び切れなかった。スローペースで上がり勝負になったことも堪えたが、消耗戦になってもスタミナ面に不安があるだけに厳しかったか。過去5年の菊花賞で良馬場で行われた3年の連対馬6頭は全てメンバー1、2位の上がりを繰り出していた。今年はメンバー最速上がりの2頭で決着。エポカドーロ、ジェネラーレウーノは切れより地力タイプだが、3、4番人気に支持され、明らかに過剰人気だった。エポカドーロは馬体的に長距離は合わないタイプ。神戸新聞杯で出遅れて中途半端に4着に負けたことで菊花賞を使わざるをえなかったのではないか。藤原英調教師は距離適性を認識している。神戸新聞杯で外を回って余計に走らせたことで叩いても上積みもなかったことも付け加えておく。戸崎騎手は関西G1[1−2−1−26]、牡馬では[0−0−0−15]。今後は中距離を使っていくことになりそうだ。

[Home]