有馬記念
レース回顧
リスグラシューは内ラチ沿いの10番手をロスなく進んで脚をタメ、4コーナーから直線で大外に持ち出すとメンバー最速の34.7秒で差し切って2分30秒5の好タイムで5馬身差で圧勝した。アエロリットが逃げて前半5F58.4秒のハイペース。消耗戦になり道中10番手以下につけた馬が1〜7着まで独占した。リスグラシューはレーン騎手が内ラチ沿いでタメて直線で外に出すと一頭だけ次元の違う末脚を繰り出し2着に5馬身差をつけた。直線では鞭を入れておらず、ゴール前でガッツポーズをして流す余裕があった。ディープインパクト、オルフェーヴルのラストランも強かったが、ハイペースの消耗戦でこの勝ち方は強烈。JRAが発表したレーティングは126。牡馬に換算すると130になるが、これは14年ジャパンCのエピファネイアの128、13年有馬記念のオルフェーヴルの129を上回る史上最高値。2歳から使われたハーツクライ産駒の牝馬が、宝塚記念、コックスプレート、有馬記念をハイパフォーマンスで3連勝しラストランVを飾った。来年の凱旋門賞に挑戦して欲しいと思えるほどの強い内容だった。2歳時から走ってきた小柄な牝馬でマイル戦を使うこともあったが、4歳秋にエリザベス女王杯をモレイラ騎手が騎乗して勝ってから、これがあのリスグラシューなのかと思えるほどのレースぶりで一戦ごとに進化していった。ハーツクライ産駒の成長力は恐ろしい。今回の有馬記念の走りは伝説になる。年度代表馬も確定か。今後は繁殖馬としての活躍を期待したい。
サートゥルナーリアは13番手の外から上がってメンバー3位の35.4秒で抜け出したが、外からリスグラシューに交わされて0.8秒差の2着。ハイペースの消耗戦で距離不安を出してもおかしくない中、距離を克服してあらためて能力を証明した。現時点で馬体の造りは2000mくらいがベストに映るが、ロードカナロア産駒で母シーザリオはオークス馬、母の父スペシャルウィークはダービー馬。これから成長して能力に馬体が追いついてくるのではないか。これで右回りは[5−1−0−0]で連対率100%をキープ。今後は休養して春はドバイシーマクラシック、大阪杯、クイーンエリザベス2世Cあたりから宝塚記念に向かうことになりそうだ。
ワールドプレミアは最後方からメンバー2位の35.0秒で大外から追い込んで0.9秒差の3着。菊花賞では内をロスなく回って直線で抜け出したが、今回は武豊騎手がハイペースでタメるだけタメる一発狙いの騎乗して3着に突っ込んだ。3着ワールドプレミア、4着フィエールマン、5着キセキは菊花賞馬。ハイペースの消耗戦でスタミナが問われたのだろう。菊花賞はメンバーレベルが低かったが、有馬記念はメンバーレベル、レースレベルとも高く、そこで3着に入ったことは今後に繋がる。デビューから[3−1−3−0]で複勝率100%をキープ。ワールドエースの全弟。来年は阪神大賞典から天皇賞(春)を目指すことになりそうだ。
フィエールマンは中団から勝負どころで早めに動いてアーモンドアイを内に押し込め、メンバー6位タイの36.0秒で上がって1.1秒差の4着。勝負どころで自分から動いて前にいたアーモンドアイを負かしに行き、最後は一杯になって外から3頭に交わされたが、少し強引に勝ちに行ったぶんもあるのだろう。凱旋門賞では重い馬場が合わずにシンガリ負けを喫したが、あらためて力があることを示した。もっといい馬場で高速ラップの持続力を生かせるレースが合うタイプ。条件が揃えば、またG1で活躍できるのではないか。
アーモンドアイは8番手から勝負どころで上がって直線に向いたが、そこから内にモタれて伸び切れず1.8秒差の9着。上がりはメンバー9位の36.9秒。スタートして4コーナーを回った後に前にいたフィエールマンがフラフラしたため、ルメール騎手が外に出すと馬がもうすぐゴールと勘違いしたのか、スタンド前の大歓声もあり、そこでスイッチが入って掛かり気味になった。その後もどこがゴールか分からない馬がずっと外を回って力みながら走っていた。勝負どころでフィエールマンに外から早めに来られて動かざるをえなくなり、外から被らせられたことで怯んで内に切れ込み、そこから伸び切れなかった。見た目の仕上がりは良かったが、初コースの中山、消耗戦で10番手以下でタメた馬が1〜7着を占める展開で外を回って折り合いを欠き気味に走ってはさすがに厳しかったか。強烈なパフォーマンスを発揮したジャパンCは1枠1番、天皇賞(秋)は1枠2番だった。今回の惨敗でJRAがまた内枠に入れてくるのか注目したい。今後は休養して来年使うレースをじっくり検討していくことになりそうだ。右回りの消耗戦は使いたくないため、春はドバイターフ、安田記念、秋は天皇賞(秋)、ジャパンCといったローテーションか。
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