菊花賞
レース回顧

コントレイルは7番手から勝負どころで少しずつ進出し、メンバー2位タイの35.2秒で抜け出し、最後はアリストテレスとの激しい叩き合いをクビ差で制した。勝ちタイムは3分5秒5。キメラヴェリテが逃げて前半5F62.2秒のスローペース。中盤5F62.6秒、後半5F60.7秒。レースの上がりは35.6秒。前半に13.3秒、中盤に13.1秒、ラスト6Fから12.7−12.9秒と流れが緩んだが上がりが掛かっており、レースレベルは高くない。京都は基本的に内を通った馬が有利だが、道中荒れた内を通った馬は直線で失速した。コントレイルは道中アリストテレスに斜め後ろの外からずっとマークされて力みながら走っていた。直線ではアリストテレスに迫られて危ないシーンがあったが、単勝1.1倍の断然人気に応え、見事に無敗の3冠を達成。父子による無敗の3冠制覇は史上初。緩急のあるラップと荒れた馬場でスタミナが問われた可能性はあるが、2勝クラスを勝ったばかりのアリストテレスに迫られたことを見てもレースレベルは高くない。JRAは抽選、馬場、枠順などコントレイルの3冠を完全アシスト。直線でアリストテレスに迫られたのを見て、アンティシペイトを抽選で落としておいて良かったと思ったのではないか。

コントレイルは不向きな舞台を克服し、バテながらも叩き合いを制したことを評価したい。初めて目一杯に走ったのではないか。もう少し短い距離で軽い馬場ならもっと高いパフォーマンスを発揮できる。芝3000m以上で矢作厩舎は[1−3−3−22]で初勝利となった。東スポ杯2歳Sはムーア騎手が一杯に追って1分44秒5のレコードで5馬身差で圧勝。皐月賞は稍重のタフな馬場で1枠1番から流れに乗れず、後方から大外をブン回るロスのあるレース。菊花賞はタフな馬場で目一杯に走ってクビ差の辛勝。460キロ前後の小柄な馬がタフなレースを続けている。次走はジャパンCまたは有馬記念か。無敗の3冠牝馬デアリングタクト、古馬の一線級との初対決が楽しみだ。ジャパンCでデアリングタクトに完敗すると種牡馬価値が考慮され、早々に引退もありえる。

アリストテレスは道中コントレイルの斜め後ろの外につけてマークし、メンバー最速の35.1秒で上がってコントレイルに並びかけたが、最後まで交わせずにクビ差の2着。ルメール騎手がコントレイルを徹底的にマークしてプレシャーをかけ、直線で外から併せてあと一歩のところまできたが、最後はコトレイルが底力で抜かせなかった。コントレイルを負かすにはこれしかないという乗り方。あらためてルメール騎手の恐ろしさを感じたレースになった。アリストテレスは前走小牧特別を神戸新聞杯より0.6秒速いタイムで勝ったのはダテではなかった。バレークイーンの一族で祖母グレースアドマイヤは3戦3勝でダービーを制したフサイチコンコルド(菊花賞は3着)の半妹。近親に菊花賞2着馬リンカーンがいる。エピファネイア産駒はデアリングタクトが無敗の牝馬3冠、アリストテレスが菊花賞2着と初年度から活躍している。次走は有馬記念になりそうだ。

サトノフラッグは後方4番手からメンバー2位タイの35.2秒で追い込んで0.6秒差の3着。コントレイル、アリストテレスには離されたが、最後に猛然と追い込んでディープボンドをクビ差交わして3着を確保。皐月賞5着、ダービー11着は不甲斐なかったが、パドックでは春よりも馬体の張りが良く活気があり、後肢の踏み込みが力強くなっていた。春は重馬場の弥生賞で大外捲りで走り過ぎたことでデキを落としていたのではないか。今回は位置取りが後ろ過ぎて届かなかったが、最後まで重心の低いフットワークで伸びており、長距離戦でやれるメドは立った。国枝厩舎の管理馬は中山重賞に強い。来年はAJC杯、日経賞あたりから天皇賞(春)を目指すことになりそうだ。

ディープボンドは5番手から進出して直線で先頭に立ち、メンバー6位の36.1秒で上がって0.7秒差の4着。ダービー5着、神戸新聞杯4着、菊花賞4着と勝ち切れないが、相手なりに堅実に走っている。流れに関係なく先行してしぶとい脚を使っており、メンバー、流れ、馬場など何かを味方につけられれば、また重賞制覇がありそうだ。コントレイル陣営はノースヒルズ生産のキメラヴェリテにハナを切る指示(バビッド対策)を出し、コントレイルと同馬主のディープボンドが先行して早めに動くレース(展開的な紛れを回避)でコントレイルをアシストしている。

ロバートソンキーは後方から内を突いてメンバー5位の35.6秒で伸びて1.1秒差の6着。馬場の内側が荒れており内を通った馬は惨敗したが、直線で内から伸びてきたことを評価したい。神戸新聞杯で3着に入ったのはダテではなく、馬体の造りを見ても重賞でやれる能力がありそうだ。祖母トウカイテネシーは無敗の2冠馬トウカイテイオーの全姉。まだ1勝馬で1勝クラスに出走できる。大事に使ってオープン入りできれば、中長距離重賞で活躍できる馬になるのではないか。

ヴェルトライゼンデは10番手の外から伸び切れず1.4秒差の7着。上がりはメンバー7位の36.3秒。ダービー3着、神戸新聞杯2着、菊花賞馬ワールドプレミアの半弟で2番人気に支持されたが、直線で伸び切れず見せ場がなかった。スプリングSで2着に入った後の皐月賞で8着に負けたのと同じパターン。休み明けで激走すると2戦目は走らないタイプか。前走神戸新聞杯は熱発明けで走り過ぎた影響もあるか。池江厩舎の管理馬は中内田厩舎の管理馬と同様に3歳秋くらいから急に走らなくなるので注意したい。

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