有馬記念
レース回顧

クロノジェネシスは後方を進み、勝負どころで外から押し上げて先団に取りつくとメンバー2位タイの36.2秒で抜け出してレースを制した。勝ちタイムは2分35秒0。バビットが逃げて前半5F推定62.2秒のスローペース。後半5F60.7秒。ラスト6Fは12.8−11.8−12.3−12.1−11.9−12.6秒。ラスト5Fでフィエールマンが外から動いてペースアップし、スローペースでも差し馬向きの展開になり、後方で脚をタメた2頭で決着。1〜5着はノーザンファーム生産馬。1、3、4着はサンデーR、2着はシルクHC、5着は大塚氏。今年のG1でノーザンファーム生産馬は社台の馬か、超お得意様しか勝たない傾向があり、社台の馬が1〜4着を独占した。有馬記念で牝馬のワンツーは史上初。3歳以上の牡馬混合芝G1は天皇賞(春)のフィエールマンを除き、牝馬が12戦11勝となった。牡馬と牝馬との能力差が縮まり、斤量差が有利に働いている可能性がある。

クロノジェネシスは宝塚記念より道中後ろになったが、同じように外から捲って直線できっちり抜け出した。勝負どころでの手応えが他馬とは違ったところに心肺機能と能力の高さを感じさせた。パドックでは少しチャカついていたが、このレベルの馬になると普通に仕上がれば力を出せるのだろう。馬体が10キロ増えてさらにパワーアップしていた。オークスで432キロだった馬が474キロ。香港カップを勝った半姉ノームコアもそうだが、この一族の成長力は恐ろしいものがある。北村友騎手は先週まで中山芝で3勝しかしておらず、有馬記念は初騎乗だったが、日曜のグッドラックH(芝2500m)を勝ったことで手応えを掴んだのか、後方から自信満々の騎乗だった。来年は無敗の3冠馬コントレイル、デアリングタクトとの初対決が待っている。荒れ馬場、渋った馬場をこなすタイプ。デアリングタクトとともに凱旋門賞挑戦を期待したい。

サラキアは13番手からメンバー最速の35.4秒で大外から追い込んでクビ差の2着。勝ったクロノジェネシスの上がりを0.8秒上回った。これで4戦連続で最速上がりを繰り出し、1、1、2、2着。前走エリザベス女王杯で勝ったラッキーライラックの上がりを0.2秒上回ってクビ差まで迫ったのはダテではなかった。過去10年で7枠は[1−0−2−17]、8枠は[0−0−1−19]で3着以内に入った馬は菊花賞馬と春の天皇賞馬。長距離G1馬しか外枠を克服できないデータを覆して連対したことを評価したい。半弟サリオスはダービーで2400mをこなしたが、姉のサリオスも芝2500mをこなした。サリオスはマイルCSを使ったが、サラキアの活躍で社台が距離適性を再評価して中長距離路線に戻すのではないか。松山騎手はジャパンCのデアリングタクトで3着、今回サラキアで2着と最後に目一杯に追ってひとつ上の着順に持ってきている。最後まで諦めない騎乗。来年の更なる活躍が楽しみになった。関西日本人リーディングを狙える。

フィエールマンは出遅れた後に徐々に押し上げて3、4番手につけ、メンバー5位タイの36.5秒で早めに抜け出したが、クロノジェネシスとサラキアに交わされて0.1秒差の3着。ルメール騎手がラスト5Fで動いて逃げたバビットにペースアップさせたことで前に行った馬は厳しくなり差し馬向きの展開になった。前走天皇賞(秋)でメンバー最速の32.7秒でアーモンドアイに半馬身差の2着に迫った馬。手塚調教師がレース後に考えていたレースとは違ったとコメント。これまで重賞で先行したことがない馬がなぜ先行し自分から動いて差し馬向きの展開にしたのだろうか。16年の有馬記念はサトノダイヤモンド(ルメール騎手)がキタサンブラックを差して勝ったが、ラスト5Fで外から同馬主のサトノノブレスが上がってキタサンブラックにプレッシャーをかけている。ルメール騎手はラスト5Fで動いたらどうなるのか知っている。

荒れ馬場、スローペースでルメール騎手がスタミナを生かした騎乗をしたのかもしれないが、直線でわざわざ荒れた内を通り、最も伸びるところをクロノジェネシスに譲ったところを見ると果たしてどうなのだろう。クロノジェネシスとは荒れ馬場の適性に差があるが、クロノジェネシスより少し前で進めて差すレースをしていれば、もっと際どいレースができたのではないか。ゴール前にルメール騎手が外を見て手が止まったこと、フィエールマンの舌がハミを越していたことも気になった。中7週とフィエールマンにしては間隔は短かったが、最終調教の動き、気配は目立っており、パドックを見ても前走よりかなり調子を上げていた。天皇賞(秋)の走りからも中距離の高速決着でもやれる。ディープインパクト産駒の後継種牡馬になれる馬。来年は馬場のいいレースを選んで中長距離を使うことになりそうだ。メジロマックイーンが達成できなかった天皇賞(春)3連覇に向けて順調に進めてもらいたい。

ラッキーライラックは中団からメンバー5位タイの36.5秒で伸びて0.5秒差の5着。中団から上がってきたが、直線で伸び切れなかった。時計、上がりの掛かるタフな馬場で2500mはやはり長いのだろう。宝塚記念は2.5秒差の6着に終わったが、今回はクロノジェネシスと0.5秒差で最後まで食い下がった。G1は阪神JF、エリザベス女王杯、大阪杯、エリザベス女王杯の4勝。今後は繁殖牝馬として一緒に繁殖入りするアーモンドアイと争うことになりそうだ。クセが強くないオルフェーヴル産駒。いい仔を出すのではないか。

カレンブーケドールは中団から徐々に進出して3番手に押し上げ、メンバー9位タイの36.8秒で上がって0.6秒差の5着同着。池添騎手が勝負どころで動いて勝ちに行ったが、直線で一杯になって伸び切れなかった。上位4頭は天皇賞(秋)、エリザベス女王杯から間隔を空けて直行した馬。カレンブーケドールは前走ジャパンCで目一杯に走って4着。大きなデキ落ちはなかったが、前走激走したことも微妙に影響したのだろう。カレンブーケドールは重賞未勝利。主戦の津村騎手はG1、G2未勝利。まずは津村騎手でG2制覇か。

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