エリザベス女王杯
レース回顧

アカイイトは出遅れて後方を進み、3コーナーから外を回って進出し、メンバー最速の35.7秒で直線で一気に先頭に立つと後続を引き離し2馬身半差で圧勝した。勝ちタイムは2分12秒1。シャムロックヒルが逃げて前半5F59.0秒。後半5F60.8秒、上がりは36.5秒、ラップは12.2−11.8−12.5秒。例年とは違う速い流れで上がりの掛かる消耗戦になり、重賞未勝利で7番人気以下の差し追い込み馬が1〜5着を独占した。3連単は10−7−9番人気で339万馬券。アカイイトは道中ラップが落ちない消耗戦で差し馬向きの展開になったとはいえ、大外を回って早めに動いて2馬身差で圧勝したのだから大したもの。デビューから最速上がりを連発していた馬がG1初挑戦で10番人気で制した。

今年のメンバーで昨年秋以降、芝1800m以上、前半5F59.8秒以内、後半5F59.8秒以上で勝った馬は、アカイイト(垂水S)、ステラリア(未勝利戦)、レイパパレ(大阪杯)の3頭しかおらず、今年良馬場で勝ったのはアカイイトしかいなかった。社台がレイパパレを勝たせるためにシャムロックヒルが逃げて飛ばして消耗戦に持ち込んだが、それがアカイイトに大きなプラスとなった。キズナ産駒のワンツー決着。キズナ産駒はG1初制覇となった。阪神芝2200mで行われる来年の京都記念に出走したら注意したい。生産した辻牧場は1977年のエリザベス女王杯を勝ったインターグロリア以来となる芝G1制覇となった。次走は有馬記念に向かう予定。

ステラリアは中団の外からメンバー3位タイの36.1秒で伸びて0.3秒差の2着。勝負どころでアカイイトに来られて少しスムーズさを欠いた。そこがスムーズならもう少し差は詰まったのではないか。前走秋華賞は外から追い込んで0.5秒差の6着に終わったが、武豊騎手が出遅れて流れに乗れず、まともに走っていなかった。忘れな草賞を中団から最速の34.3秒で差し切って1分58秒0で勝ったが、0.2秒差の2着エイシンヒテンはローズSで2着、秋華賞で4着に粘っている。レース展望で穴っぽい馬として「なんとなく08年に勝ったリトルアマポーラの匂いがする」と書いたが、そのイメージは合っていた。今後は休養して来年に備える予定。

クラヴェルは14番手からメンバー3位タイの36.1秒で最内から追い込んで0.4秒差の3着。横山典騎手がイメージ通り、最内を突いて持ってきた。これで重賞では2、3、3、3着で4戦連続で馬券圏内を確保。芝2200mで56キロを背負ってこれまで以上に厳しい条件だったが、少しずつ地力が強化され、パフォーマンスを引き上げている。祖母ディアデラノビア、母ディアドラメドレで奥手の一族。大事に使っていけば、どこかで重賞制覇がありそうだ。

レイパパレは4番手に控え、直線で先頭に立ったが、最後に一杯になって0.5秒差の6着。上がりはメンバー12位タイの36.9秒。前に行った馬が15、16、17着に終わる中、最先着と粘ったが、道中折り合いを欠き気味、かつ勝負どころで躓いたことが響いた。ハナを切って自分のペースでストレスなく走るのが合っている。社台はシャムロックヒルを逃げさせてレイパパレ向きの消耗戦にしたが、想定より流れが速くなって差し追い込みを誘発した。逃げて自分のペースで進めれば、勝ち負けできたのではないか。次走は香港カップに向かうプランがあるようだ。

アカイトリノムスメはレイパパレをマークして5番手につけ、メンバー10位の36.7秒で上がって0.5秒差の7着。前に行った馬が壊滅状態になる中、レイパパレにクビ差の7着に粘った。直線でアカイイトに外から来られて少しスムーズさを欠いたことが堪えた。秋華賞は前半5F61.2秒のスローペース。持久力の問われるレースで好位づけでは厳しかったか。母アパパネは秋華賞で3冠を達成した後[1−0−2−7]で翌年ヴィクトリアマイルを優勝。オークス、秋華賞は時計面のレベルが低い。深追いしないようにしたい。

デゼルは後方からメンバー5位の36.3秒で大外から伸びて0.6秒差の8着。最後に外から伸びてきたが、位置取りが後ろ過ぎた。勝負どころで前に馬がいて仕掛けが遅れ、それによってなかなかエンジンが掛からなかったことが堪えた。相馬眼的に走る馬の独特の雰囲気を持った馬。条件が噛み合うと一気にパフォーマンスを引き上げる可能性がある。

ランブリングアレーは中団から早めに押し上げて直線でレイパパレの2番手に上がったが、そこで一杯になって0.7秒差の9着。上がりはメンバー12位タイの36.9秒。吉田隼騎手がレイパパレをマークして早めに動いて見せ場は作ったが、流れが速くなって消耗戦になり過ぎたことが堪えた。来年は6歳になるため引退は近い。社台の引退が近い6歳牝馬は、春の重賞で激走することが多いので注意したい。

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