菊花賞
レース回顧
アスクビクターモアは2番手から勝負どころで先頭に立ち、メンバー4位の36.9秒で直線で後続を引き離すと最後はボルドグフーシュの追撃をハナ差凌ぎ切ってレースを制した。勝ちタイム3分2秒4は01年阪神大賞典ナリタトップロードの3分2秒3を0.1秒更新するレコードタイム。セイウンハーデスが逃げて前半5F58.7秒のハイペース。中盤5F62.7秒、後半5F61.0秒。上がりは37.0秒、ラップは11.9−12.2−12.9秒。過去10年で最も速い流れで上がりの掛かる消耗戦になった。アスクビクターモアは2番手から早めに先頭に立ち、最後は一杯になりながら後続を完封してG1初制覇。ハイペースで2〜5着に道中12、8、12、16番手につけた馬が入ったことから見てもかなり強いレースをしている。ダービーは前半5F58.9秒の速い流れで2番手から直線で早めに先頭に立って3着。ドウデュース、イクイノックスに切れ負けしたが、2分22秒2で走っており、例年なら勝っていてもおかしくないレベルだった。
中山芝1800mの未勝利戦で外から上がって勝ったときの後半5Fが57.7秒で全て11秒台のラップだった。外から捲ったアサヒを前受けして物凄い持続力を見せた。この裏付けと3歳春に成長した姿を見て、春の時点で相馬眼的に菊花賞馬になれるとみていた馬が2番人気で菊花賞を制した。田村厩舎のディープインパクト産駒。母の父レインボークエストがスタミナと底力を補完している。今後は高速馬場で上がり勝負にならないレースを選んで使っていくのだろう。芝3000mをレコードで目一杯に走ったため状態面次第になるが、中山が最も合うため有馬記念に使ってくるかもしれない。ただし田村調教師は大事に使うため来春まで休養もありえる。来年の天皇賞(春)でタイトルホルダーとの菊花賞馬対決が楽しみだ。菊花賞を圧勝したタイトルホルダーは宝塚記念を制した。菊花賞は最も強い馬が勝つという格言は今も通用するのではないか。
1986年以降の菊花賞で前半5F58秒台で流れたレースを勝った馬は、02年ヒシミラクル(14番手)、06年ソングオブウインド(16番手)、08年オウケンブルースリ(12番手)で今年のアスクビクターモア(2番手)が4頭目。追い込んだ3頭は捲って4コーナーで2、8、2番手につけていた。ヒシミラクルは天皇賞(春)、宝塚記念を勝ち、オウケンブルースリはジャパンCでウオッカにハナ差の2着に入っている。先行して押し切ったアスクビクターモアの強さは計り知れない。種牡馬を含め、今後の活躍が楽しみだ。
ボルドグフーシュは12番手の内を進み、勝負どころで強引に外に持ち出すとメンバー最速の36.3秒で上がってハナ差の2着。前5走最速上がりで京都新聞杯と神戸新聞杯で大外から3着に突っ込んだ馬が前半5F58.7秒のハイペースを味方に7番人気で激走した。4コーナーで強引に外に出したため、ドゥラドーレス、フェーングロッテンは外に振られる大きな不利があった。吉田隼騎手は昨年の菊花賞で2番人気のステラヴェローチェで大外から最速タイの34.7秒で追い込んで3着にハナ差の4着に負けたため、今年は外を回さずに内から外に出すレースをしたのだろう。ハイペースの展開が味方したが、スタミナと末脚の持続力を証明。今後は長距離重賞を使って来年の天皇賞(春)を目指すことになりそうだ。
ジャスティンパレスは馬込みの8番手を進み、メンバー2位の36.5秒で上がって0.1秒差の3着。4コーナーで前に行った馬が下がってきたことで追い出しを待たされるロスがあった。そこがスムーズならもっと際どいレースになったのではないか。緩い流れが合うタイプだけに前半5F58.7秒のタフな流れになったことを考えるとよく走っている。春は華奢に映った馬体が神戸新聞杯ではボリュームアップして春とは馬体の造りが一変していた。半兄アイアンバローズはステイヤーズS&阪神大賞典2着馬。セレクトセール2億円のディープインパクト産駒。馬体がさらに成長すればパフォーマンスアップできる。
ドゥラドーレスは12番手からメンバー6位の37.2秒で上がって1.0秒差の5着。4コーナーでボルドグフーシュに内から強引に外に持ち出されて外に振られて減速する大きな不利があった。横山武騎手は「勝負どころの不利がかなり痛かった」とコメント。これまで芝2000mまでしか経験がない馬が芝3000mで初めて57キロを背負って不利がありながら4着に入ったことを評価したい。素質&能力はあるため、これから馬体に実が入って本格化すれば、中距離G1を狙える馬になりそうだ。
ガイアフォースは1枠1番から内ラチ沿いの6番手につけ、メンバー9位の38.0秒で上がって1.6秒差の8着。道中内ラチ沿いをロスなく回ってきたが、馬群に包まれて道中何度も頭を上げて力みながら走っていた。勝負どころで前が詰まって追い出しが遅れたことも堪えたが、ハイペースでスタミナが問われる展開になったことも影響したのではないか。キタサンブラック産駒で馬体の造りよりも持久力があるが、中距離の持久力勝負が合うタイプか。能力はあるため、適条件で巻き返しを期待したい。
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