日本ダービー
レース回顧

タスティエーラは4番手からメンバー9位タイの33.5秒で早めに抜け出して後続を完封しレースを制した。勝ちタイムは2分25秒2。パクスオトマニカが途中から大逃げして前半5F60.4秒の緩い流れ。後半5F59.6秒、上がり35.3秒、ラスト5Fは12.4−11.9−11.6−11.9−11.8秒。タスティエーラは4番手から33.5秒で上がっており、実質はスローペースでラスト3Fの上がり勝負。1〜4着は同タイムの接戦だった。オークスはリバティアイランドが圧倒的なパフォーマンスで圧勝したが、ダービーは着差が示すように各馬の実力が接近していた。ただしスローの上がり勝負で着差がつきにくかった面もある。タスティエーラは1コーナーをスムーズに切り抜けて4番手につけ、道中スムーズに進め、直線でもスペースを確保し、自分のタイミングで追い出すことができた。

スローの上がり勝負になった東京芝1800mの新馬戦を2番手から2位の33.5秒(11.2−11.1−11.2秒)で抜け出して3馬身半差で圧勝した馬。東京の上がり勝負にも対応できる持ち味をレーン騎手が全てにおいてスムーズに進めて引き出した。レーン騎手は先行した馬を最後まで持たせる技術もある。テン乗りでの日本ダービー制覇は69年ぶり。この日、レーン騎手は日曜は芝の10、11、12Rを3連勝。今の東京でどう乗れば勝てるのか、馬場も把握できていた。堀厩舎が管理したサトノクラウンの初年度産駒からいきなりダービー馬が誕生した。トーセンローリエがアネモネS、ウヴァロヴァイトがスイートピーSを勝つなど牝馬も走っている。タスティエーラはデビュー当時中距離タイプに映ったが、ここにきて胴が伸びて中長距離向きにシフトしてきている。秋は菊花賞または天皇賞(秋)になる模様。

ソールオリエンスは6番手の内から直線で少し外に持ち出すとメンバー5位の33.3秒で上がってクビ差の2着。直線で外からハーツコンチェルトに来られ、前にタスティエーラがいて少し追い出しが遅れ、何とかスペースを確保して横山武騎手が一杯に追ったが、ジリジリとしか伸びずクビ差届かなかった。横山武騎手がダービーポジションにつけたが、スローの上がり勝負で他馬よりガツンと切れなかった。皐月賞はタフな重馬場でハイペースだったが、今回は高速馬場でスローペースで真逆のレースだった。ソールオリエンスは東京芝1800mの新馬戦を3番手から2位の33.3秒(11.5−11.0−11.0秒)で上がって勝っており、上がり勝負にも対応できるタイプだが、今回はレーン騎手のタスティエーラの立ち回りが完璧だった。パドックでは筋肉がついて馬体がボリュームアップしていた。秋はセントライト記念から菊花賞か。

ハーツコンチェルトは出遅れて後方から向こう正面で6番手に押し上げ、メンバー6位タイの33.4秒で上がってクビ+ハナ差の3着。4着ベラジオオペラとはハナ差。スローペースで流れが緩んだ向こう正面で外から上がって行き、最後までいい脚を長く使っている。これだけ外を回るロスのあるレースをして勝ったタスティエーラの上がりを0.1秒上回ったことを評価したい。青葉賞でメンバー最速タイの34.1秒で上がってスキルヴィングに半馬身差の2着に入ったのがダテではないことを示した。距離を延ばしてパフォーマンスを引き上げ、末脚の持続力が増している。今後の長距離路線で面白い存在になりそうだ。成長力あるハーツクライ産駒。秋は菊花賞を目指す予定。

ベラジオオペラは1枠1番から内ラチ沿いの中団を進み、メンバー最速の33.0秒で内から伸びてクビ+ハナ+ハナ差の4着。過去10年で[2−2−1−5]の1枠1番から横山和騎手がロスなく回って持ってきた。皐月賞はG1で差し追い込みで連対がないテン乗りの田辺騎手が先行してハイペースに巻き込まれて10着に終わったが、スプリングSを勝ったときのように差すレースで走りが一変した。ただしスタートを決めた後に少し消極的な騎乗で位置取りが後ろになったことが結果的にはマイナスだった。皐月賞のパドックで評価したようにまだ華奢な部分が残っているが、馬体の造りが目立つ馬。今年ベラジオオペラで重賞初制覇を飾った上村厩舎が秋に向けてどう仕上げてくるのか楽しみだ。

ホウオウビスケッツはパクスオトマニカにハナを譲って2番手につけ、メンバー11位タイの34.0秒で上がって0.2秒差の6着。2コーナーで頭を上げて折り合いを欠き、かつラスト3Fの上がり勝負になったことが堪えた。過去10年の東京芝1800m以上で後半5Fを57.7秒以下で走って勝った3歳馬(3歳春まで)はホウオウビスケッツを含めて3頭のみ。ダノンキングリー(共同通信杯)はダービー2着(3人気)、カレンブーケドール(スイートピーS)はオークス2着(12人気)に入っている。ホウオウビスケッツはフリージア賞を後半5F57.7秒で優勝。理想のスローペースになっただけに丸田騎手が折り合って強気にラスト5Fからスパートすれば勝ち負けできたのではないか。単勝287倍の16番人気だった。6月5日の遅生まれ。今回も皐月賞と同様に馬体の造りが目立った。相馬眼的にこれから強くなる。

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