ヴィクトリアマイル
レース回顧
テンハッピーローズは10番手の外につけ、メンバー3位タイの33.9秒で差し切ってレースを制した。勝ちタイムは1分31秒8。コンクシェルが逃げて前半3F33.8秒、5F56.8秒の速い流れ。上がりは35.0秒、ラップは11.6−11.7−11.7秒。1番人気のナミュールは出遅れ、2番人気のマスクトディーヴァは直線で挟まれて力を出せず、スムーズなレースができた6歳牝馬2頭で大波乱になった。勝ったテンハッピーローズは中団の外から強烈な末脚で差し切って重賞初制覇がG1制覇になった。津村騎手もG1初制覇となった。これまで重賞では[0−0−1−6]、昨年以降芝1600mでは阪神牝馬S7、6着に終わっていた馬が、芝1600m、高速馬場、ハイペースのG1で一気にパフォーマンスを引き上げた。
先週のNHKマイルCは芝1400mを使われていたロジリオンが10番人気で3着に激走した。芝1400mを使って速い流れを何度も経験してきたことが、高速馬場、ハイペースで生かせたのだろう。人気馬が自滅したのは確かだが、単勝208倍の14番人気の馬の走りではなかった。近走必ず速い上がりを繰り出している点からもフロックではないのではないか。ヴィクトリアマイルを勝ってBCフィリー&メアターフ(G1、芝2200m)の出走権を獲得したため、秋は米遠征する予定。一気に距離が延びるが、得意の左回りで米国でもアッといわせるか。勝ち味を覚えた馬は一気に行くことが多い。
フィアスプライドは2枠2番から3番手につけ、メンバー9位の34.9秒で上がって0.2秒差の2着。道中内をロスなく回り、4コーナーから直線で少し外に持ち出してラスト300mで先頭に立ったが、外から伸びたテンハッピーローズに切れ負けした。前半5F56.8秒のハイペースで先行して粘ったように強いレースをしている。出遅れて追い込むレースが多いが、2走前にルメール騎手で勝ったターコイズSも今回のように先行するレースだった。先週のNHKマイルCはアスコリピチェーノに騎乗し、直線で前が詰まって2着。今回はスムーズなレースで4番人気を2着に持ってきたのはルメール騎手の意地か。次走は安田記念に向かう予定。
マスクトディーヴァは馬込みの7、8番手を進み、メンバー5位の34.1秒で上がって0.2秒差の3着。道中ドゥアイズの鮫島駿騎手にマークされて外に出せず、直線でドゥアイズとサウンドビバーチェ(松山騎手)の間に挟まれて減速する致命的な不利があった。そこから内に切れ込んで2着にクビ差の3着まで追い上げた。モレイラ騎手は春のG1をもう1勝すると来年も短期騎手免許を取得できるが、絶対にそれはさせないという鮫島駿騎手の意地を感じさせた。
マスクトディーヴァは社台RH、ドゥアイズはG1レーシング。最近は同じ社台系でもやり合うことが多くなった。サウンドビバーチェの松山騎手は昨年のヴィクトリアマイルの勝負どころで社台RHのスターズオンオアースに道を譲ったが、今年は右鞭を入れてマスクトディーヴァを通さないようにしていた。社台優遇のこれまでとは違う空気を感じる。これはいい傾向。マスクトディーヴァは能力でマイルもこなしているが、ベストは中距離なのではないか。社台の使い分けがなければ、宝塚記念に使ってくる。
ウンブライルは5番手からメンバー7位の34.6秒で上がって0.4秒差の6着。直線で外に出すのに苦労し、追ってもジリジリとしか伸びなかった。ハイペースで好位につけたこと、飛びが大きい馬で直線でスムーズさを欠いたことが堪えた。フィアスプライドのルメール騎手が直線で外に出してウンブライルの進路を塞いでいる。先週のNHKマイルCではジャンタルマンタルの川田騎手に外からマークされてルメール騎手のアスコリピチェーノは外に出せなかった。ルメール騎手、川田騎手のバトルは弥生賞から続いている。
モリアーナは13番手からメンバー3位の33.9秒で上がって0.5秒差の7着。勝ったテンハッピーローズと同じ上がりを繰り出したが、位置取りが後ろ過ぎた。向こう正面ではテンハッピーローズの直後にいたが、これまで経験のない速い流れで勝負どころでテンハッピーローズに4馬身程度離された。最後は外から速い上がりを繰り出したが、速い流れの経験の差が出た印象。外国人騎手が騎乗すると一変する可能性がある。
ナミュールは出遅れて13番手からメンバー2位の33.8秒で上がって0.5秒差の8着。出遅れて位置取りが悪くなり、直線でも前が壁になってスムーズさを欠いていた。あの位置なら32秒台で上がれそうだが、ドバイ遠征明け、ハイペースで伸び切れなかったのか。それ以前に1分31秒台の高速決着で出遅れは致命的だった。武豊騎手は出遅れが多く、テン乗りで出遅れを懸念していたが、やはり武豊騎手だった。
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