天皇賞(秋)
レース回顧
マスカレードボールは道中9番手から少しずつ押し上げ、メンバー3位タイの32.3秒で差し切ってレースを制した。勝ちタイムは1分58秒6。メイショウタバルが逃げて前半5F62.0秒。後半5F56.6秒、上がり32.9秒、ラップは10.9−10.9−11.1秒。武豊騎手のメイショウタバルが超スローペースで逃げて究極の上がり勝負になり、外国人騎手が騎乗した56キロの人気の3歳馬2頭で決着。マスカレードボールは超スローペースを察知したルメール騎手が道中少しずつ押し上げ、勝負どころで早めに動いたタスティエーラを尾行し、直線で切れる脚を使って抜け出した。
末脚の持続力で勝負するタイプで今の東京で上がり勝負になるとどこまで切れる脚を使えるかは未知数だったが、32.3秒で上がったことで死角がひとつ少なくなった。皐月賞3着、ダービー2着の3歳馬が世代レベルの高さを証明した。これで左回りは[4−1−0−0]、東京は[3−1−0−0]でダービー2着を除き勝っている。18年以降の天皇賞(秋)でルメール騎手は[6−0−1−1]、1番人気では[5−0−0−0]。今秋は秋華賞、菊花賞、天皇賞(秋)とG1−3連勝。マスカレードボールが勝てたのはルメール騎手による部分もある。次走はジャパンC。ダービー馬クロワデュノールも出走する予定。
ミュージアムマイルは9番手の外からメンバー3位タイの32.3秒で上がって0.1秒差の2着。前半は11番手の外にいたが、前にいたセイウンハーデスにプレッシャーをかけ、相手が嫌がって下がると少し押し上げ、3、4コーナーではロスを少なくし、直線で外に出すと勝ったマスカレードボールと同じ上がりを繰り出した。2〜6着とは0.1秒差だけにCデムーロ騎手の道中の運びの上手さが勝敗を分けた印象。ミュージアムマイルは中京の新馬戦で3着、ダービーで6着に終わったが、左回りは全く問題なかった。これで芝2000〜2200mの良馬場では[3−1−0−0]。香港カップの招待は辞退。次走は未定。
ジャスティンパレスは3枠3番からスタートを決めて内ラチ沿いの6番手につけ、メンバー7位の32.6秒で上がって0.2秒差の3着。出遅れて後方から追い込むレースが多いが、テン乗りの団野騎手がスタートを決めて好位の内につけたことが大きかった。これで天皇賞(秋)は2、4、3着。23年の天皇賞(春)を勝ってから全てG1を使われ[0−1−3−8]で9戦で5着以内を確保。今年6歳になったが高いパフォーマンスを発揮し続けている。今年で引退が決まっており、ジャパンC、有馬記念に出走する予定。
シランケドはスタートから行く気がなく、道中は少し離れた最後方の内をロスなく進み、直線で大外に持ち出すとメンバー最速の31.7秒で上がって0.2秒差の4着。23年7月以降は[6−2−3−0]で3着以内を確保していたが、テン乗りの横山武騎手で4着に終わった。高速馬場で前半5F62.0秒の超スローペースで離れた最後方からでは物理的に厳しい。ディープインパクト、イクイノックス、ドゥデュース、デュランダルでも届かないのではないか。上がり31.7秒はG1史上最速。1986年以降の東京芝戦でも最速。超スローの上がり勝負で勝ったマスカレードボールの上がりを0.6秒上回っている。重賞で横山武騎手に有力馬を乗せなくなった社台は、シランケドに横山武騎手が騎乗してくれて良かったと胸をなでおろしたのではないか。
中山牝馬Sは前半5F59.6秒で道中8番手(14頭立て)、新潟記念では前半5F60.5秒で道中11番手(16頭立て)につけている。ヴィクトリアマイルでは後方からメンバー最速の33.2秒で追い込んだが、追い込みでしか力を出せない馬ではない。かなり心肺機能が高く、逃げて有馬記念を勝ったダイワスカーレットのようなレースもできるタイプ。超スローペースで最後方というのは、間違っても社台の馬を差し切ってはいけないという大人の事情でもあるのか、それとも単に横山武騎手だからなのか。ちなみに昨年以降のG1で横山武騎手は[0−1−2−21]。北海道セレクションセールで715万円で取り引きされたデクラレーションオブウォー産駒で母の父はディープインパクト。相馬眼的に条件戦時代から凱旋門賞に向けて注目している馬。
アーバンシックは2枠2番スタートから内めの11番手につけ、直線で馬群を捌きながらメンバー2位の32.2秒で上がって0.2秒差の5着。直線で狭いスペースに突っ込んだが、馬が止めようとせず最後まで伸びていた。横山武騎手からルメール騎手に乗り替わってセントライト記念、菊花賞を連勝した後、6、3、14着に終わっていたが、今回は5着でも復調気配を感じさせる走りだった。次走は香港ヴァーズか、有馬記念か未定だが、メンバー次第で注意したい。
メイショウタバルは前半5F62.0秒で逃げ、メンバー11位の33.1秒で上がって0.2秒差の6着。逃げ切った宝塚記念(稍重)は前半5F59.1秒、後半5F59.8秒。今回は前半5F62.0秒、後半5F56.6秒。メイショウタバルはこれまで最も速い上がりを繰り出したが、武豊騎手は東京で超スローの上がり勝負では切れ負けするという思考はなかったのか。ただしパドックを見ると飛ばして勝てるほどのデキはなかったように映った。そのあたりか。
セイウンハーデスは7枠12番スタートから9番手につけたが、途中で12番手に下がり、直線で外からメンバー6位の32.4秒で上がって0.4秒差の7着。外からミュージアムマイルのCデムーロ騎手にプレッシャーをかけられて下がって位置取りが悪くなったことが堪えた。菅原明騎手は気持ちが散漫なところがあるとコメント。直線では外から伸びており、エプソムCのレコード勝ちがフロックではないことを示した。屈腱炎を克服した6歳馬が本格化してきている。
ブレイディヴェーグは出遅れて後方2番手を進み、メンバー3位タイの32.3秒で上がって0.5秒差の10着。直線で前が壁になってほとんど追えなかった。戸崎騎手は超スローペースで外に出したら届かないとみて馬群に突っ込もうとしたが、スペースがなく完全に脚を余した。昨年の府中牝馬Sを勝ってから4、4、7、4、6、10着で善戦止まりが続いている。ただし今回は調教の動きが良くなり、パドックでも好気配だった。馬は復調してきているので注意したい。
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