競馬アナリストGM
菊花賞
レース展望

クラシック最終戦。過去10年で1番人気は[2−0−2−6]で連対したのは無敗の3冠馬ディープインパクトと08年のオウケンブルースリのみ。2番人気は[1−1−0−8]で2連対、3番人気は[0−1−4−5]で1連対のみ。人気馬の信頼度は低く、6〜9番人気が7連対、10番人気以下が4連対と人気薄が目立つ。馬連は50倍以上が3回、万馬券が4回とかなり荒れている。最近6年は6番人気以下が必ず連対しており、人気馬同士で堅く収まることは稀。昨年は1〜5番人気が崩れて8−7−6番人気で馬連94倍、3連対3169倍の波乱になった。天皇賞(春)もそうだが、最近の長距離G1はかなり波乱傾向が強い。

最近5年の連対馬10頭のうち6頭が6番人気以下。この6頭にうち5頭にG2以上で3着以内があった。G2以上で実績のある馬が前走G2で負けて人気を落とし穴をあけることが多い。今年はゲシュタルト(京都新聞杯1着、スプリングS2着)、ヒルノダムール(皐月賞2着)、レーヴドリアン(京都新聞杯3着)が該当する。最近5年の連対馬10頭のうち7頭が前走神戸新聞杯に出走していた。07年に神戸新聞杯の距離が2400mに変更されてから、菊花賞との関連性が強まっている。神戸新聞杯でスタミナを見せた馬に注目したいところだが、今年はダービー、神戸新聞杯ともスローの上がり勝負。波乱があるとすれば流れが速くなった場合か。

菊花賞は波乱傾向が強いが、荒れるといってもで穴をあけたマンハッタンカフェ(6人気)とヒシミラクル(10人気)は翌年の天皇賞(春)を制し、デルタブルース(8人気)は5歳になってメルボルンCを制している。長距離G1を勝つ能力&適性を持っていたが、3頭とも重賞で馬券圏内がなかったこともあり、菊花賞時点では人気がなかっただけ。全出走馬が3000m級のレースが初めてのため、適性が見極めにくいことが波乱要因のひとつ。昨年の勝ち馬スリーロールスは前走1000万条件を勝った馬だった。このあたりから穴を狙うなら重賞実績を気にせず、翌年の天皇賞(春)を狙えそうなステイヤーを狙う作戦が有効なのではないか。

菊花賞は3000mでスタミナが問われるのは間違いないが、レースの展開によって問われるものが少し変わる。切れ味のある馬がメンバー1、2位の末脚で突っ込んでくることもあるし、ステイヤータイプが前に行ってラスト3Fを35秒台でまとめて押し切ることもある。過去10年でメンバー最速の末脚を繰り出した馬は[3−4−1−2]で複勝率80%、メンバー2位は[3−4−1−4]で複勝率66.7%。逆にメンバー6位以下は[2−2−1−115]でデルタブルースとアサクサキングスがスタミナ&地力で押し切り、マイネルデスポットとアドマイヤジャパンは流れを味方につけて2着に粘った。これが菊花賞の基本的なイメージ。

末脚の切れる馬はこれまでの上がり3Fを見れば分かるが、問題は3000mで切れる脚を使えるかどうかということ。スローの上がり勝負でも各馬のスパートが早くなるため、ラスト4F、5Fの持続力が問われ、単純な切れ味勝負にならない。08年に15番人気で2着に激走したフローテーションは菊花賞前までに8戦して上がり3Fメンバー最速はスプリングS2着時の1回だけだったが、菊花賞ではメンバー最速の34.6秒を繰り出している。次走のステイヤーズSでは逃げて2着に粘り、スタミナを証明した。スタミナのある馬が3000mで切れる脚を使う。要するに山の向こうにある見えないものを推測しないと菊花賞は勝てない。

今年はダービーが前半5F61.6秒、後半5F58.7秒、神戸新聞杯が前半5F63.1秒、後半5F57.9秒でどちらもスローの上がり勝負だった。レースのラスト3Fは33.4秒、33.8秒。ダービーを勝ったエイシンフラッシュはメンバー最速の32.7秒、神戸新聞杯を勝ったローズキングダムはメンバー最速タイの33.3秒で上がっている。スローの上がり勝負でもラスト5Fを高速ラップでまとめており、レースのレベルは低くない。それでは菊花賞の流れはどうなるのだろうか。セントライト記念をハイペースで逃げたヤマニンエルブは脚部不安で回避。コスモラピュタ、ビッグウィーク、カミダノミが展開のカギを握っている。

ダービー馬エイシンフラッシュは筋肉痛のため、菊花賞を回避した。これにより、ダービー2着、神戸新聞杯1着のローズキングダムが断然人気になりそうだ。ダービーは週中に挫石があって出走が危ぶまれたが、レースでは切れる脚を使ってきっちり2着を確保。神戸新聞杯は中団の内から馬群を捌いて抜け出し、並んだら抜かせない持ち味を発揮して最後まで抜かせなかった。馬体が22キロ増えて実の入りが良くなり、後肢の踏み込みが力強くなっていたことは見逃せない。菊花賞を狙えるレベルに来たのではないか。ダービーはかなりメンバーが揃っていたが、7着以内から菊花賞に出走するのはローズキングラムとゲシュタルトの2頭しかいない。

エイシンフラッシュの回避もあり、メンバーはかなり楽になっている。今回もスローの上がり勝負なら持続力と切れ味で神戸新聞杯のようにあっさり勝ってもおかしくない。流れが速くなってスタミナが問われるレースになったときは未知数だが、絶対能力の高さでこのメンバーなら無様なレースはしないのではないか。橋口厩舎のダービー2着馬は菊花賞で全て1番人気に支持され(全て武豊騎乗)、96年ダンスインザダーク1着、04年ハーツクライ7着、09年リーチザクラウン5着。ローズキングダムはダンスインザダークに続ける馬なのかどうか。母ローズバドはオークス&秋華賞2着馬。勝てばバラ一族、悲願のクラシック制覇となる。

武豊騎手は1988年の菊花賞をスーパークリークで勝ってから22年連続でG1を制している。今年は落馬負傷で休養があったため、まだ勝っていない。ここで勝たないと連続記録は厳しくなる。武豊騎手、渾身の騎乗を期待したい。先週の秋華賞はアパパネが3冠を達成したが、京都競馬場の入場人員は約4万人で前年比83%。秋華賞の売り上げは約138億円で前年比94%。3冠馬が出るレースでも競馬場に人が入らず、馬券が売れない時代。不況の影響、趣味の多様化など色々あるのだろうが、最近熱くなるレースが減ったような気がするのは気のせいだろうか。今年の菊花賞はこれぞ菊花賞というスタミナの問われる熱いレースを期待したい。

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■神戸新聞杯回顧
■セントライト記念回顧
■日本ダービー回顧
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