スプリンターズS
2000/10/01 中山競馬場 芝1200m

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出走有力馬
ブラックホーク アグネスワールド ビハインドザマスク
マイネルラヴ キングヘイロー スギノハヤカゼ
ベストオブザベスト ブロードアピール ユーワファルコン

 昨年のスプリンターズSの1〜4着馬が揃って出走し、これに4連勝中のビハインドザマスク、 香港からのベストオブザベストが加わってかなりの豪華メンバー。この他にも短距離が得意な馬 が目白押しで、秋G1初戦はかなり難解なレースとなりそうだ。

 今年のポイントのひとつは中山の馬場。今週からAコース(先週まではCコース)で仮柵を外 した馬場は5週間使用していないので状態はいいようだ。これで有利になるのは、無理なくいい ところを通れる内枠の先行馬で、逆に追い込み馬はかなり厳しいレースになりそうだ。何よりも 気になるのは、週初めから騎手もメディアもみんながこれを意識していること。あまりの意識の 強さで超ハイペースになれば、追い込み馬の天国になる可能性もなきにしもあらず。枠順、騎手 心理、陣営の作戦から展開を見極めことが重要になりそうだ。また、土曜日のレースで馬場の状 態、タイムをしっかりチェックしたい。

 1番人気は、セントウルSを2着したブラックホークか。休み明けで59キロを背負って2着 なら、今回は期待が持てそうだ。中山は5戦4勝3着1回と得意にしており、連覇に向けて恥ず かしくないレースをしてくれるはずだ。ただし、前走は走り過ぎの感もあるので、反動がないか しっかり調教をチェックしたいところ。昨年同様アグネスワールドをマークするため、セントウ ルSよりは前での競馬になりそうだ。横山騎手の1番人気は少々恐い気も。。。

 昨年2着のアグネスワールドは、英ジュライCを勝ち帰国初戦になるが、順調に調教を積んで おり仕上がりは良さそうだ。元々、夏場の方が体調がいいだけにこの時期にレースが移ったのは プラスに働くはず。先行するので馬場のいいところを走れれば、昨年より粘りは増しそうだ。

 セントウルSを勝ったビハインドザマスクは、追い込みだけに仮柵を外した馬場が問題。馬群 を割れる勝負根性があるので、前崩れの展開になれば出番がありそう。使い込んでいるので、調 子にも気をつけたい。

 マイネルラヴは、時計のかかる中山は向くタイプ。ただし、4歳時の勢いは少々薄れて きている。首を下げて真一文字に伸びる気合の乗った調教が確認できれば、チャンスはありそう だ。

 キングヘイローは、休み明けでまだ馬体が太い感じ。外枠を引いて外から追い込んだ 場合に好走しているところから、今回の仮柵を外した馬場はマイナスか。

 スギノハヤカゼは、セントウルSで見せ場たっぷりの3着。1週前調教で一杯に追って 好タイムを出し調子は良さそうだ。セントウルSに出走した各馬はみな馬なりの調教をしている ところからも、スギノハヤカゼは目一杯の勝負にきている。馬場が悪いと走らないタイプなので、 内枠を引いて馬場のいいところを走れることが絶対条件になる。一発の魅力を感じさせる。

 香港のベストオブザベストは、安田記念を勝ったフェアリーキングプローンに5戦3勝 と勝ち越しており侮れない馬。レイティングも香港でトップ。6ヶ月の休み明けなので、調子の 見極めが重要だ。タイムから見ても、日本の競馬に適用する力は十分にありそうだ。


調教診断

ブラックホーク
 美浦坂路で馬なりで36.0秒。いつもよりタイムが遅く軽めの調教だが、動きはだいぶ迫力が 出てきた点は評価できる。前走からの上積みもありそうで、2連覇に向け体制が整ったとみたい。
アグネスワールド
 栗東坂路で強めに追われ力強い動きを披露。追われての反応が良く、久々を感じさせない動き。 やわらかさもあり、やはり夏場の方が体調がいいようだ。昨年のスプリンターズS、今年の高松宮 記念より調子は上とみたい。
ビハインドザマスク
 栗東CWでマルカコマチと併せ馬の調教。直線で一杯に追われると鋭く伸びて3馬身先着した。 使い込んでいるので体調が心配されたが、一杯に追われたのだから心配しなくていい。逆にセン トウルSより調子が上がっている感さえある。陣営としても目一杯の仕上げだ。あとは展開と馬 場が向くかだけ。
マイネルラヴ
 美浦南Wで強めに追われラストもきっちり伸びた。だいぶ気合が出てきてこの馬本来の姿にな りつつはあるが、気持ち鋭さに欠ける感じ。馬体は引き締まってきており好印象。
キングヘイロー
 栗東DWで直線一杯に追われたが、モッサリとした動きで本調子にはない感じ。調教で動かな くても気持ちが乗れば走るタイプなので注意は必要だが、上位の馬のデキがいいだけにどうだろう。

相馬眼予想

 G1馬が7頭出走し、近年稀にみる好メンバーが揃いかなり難解なレースとなった今年の スプリンターズS。難解の割にオッズが低く馬券的な妙味は少ないが、秋G1の初戦だけに 予想はビシッと決めたいところ。また、アメリカ遠征中の武豊騎手と蛯名騎手が人気馬に騎 乗するのも競馬ファンとしては楽しみのひとつだ。

 今回のポイントは、仮柵を外した中山の馬場とレース展開をどう読むかだろう。各馬の1 200mでの実力差はそんなに大きくはないだけに、この外部要因をどう読み切るかにかか っていると言っても過言でない。

 まず中山の馬場だが、土曜のレースを見る限り、思っていたよりもスピード馬場ではない。 それでも外よりは断然いい状態だが、かなり力のいる馬場になっているようだ。騎手たちが 馬場のいい内を目指してペースが上がり、後方を進んだ馬が大外を一気に追い込んで勝った レースもあり、馬場よりも展開に左右されるところも大きいようだ。
 また、日曜日の午前中に雨が降る予報で、馬場はやや重くらいの湿った馬場になりそう。 重馬場になれば、よほどのハイペースにならない限り追い込み馬には不利で、前々で競馬が できる馬の方が有利だ。ペース次第だが、海外のこういう馬場でG1制覇しているアグネス ワールドが非常に有利に思える。ブラックホークも力のいる馬場は歓迎で、逆にスギノハヤ カゼには非常に辛い馬場だ。また、馬場が更に渋って、超ハイペースの展開になるようだと 驚異的な末脚を繰り出すブロードアピールにもチャンスはありそうだ。

 次に展開だが、馬場のいい内を進みたい意識から逃げ先行争いは激化しそうで、間違いな くハイペースになる。ここで問題なのはそのハイペースがどのレベルのハイペースになるか ということ。特に注意したいのが、ブロードアピールとジョーディシラオキの2頭を出走さ せている絶好調松田国厩舎の動向。ブロードアピールは荒れ馬場を苦にせず、重になれば他 が苦にする分、更に末脚を生かせるので、超ハイペースで前崩れの展開が理想。となれば、 ジョーディシラオキが果敢に逃げることになるのは間違いない。こちらも馬場荒れを苦にせ ず、またハイペースのセントウルSでも2番手を進み0.5秒差に粘り切ったのだから、超 ハイペースで逃げを打つことは問題なくできるはずだ。

 ジョーディシラオキの他に逃げたいのはユーワファルコンとアグネスワールド。ユーワフ ァルコンは、ハイペースの中日4歳Sを逃げ切っただけにハイペースに持ち込みたいところ 。対して、アグネスワールドは、超ハイペースの競い合いは避けたいだけに2頭が行けば3 番手に控えるだろう。

 こんな展開で有力各馬はアグネスワールドを目標に進むので、実質は1200m戦にあり がちなハイペースのレースと考えていい。普通のハイペースなら、馬場状態も手伝って、ア グネスワールドが有利だろう。ブラックホークは、内枠だけに今回は前々の競馬になるので、 昨年の切れを出せるかにかかるが、アグネスワールドを交わすところまではどうか。逆に切 れが鈍るようだと差し馬に差されるが、どうもその差し馬をイメージできないというのが今 回の結論。人気でも、アグネスワールドとブラックホークで勝負することにする。ブラック ホークを差す候補として自力に勝るキングヘイローとベストオブザベストを付け加えておく。 ビハインドザマスクは1番枠のためセントウルSと同じ競馬に徹するが、この馬場状態で切 れ味を生かせるかが問題だろう。

 ひとつ注意したいのが、逃げ馬がスタートして内に切れ込んで来るので、内枠からスター トした馬が挟まれる可能性があること。挟まれれば非常に大きなストレスになるので、好走 するのは難しくなる。2番枠のブラックホークが、これに巻き込まれないこと願うだけだ。

 アグネスワールド
 7月に英G1ジュライCを勝って以来のレースになるが、調教で追われての反応も良く、 仕上がりはいいようだ。元々、夏場の方が体調のいいタイプで昨年のスプリンターズSより もデキはいい感じ。このデキなら実力的にも国内G1制覇も難しいことではないはずだ。道 中は3番手を進み、前を射程圏に置きながら進める競馬。4コーナーで前に取りつき、直線 に向き一気にセーフティリードを奪う競馬で1着でゴール。今回は馬場、展開ともに向いて おり、体調も絶好なら武豊騎手が勝利に導いてくれるだろう。海外G1を2勝した実力を存 分に見せてくれるはずだ。

 ブラックホーク
 休み明けで59キロを背負ったセントウルSで2着と敗れたが、末脚の伸びも鋭く、本番 での好走を約束するもの。今回の調教は軽めだが、動きはだいぶ迫力が出てきており、前走 からの上積みも十分あるとみた。内枠を引いたため、陣営は先行差しの正攻法の競馬で行く と宣言しており、前々の競馬になりそうだ。6、7番手を進みアグネスワールドを徹底マー クする競馬になるが、アグネスワールドを差し切るのはどうだろう。また、前々の競馬でス ピード負けした場合に差し馬が気になるが、今の馬場状態なら後続を完封できるだろう。1 番人気がアグネスワールドなら、横山騎手のプレッシャーも少ないので、落ち着いた騎乗が 見られそうだ。

 キングヘイロー
 調教の動きはひと息も乗り込み量は十分に足りており、思い切って狙ってみたい。叩き良 化型のところはあるが、今年の夏は厩舎で過ごし、今までの休み明けとは違うことを付け加 えておこう。今年のG1では日本馬には先着を許しておらず、自力勝負になれば、最後は必 ず上位争いに加わっているはずだ。今回は各馬が馬場のいい内を意識しているが、この陣営 だけは外に持ち出して自分の競馬に徹する構えなのも気に入った。内がごちゃつけば、馬場 が悪くてもスムーズに進められたほうが、馬へのストレスは少なく、直線で末脚につながる はずだ。騎乗する柴田善騎手は中山1200mを非常に得意にしており、この馬の力を存分 に発揮してくれるだろう。昨年のスプリンターズSは最後方から怒涛の追い込みで3着と届 かなかったが、ゴール前の勢いは1番でかなり脚を余した感じ。今回は前を捕えられる中団 につけての末脚勝負の競馬で、上位争いできるはずだ。

 ベストオブザベスト
 香港でのレースぶりとタイムから、日本の馬場に十分に対応できそうだ。調教は中山ダー トで馬なりだが、太め感もなく脚捌きも軽く走れる状態とみたい。馬体はいかにもスプリン ト体形でトモの張りが素晴らしく、パワーがありそうで非常に好印象。パワー型なので馬場 はこなせそうだ。日本の小回りコーナーと直線の坂をどうこなすのかが未知数なため狙いを 下げたが、穴狙いに徹するのならこの馬から入る手もあるだろう。ホワイト騎手によるとこ の馬のセールスポイントは、ラスト200メートルで騎手が何もしなくても、自ら上がって いこうとするところ。きっと頭のいい馬なのだろう、直線での伸び脚を期待したい。

 ブロードアピール
 夏に2回叩かれ体調アップし、調教でも絶好の動きを見せ、そろそろ走りごろの感じ。 重馬場になって前が止まる展開になれば、末は切れるだけに出番はありそうだ。高松宮記念 でも出遅れながらも0.3秒差に来ているのだからスピードが通用しないということはない。 穴をあけるとすればこの馬だ。

    勝負馬券:馬連 アグネスワールド − ブラックホーク

     ◎アグネスワールド
     ○ブラックホーク
     ▲キングヘイロー
     △ベストオブザベスト
     注ブロードアピール


レース結果
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 着 予 枠 馬         馬名        性齢 重量      騎手   タイム   馬体重  人気
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   1   8 15 (父)ダイタクヤマト   牡 7 57.0kg  江田照男 1:08.6  486Kg   0 16
   2 ◎ 5  9 (外)アグネスワールド  牡 6 57.0kg  武豊   1:08.8  502Kg      1
   3 ○ 1  2 (外)ブラックホーク   牡 7 57.0kg  横山典弘 1:08.8  524Kg  +2  2
   4 注 6 12 (外)ブロードアピール  牝 7 55.0kg  松永幹夫 1:08.9  468Kg  -6  8
   5   3  5 (外)マイネルラヴ    牡 6 57.0kg  蛯名正義 1:09.1  510Kg   0  4
   6   6 11    ユーワファルコン  牡 4 55.0kg  中舘英二 1:09.2  496Kg +16 10
   7 ▲ 2  4    キングヘイロー   牡 6 57.0kg  柴田善臣 1:09.6  490Kg   0  6
   8   2  3    タイキブライドル  牡 6 57.0kg  郷原洋司 1:09.6  476Kg  +4 12
   9   4  8 (市)マイネルマックス  牡 7 57.0kg  佐藤哲三 1:09.6  502Kg  -8 14
  10   8 16 (外)タイキトレジャー  牡 5 57.0kg  後藤浩輝 1:09.7  472Kg   0  9
  11   1  1    ビハインドザマスク 牝 5 55.0kg  福永祐一 1:09.8  460Kg  -2  3
  12   3  6 (外)スギノハヤカゼ   牡 8 57.0kg  芹沢純一 1:09.8  496Kg +12 11
  13   5 10    マサラッキ     牡 8 57.0kg  藤田伸二 1:09.9  480Kg -10 13
  14   7 13 (外)シンボリインディ  牡 5 57.0kg  岡部幸雄 1:10.0  460Kg  +4  7
  15 △ 4  7 [外]ベストオブザベスト せ 6 57.0kg  ホワイト 1:10.2  504Kg      5
  16   7 14 (地)ジョーディシラオキ 牝 4 53.0kg  北村宏司 1:10.9  436Kg  +6 15
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  天候:曇  芝:稍重  
  ハロンタイム  11.7 - 10.5 - 10.8 - 11.0 - 11.7 - 12.9  
  上り  4F 46.4 - 3F 35.6 
  3コーナー  (*11,15)(16,14)(6,9,13)2(7,10)(3,5)4(8,12)1  
  4コーナー  (11,*15)(6,16)(9,13)14(2,10)5,7,3,8(12,4)1  

  <払戻金> 
  単勝 15 25,750円 16番人気  枠連   5- 8  2,350円 11番人気
  複勝 15  2,190円 15番人気  馬連  09-15 25,700円 48番人気
     09    120円  1番人気  ワイド 09-15  4,620円 50番人気
     02    130円  2番人気      02-15  7,390円 63番人気
                           02-09    220円  1番人気

レース回顧

 なんと16番人気のダイタクヤマトが並み居るG1馬を抑えて初G1制覇。 それも完璧なレースで後続を完封したのだから、ケチのつけようがない素晴ら しい勝利と言っていいだろう。騎乗したのは、万馬券男の江田照騎手。サファ リオリーブ、テンジンショウグン、レオリュウホウと数々の万馬券を演出して きたが、今回はG1でそれも最低人気だけにしてやったりだろう。ヒーローイ ンタビューでは1,2番人気を2,3着に追いやっての勝利だけに言葉を選ん で慎重な発言だったが、晴れ晴れとした姿は非常に好感が持てた。G1は2勝 目だが、プレクラスニーで勝った天皇賞(秋) は、メジロマックイーンの降着 による繰り上がりのものだっただけに、この勝利は本当にうれしいことだろう。

 さて予想だが、アグネスワールドが2着、ブラックホークが3着では馬連は 当たらない、大ハズレだ。ブラックホークに若干の不安を感じ、それでも差す 馬がイメージできないから勝負に踏み切ったので、勝負馬券は当たらないのも 仕方がない。しかし、▲△に差し馬をイメージできないと言っているにもかか わらず、差し馬を挙げたのは間違いだろう。予想の詰めが甘すぎる。これでは 当たらない。

 また、馬場状態でひとつ気づいたことがあるので付け加えておく。仮柵を外 した馬場は、夏に使っていたことで根付きが良くなく、そこに各馬が殺到した ため、土曜日の時点でだいぶ荒れてきていた。そして雨が降ったことで更に馬 場が悪化して、特に4コーナーの終わりではボコボコになっていた。と、ここ までは読んでいたが、分からなかったのは、スタート地点では大外の馬場が内 よりも断然良かったということだ。向こう正面の大外は馬が走る頻度が低いた め、最後の直線の大外とは同じ大外でもかなり違う状態になっていたのだ。ス タートして、みんなが内の馬場に意識がいっていたが、実は外の方が良かった ということ。騎手たちは当然これは分かってるにしても、内枠の馬が外に行く わけにはいかないので、これを生かせるのは、外枠の馬だけということになる。 ダイタクヤマトの江田照騎手はこれを生かし切っているのは言うまでもない。 このあたりは、G1レースのポイントで整理して来年に生かしたいところだ。 では、回顧です。

 ダイタクヤマトは、絶好のスタート から楽に2番手を追走する競馬。4コーナーで仕掛けて、直線入り口で逃げた ユーワファルコンを交わすと一気に後続を突き放し、最後は脚が上がったが一 杯に粘り切って1着でゴール。外枠からの好スタートで一気にスピードに乗り、 直線でいつのまにかセーフティーリードを奪う競馬は、父ダイタクヘリオスが マイルCSを勝った競馬を連想させるもの。これぞ、ダイタクマジック、血は あらそえないものだ。G1馬を相手に正攻法の競馬で勝ったのだから、フロッ クではないだろう。馬場が悪かったにしては、前半33.0秒のハイペースで 1分8秒6なら、勝ったダイタクヤマトを誉めるべきだ。中山1200mは2 戦2勝なのも付け加えておく。中山1200mは元々先行有利なコースで、ス タート後の下り坂でスピードに乗り、それをうまく持続させることが条件にな るが、そのお手本のような騎乗をG1の舞台で馬の力を信じてやってのけた江 田照騎手のファインプレーも見逃せない。今後のレースは未定だが、G1馬と して貫禄のあるレースぶりを期待したい。父が勝ったマイルCSは、距離が合 わないだけにどうか。

 ◎アグネスワールドは、いつもより スピードに乗れず4番手からの競馬。4コーナー手前での手応えも悪く、その まま直線に向き、最後はブラックホークとの叩き合いを制してなんとか2着確 保。スタートでスピードに乗れなかったのは馬場のせいだろう。手応えが悪く ても、最後に伸びたのはこの底力以外の何物でもない。さすがに海外G1を制 覇している馬といったところだろう。パドックでは、踏み込みも深く、また気 合乗りも良く、絶好の状態。腹回りがボテッとしているので太めと思った人も いるかもしれないが、これはこの馬の体形で重いわけではない。実際、騎手が 乗れば腹はスッキリとして気にならないし、毎回この腹で走っているのだから 体形と言い切りたい。ただし、このあたりの見方は難しく、騎手が乗ってしま うと馬に力が入り太目が分からなくなるので、騎乗前に重目を判断することも ある。このあたりは、毎回馬をよく見ていれば分かるというのが私の持論だ。 今年で引退する予定なので、ついに日本のG1を制覇することはできなかった が、次走のブリーダーズCに向けて頑張ってもらいたい。今のデキを維持でき れば、当然好勝負できるだろう。

 ○ブラックホークは、まずまずのス タートから5番手につけて内々を進む競馬。4コーナーで下がってきた馬を捌 けずに8番手まで下げてそこから必死に追い込むもアグネスワールドに競り負 けて3着まで。4コーナーでバテた馬を交わすのに手間取って勝負どころで上 がっていけなかったのが痛かった。これが1枠の不利なのか、年齢によるズブ さなのかは、判断が難しいところだ。こういう馬場で内々を進むと泥を被るの で、馬に与えるストレスは大きいのは確かだ。苦しいレースで最後に伸びた点 は評価したい。パドックでは、馬体の張り、踏み込み、気合乗り、どれをとっ ても素晴らしく、このデキならと思わすもの。次走はマイルCSになるが、昨 年のエアジハードほどの確たるマイラーがいない今年は十分に勝負になるだろ う。できれば、最後の切れを生かす競馬をしてもらいたい。

 注ブロードアピールは、後方2番手 を進み、直線で大外を一気に伸びたが惜しくも4着。唯一34秒台の上がりを 使って伸びた点は評価に値する。もっと雨が降って馬場が悪化していれば、更 に際どいレースができたはずだ。パドックでは、踏み込みに力強さがあり、ま た馬体に切れがあって絶好の仕上がり。さすがに松田国厩舎だ。次走は昨年2 着のスワンSになると思うが、この状態なら好走できそうだ。好不調がパドッ クに出やすいタイプなので、パドックは必見だ。

 マイネルラヴは、スタートダッシュ がつかずに11番手と後方からの競馬。4コーナーで上がっていき、直線外目 を伸びるも5着まで。直線では良く伸びてはいるが、いつもより後ろの位置取 りなのが痛かった。セントウルSもそうだが、直線で伸びてはいるが、最後は 止まっている感じ。それでも決して力負けではないので、自分の競馬ができれ ば復活してもおかしくない。パドックでは、ややイレ込み気味で好調時の唸る ような勢いはなかった。また他馬が好調だったこともあるが、いまひとつ元気 がなく印象はあまり良くはない感じ。次走はアメリカ遠征の話もあったが、今 年は日本でレースをすることに決まったそうだ。ということで次走はスワンS になりそうだが、1400mもこなせるだけに調子が上向けば実力的に好勝負 に持ち込めるだろう。やはり唸るような勢いが欲しいところ。

 ユーワファルコンは、スタートして すぐに逃げる競馬。4コーナーまで先頭で進み、直線でダイタクヤマトに交わ された後もしぶとく粘って6着。休み明けで果敢に逃げて粘り込んだところは 評価したい。4歳馬でまだまだ成長が見込めるだけに今後の短距離路線での活 躍が期待できそうだ。パドックでは、若さは残る中にもしっかりとした馬体が 目を引いた。このひと叩きで鋭さが増した調教が確認できれば、次走は期待で きるだろう。

 ▲キングヘイローは、後方14番手 を進み、直線で追い込むも7着敗退。直線に向き馬が走る気になっていたのは 見逃せないが、なんと言っても位置取りが後ろ過ぎた。内枠は合わないので後 方からの競馬も仕方がないところだが、調教でもモタついたように行きっぷり が悪かったのは否めない。パドックでは、気合を表に出さずにいいのだか悪い のだかはっきり言ってよくわからない感じ。馬体は絞れてはいたが、張りはイ マイチの印象。今後はマイルCSを目指すことになるが、このひと叩きで変わ ってくれば、昨年2着以上の結果を期待してもいいだろう。調教で首を使った やわらかい走りが確認できればチャンスはあるだろう。

 ビハインドザマスクは、スタート直 後に抑えて最後方からの競馬。内々の最短コースをまわり、4コーナーでも最 後方のまま直線に向いたが、既に勝負は決した感じで11着敗退。思い切った レースに徹したが、結果は散々なもの。今日のことは忘れていちから出直し。 今回のちぐはぐなレースで、4連勝してきた馬のプライドを傷つけていないこ とを願いたい。パドックでは、馬体の張りも良く、首もリズミカルに動いて好 調をアピールしていた。使い込んでいるが、調子落ちはなかったようだ。潜在 能力は間違いなく高いものがあるので、今後の活躍は当然見込めるはず。マイ ルCSを目指すのか分からないが、1600mでも勝っているのでそう見劣り はしないだろう。今回の結果に陣営は納得していないので、巻き返すために全 力で挑んでくるに違いない。マイルCSで負けた馬がスプリンターズSで好走 する例が多かったが、今年はスプリンターズSで負けた馬が、マイルCSで好 走することになるのかもしれない。


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